鈍行俳句

七種粥

○七種粥のごとき平成を閉ず (ななくさがゆのごときへいせいをとず) ○七種の薺は風に揺れてをり 秋甫 ○四人から一人になりて薺粥 々 ○薺粥かゆ好きは奈良の茶粥で 々 Eテレでウィーン・フィルの「ニューイヤーコンサート」を聞く。演奏はもとよりこのウィー…

賀状読む

○親友から五十五枚目の賀状かな (しんゆうからごじゅうごまいめのがじょうかな) ○かな釘の字も二三枚年賀読む 秋甫 ○印刷に今年限りという年賀 々 ○一枚の賀状に写るあゆみ哉 々 高校からの友人がゐて彼女とは50年以上の親交がある、年賀状もその歳の分だ…

初夢

○初夢の追いかけて来る事もなく (はつゆめのおいかけてくることもなく) ○初夢に味噌買うて二百五十九円 秋甫 ○初夢のぼんやりぼけて怖くもなく 々 ○初夢を風が攫ってしまひけり 々 初夢になるのだろうか。嫌にはっきり覚えているのは、259円という数字…

初御空

○初御空駅伝八区富士を背に (はつみそらえきでんはちくふじをせに) ○陽の当たる家懐かしき初御空 秋甫 ○初御空極夜旅する人のゐて 々 ○初御空ゆんべの夢も晴れてゐた 々 初深夜ラジオ 未明の時間帯で探検家の角幡唯介の対談をきく。彼はツンドラの真っ暗な…

二日

○夜来の風夢を破りし二日かな (やらいのかぜゆめをやぶりしふつかかな) ○箱根路のドラマ始まる二日かな 秋甫 ○二日はやカレーの人気取り戻す 々 ○津波のごとお節崩れし二日かな 々 恒例の箱根駅伝を観る。 大東文化大の第一走者が転倒。かなり衝撃があった…

初春

○初春や亀の甲羅の水藻かな (はつはるやかめのこうらのみずもかな) ○大旦見知らぬ部屋に目覚めけり 秋甫 ○元日や去年の余熱着て眠る 々 ○元旦や百年の生また刻む 々 明けましておめでとう! そろそろ私の背中にも水藻が着き始めるだろうか? 今年の抱負 新…

晦日蕎麦

○晦日蕎麦食ぶ平成三十年 (みそかそばたぶへいせい三十ねん) ○大晦日平成の世を生き通す 秋甫 ○晦日蕎麦最後まで飲むそばのつゆ 々 ○大晦日火を消して平成閉ず 々

餅搗き

○かけ声の高くなりゆくお餅搗き (かけこえのたかくなりゆくおもちつき) ○一族の集まりて庭に餅搗く 秋甫 ○猫という餅の背を盛り上げる 々 ○朝の湯気本家の庭の杵の音 々

初雪

○初雪の初ものらしくちらと見る (はつゆきのはつものらしくちらとみる) ○わが町の初雪の報大見出し 秋甫 ○庭の木の枝も知らでや初の雪 々 ○ちらと降る初雪の顔だけは見て 々

浮寝鳥

○浮寝鳥覚めて国会始まりぬ (うきねどりさめてこっかいはじまりぬ) ○浮寝鳥お泊りグッズ子に持たす 秋甫 ○水鳥の国領川を席捲す 々 ○浮寝鳥外国人の息白し 々

○蟹好きと豚好きの鍋に分かれて (かにずきとぶたずきのなべにわかれて) ○縦横にお縄の蟹を放免す 秋甫 ○蟹送られて来るはずと鍋用意 々 ○箸止めて蟹の鋏と格闘する 々 キンカンの甘煮と黒豆の煮物は出来上がった。今日は新居浜に第一陣の帰省がある。年明…

社会鍋

○飛ぶお金なき大口の社会鍋 (とぶおかねなきおおぐちのしゃかいなべ) ○炊き出しの火の燃え上る社会鍋 秋甫 ○焚火して牧師が髪を刈りにけり 々 ○讃美歌を唄って並ぶ社会鍋 々 連休前に抜けた差し歯を持ってさくらクリニックへ行った。夏に抜けた別の差し歯…

聖樹

○聖樹の灯近き窓辺に肉を切る (せいじゅのひちかきまどべににくをきる) ○身の余る苦難とてなく聖樹の灯 秋甫 ○生誕祭赤ワインなど抜いてみる 々 ○厩にてイエス生まるる星の夜 々 Pttの施行で農産物や肉類が安く輸入されるらしい。消費者としては単純に喜ば…

白菜

○若き農夫黄なる白菜育てけり (わかきのうふきなるはくさいそだてけり) ○白菜は白きをもって白菜なり 秋甫 ○すき焼にどんと白菜盛りにけり 々 ○白菜と豆腐の間葱を入れ 々 黄色い白菜を貰った。柔らかくて甘いということである。別の話になるが、白菜の漬…

年用意

○金柑を採って甘煮の年用意 (きんかんをとってあまにのとしようい) ○年用意江戸の技なる箒もて 秋甫 ○塩引きの鮭つるしある年用意 々 ○差し歯ぬけ歯医者へ走る年用意 々 年賀状書は完成して投函をすませた。 庭の金柑が今年はもう色づいている。一粒とって…

