秋の潮

           〇秋潮をおしあげて入る定期船

             (しゅんちょうをおしげているていきせん)

        

          〇秋潮やテラスのランチ鴎舞ふ      河童三子

          〇菜屑など流れて行くや秋の潮      々

          〇秋の潮マストに休む鴎かな       々

From Buru to grandson

 

   〈此の一句〉

   〇秋潮に弔ふ眸して立上がる     稲垣きくの(1906━1987)

蟋蟀

          〇寝そびれて蟋蟀聴きに戸を出でし

             (ねそびれてこおろぎききにとをいでし)

          

           〇足元の闇へちちろの縋(すが)るかな   河童三子

           〇ちちろ虫夜露呑んでは鳴き明かす     々

           〇土石流乾きし上にちちろ鳴く       々

From Buru to grandson

    

   〈此の一句〉

   〇こほろぎや尼が来て消すミサの燭     相馬遷子(1908━1976)

秋気

           〇街角のピアノ奏でる秋気かな

             (まちかどのピアノかなでるしゅうきかな)

           

           〇浄瑠璃の冥途の飛脚見る秋気     河童三子

           〇窓の外に刷ける雲ある秋気かな     々

           〇虫の音の朝(あした)に残る秋気かな   々  

From Buru to grandson

   〈此の一句〉

   〇弦を引き絞り秋気を引き絞る     大串章(1937━)

二百二十日

         〇二羽の鳩二百二十日の身を寄せる

            (にわのはとにひゃくはつかのみをよせる)

          

           〇鯔はねて二百二十日も過ぎにけり   河童三子

           〇恙なく二百十日と二十日過ぐ     々    

           〇校旗揚ぐ二百二十日の涼風へ     々

From Buru to grandson

   

   〈此の一句〉

   〇移り行く二百二十日の群れ鴉     高浜虚子(1874━1959)

重陽

           〇重陽の雨に籠もりて菊の酒

             (ちょうようの雨にこもりてきくのさけ)

          

           〇浮かす菊見る菊もなき菊日かな   河童三子

           〇九を重ねめでたき菊の節句かな    々

           〇菊の日の瓦濡れゐる朝(あした)かな  々

From Buru to grandson

 

   〈此の一句〉

   〇生き上手はなし上手や菊の酒     台迪子(不詳)

玉蜀黍

           〇前歯弱し玉蜀黍の哀はれかな

             (まえばよわしとうもろこしのあわれかな)

          

            〇唐黍を前歯三本にて喰らふ     河童三子

            〇唐黍の赤いおひげは唐人さん     々

            〇とうきびやをはらぬ戦ざわざわと   々

From Buru to grandson

   

   〈此の一句〉

   〇唐黍焼く母子わが亡き後の如し     石田波郷(1913 ━1969)

白露

            〇垂れる穂に玉輝くや今朝白露

              (たれるほにたまかがやくやけさはくろ)

          

           〇芋の葉に白露遊ばす今朝の風      河童三子

           〇君が硯(けん)に今朝の白露を汲みをかむ  々

           〇揺ら揺らと転がってゐる白露かな      々

From Buru to grandson

   〈此の一句〉

   〇木の神も田の神もゐて白露かな     本多俊子(不詳)