釣瓶落し

         〇瀬戸の海つるべおとして深くなる

             (せとのうみつるべおとしてふかくなる)

         

          〇阿波の木偶(でく)釣瓶落しによよと哭く   河童三子

          〇釣瓶落し十郎兵衛屋敷に三味の音      々      

          〇客立ちし釣瓶落しの文楽座         々         

           〇釣瓶落し天地無用と書いてある      々       

          〇燃へる海釣瓶落しの静かなり        々                      From Buru to grandson

       

   〈此の一句〉

   〇釣瓶落しの日が首つりの縄の中     有馬明人(1,930━2020)

柿

           〇渋柿のやふなる面や西条柿

            (しぶがきのようなるつらやさいじょうがき)

          

            〇柿の句に四苦八苦すや伝九郎   河童三子

            〇名湯に猿が柿もて入りにけり   々

            〇柿の実に思い出数多また渋し   々

From Buru to grandson

   〈此の一句〉

   〇木守柿勝残りしや破れしや     大串章(1937━2026)

秋の風

             〇秋風の大阪慕情ネオン川

             (あきかぜのおおさかぼじょうネオンがわ)

          

            〇秋風や環状線のガードした    河童三子

            〇秋の風ビリケンさんの足の裏   々 

            〇秋の風通天閣に串カツ食ふ    々

            〇秋風やラーメン啜る高架下    々

            〇食ひ道楽鶴橋に降り秋の風    々

From Buru to grandson

 

   〈此の一句〉

   〇秋風や祭のあとの杭の穴     大串章(1937━2026)

秋夕焼

            〇秋夕焼包丁ぎゅっと握りをり

            (あきゆうやけほうちょうぎゅっとにぎりおり)

          

            〇窓あけて頸のばしをり秋夕焼    河童三子

            〇秋夕焼胸締められて佇みぬ     々

            〇包まれて恍惚となる秋夕焼     々

From Buru to grandson

   〈此の一句〉

   〇秋夕焼どこまで行けどこの世なる     栗原公子(不詳)

 

十月

            〇十月の雲をいただく山となり

             (じゅうがつのくもをいただくやまとなり)

         

           〇十月や傘寿に三つ過ぎしかな     河童三子

           〇十月や虔十(けんじゅう)のゐる公園林   々

           〇十月の威し銃なる稲田かな         々

           〇十月の風に向日葵まだ揺れて        々

     『ムーミン谷の彗星』

  ムーミンたちの住んでいる谷間は、

  とてもきれいなところです。

  そこには、小さな生きものたちが

  たくさんしあわせに暮らしていて、

  大きな木が青々としげっていました。

  

  野原のまん中を川が流れ、

  青いムーミンやしきのそばで

  ぐるっとカーブしてから

  ほかの小さな生きものたちのいる土地へ、

  流れていくのでした。

 

  みんなは、この川がどこから流れてくるのだろうかと、

  ふしぎに思っていました。  

       トーベ・ヤンソン著  下村隆一 訳より

From Buru to grandson

   

 

    〈此の一句〉

   〇十月の死や切り株に星を置き     中島斌雄(1908━1988)

九月尽

           〇九月尽吾句一句の句誌届く

             (くがつじんわがくいっくのくしとどく)

         

            〇秋生まれ秋に逝きたし九月尽   河童三子

            〇月も見ず雨の明け暮れ九月尽   々

            〇九月尽二万句作るまで生きよう  々

From Buru to grandson

   〈此の一句〉

   〇雨降れば暮るる速さよ九月尽     杉田久女(1890━1946)

無花果

           〇無花果や叱られたのか実の成らず

             (いちじくやしかられたのかみのならず)

          

            〇無花果を低く育てて踠みをり    河童三子

            〇無花果や解剖室の玻璃覗く     々

            〇無花果を甘煮してをり今朝の雨   々

From Buru  to grandson

    

   〈此の一句〉

   〇呆けたりや無花果の脳を食ふ     森澄夫(1019━2010)