賀状書く

○気が付けばとっぷり暮れて賀状書く (きがつけばとっぷりくれてがじょうかく) ○孫に出す賀状は奴凧を描く 秋甫 ○賀状書くや同じ若さに戻りけり 々 ○五十年会わぬ友ゐて賀状書く 々 24日が誕生日の孫にプレゼントの希望を聞けば、「イヤーホーン」がいい…

年の暮

○蒟蒻を群馬みやげに年の暮 (こんにゃくをぐんまみやげにとしのくれ) ○年の暮とて用もなき浮世かな 秋甫 ○年の瀬を上州の湯に浸かりけり 々 ○年の瀬やまだ二つ三つ用もあり 々 みやげの蒟蒻と温泉饅頭を届けて旅は一段落。三日間の朝晩入浴に疲れがでたの…

冬座敷

○久月の糸巻人形冬座敷 (きゅうげつのいとまきにんぎょうふゆざしき) ○冬座敷書院障子に薄明り 秋甫 ○僧に出す座布団一つ冬座敷 々 ○冬座敷鐘震わせる読経の声 々 留守の間の部屋々はしんと冷え込んでいた。我が家にとって冬座敷のイメージは普段は使わな…

○露天風呂きつね注意の赤い貼り紙 (ろてんぶろきつねちゅういのあかいはりがみ) (四日目) ○鬼押ハイウエイから浅間山を間近に見る ○軽井沢(お洒落スポットを散策) ○JAL437便にて帰四(帰着は19時頃であった) 万座高原ホテルに泊まった時、所々に「キ…

冬の宿

○改装の段差躓く冬の宿 (かいそうのだんさつまずくふゆのやど) (三日目) ○上田嬢城址公園(真田氏の居城) ○きのこ村深山 ○浅間酒造 ○大東館泊まり 草津温泉の宿やは変更があって、大東館という宿屋になった。部屋の窓から湯畑が見えるほどすぐ傍ではあ…

冬の百舌

○冬の百舌万座外湯の混浴に (ふゆのもずまんざそとゆのこんよくに) (二日目)のんびり9:30ホテル出発 ○水沢観音 (水沢うどん試食) ○榛名湖(榛名山の山頂に広がるカルデラ湖) ○上州物産館(蒟蒻を購入) ○万座高原ホテル泊 年末年始はスキー客の若…

マフラー

○マフラーして青年のやうに立ちににけり (まふらーしてせいねんのやうにたちにけり) (伊香保温泉.万座温泉.草津温泉 湯ったり温泉の旅) 出発 松山空港 11:55 JAL434便→→羽田空港13:15 羽田空港よりバスにて伊香保温泉 山陽ホテル(泊) 帽…

着膨れ

○着膨れて待つ双子座の流れ星 (着ぶくれてまつふたござのながれぼし) ○重ね着て旅の荷物を軽くせり 秋甫 ○上州の三湯めぐり着ぶくれて 々 ○着膨れて機内通路のコルク栓 々 明日からトラピックスの旅 【絶景露天風呂万座温泉・草津温泉・伊香保温泉 湯った…

討ち入りの日

○討ち入りの日の雪となり蕎麦啜る (うちいりのひのゆきとなりそばすする) ○義士の日や天野屋利兵衛包丁研ぐ 秋甫 ○義士会や企業戦士のヘッド狩り 々 ○正月は忠臣蔵と若大将 々 昭和30年代はやたらと義士ものが流行っていたものだ。正月の興行に忠臣蔵がか…

マスク

○マスク廉価村は静かになりにけり (マスクれんかむらはしずかになりにけり) ○真新しマスクに替えて今日始まる 秋甫 ○マスクして目礼のみの隣人と 々 ○マスクしてICUのひとを看る 々 マスクが安価で流布されるようになった。そのせいかどうか嫌な言葉も聞か…

セーター

○新調のセーターの糸綻ばす (しんちょうのセーターのいとほころばす) ○セーターにベレー被ってアーティスト 秋甫 ○とっくりセーター猪首の頭やっと出す 々 ○お揃いのセーターで引き立てる役 々 小学校の頃、毛糸の真新しいカーディガンを着て登校した初日…

根深汁

○根深汁丸くなった吾独り (ねぶかじるまあるくなったわれひとり) ○一鍋の朝昼晩に根深汁 秋甫 ○根深汁青洟の子の座りゐる 々 ○忘却の淵掻きまわす根深汁 々 幼い頃、母の実家の田舎で祖父母と一緒に暮らしていたので、囲炉裏の思い出は数々ある。働き者だ…

冬霞

○終の地を此処に迷わず冬霞 (ついのちをここにまよわずふゆがすみ) ○冬霞延命治療のこと問わる 秋甫 ○冬霞ゆうれい船のごと行き来 々 ○冬霞ひとりの友は腰を病み 々 2度目の中国旅行は武陵源に行きたいと思っている。

○凩の攫って行きし夜の夢 (こがらしのさらっていきしよるのゆめ) ○凩やこうせつの歌神田川 秋甫 ○真夜に来し木枯太郎朝帰る 々 ○凩のドラマチックに盛り上がり 々 夜半凩一番吹く。

枯野

○枯野広ごり若者の狐貌 (かれのひろごりわかもののきつねがを) ○坊さんの光る指輪や枯野ゆく 秋甫 ○うり坊を連れて枯野の中を来し 々 ○宙返りして狐枯野へ帰る 々 お豊受山に初冠雪。