2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ゆく秋

〇野に山に呻吟のこし秋はつる (のにやまにしんぎんのこしあきはつる) 〇癌とってすることもなき秋の果 河童三子 〇秋深し芋蒸かすとて地獄蒸し 々 〇ゆく秋や母の実家の小さきかな 々

〇山の湯の肩撫でていく狭霧かな (やまのゆのかたなでていくさぎりかな) 〇混浴を霧が隠すや万座の湯 河童三子 〇湯畑の硫黄の霧に草津の宿 々 〇伊香保来て磴の上なる湯殿かな 々

新松子

〇特老に潮騒の音新松子 (とくろうにしおざいのおとしんちじり) 〇おのこなら揺るがぬものよ青ふぐり 河童三子 〇青松笠朝練の子ら走り過ぐ 々 〇落葉松の林に入りて新松子 々

釣瓶落とし

〇嵐山につるべ落としの日をかくす (らんざんにつるべおとしのひをかくす) 〇着倒れにつるべ落しの先斗町 河童三子 〇オプティミスト釣瓶落しへ万歳す 々 〇マチネ果つ釣瓶落としの街角に 々

鵙の贄

〇鵙の贄棒鱈買って帰る道 (もずのにえぼうだらかってかえるみち 〇吾も日々干からびにけり鵙の贄 河童三子 〇鵙の贄ボウダラ吊るす店の奥 々 〇吊り橋の人身御供や鵙の贄 々

〇栗拾ろて猿が前行く山の駅 (くりひろてさるがまえいくやまのえき) 〇丹波栗中山栗を知らぬという 河童三子 〇爺婆と足蹴にされし虚栗(みなしぐり) 々 〇毬栗(いがぐり)のウイルス擬き棘を持ち 々

菊人形

〇弁慶の立ち往生や菊人形 (べんけいのたちおうじょうやきくにんぎょう) 〇幼日の菊人形に浦島の 河童三子 〇枚方に弁慶逝くや菊人形 々 〇菊人形はらのそこまで冷えにけり 々

紫式部の実

〇紫式部の実母着倒れて逝き (むらさきしきぶのみははきだおれてゆき) 〇食べれればまた良きものを実紫 河童三子 〇実むらさき小説家の作り方など 々 〇野に成って紫式部実の寂し 々

爽やか

〇爽やかに喜寿も越し来ぬ誕生日 (さわやかにきじゅもこしきぬたんじょうび) 〇爽やかや銀杏の実の真白かな 河童三子 〇耕運機の音爽やかやに土を蹴る 々 〇リサイタル出て爽やかな月光 々

牛膝(いのこづち)

〇牛膝黄泉比良坂まで付けて (いのこづちよもつひらさかまでつけて) 〇牛膝たびは気儘な人まかせ 河童三子 〇阿蘇山の噴煙高し牛膝 々 〇引っ付き虫一人占めたき母の膝 々

林檎

〇リンゴ飴エナメルつけて露店のショー (りんごあめエナメルつけてろてんのショー) 〇林檎剥くホラー映画に背を向けて 河童三子 〇林檎好みイブの末裔証する 々 〇林檎齧る君が皓歯に嫉妬かな 々

山ぶどう

〇三日目も少年は来ぬ山ぶどう (みっかめもしょうねんはこぬやまぶどう) 〇イソップの狐に届く山ぶどう 河童三子 〇山ぶどう墨滴こぼす鵯の文 々 〇山姥のお歯黒塗るや山ぶどう 々

秋の川

〇秋の川長旅の羽あらう鴨 (あきのかわながたびのはねあらうかも) 〇秋の川牛若丸は橋の上 河童三子 〇弁慶の薙刀写す秋の川 々 〇色街の裏流れいく秋の川 々

秋の空

〇クレーンはビルの天辺秋の空 (クレーンはビルのてっぺんあきのそら) 〇鰯の群鯖が截りこむ秋の空 河童三子 〇秋の空ビルがどんどん追いかける 々 〇朱の鳥居一の峰越え秋天へ 々

後の月

〇稲荷から深草へ出る後の月 (いなりからふかくさへでるのちのつき) 〇後の月一の峰への鳥居道 河童三子 〇後の月気生根(貴船)の水に写りけり 々 〇後の月病長引く御籤(みくじ)引く 々

灯火親し

〇灯火親しひとりに灯火一つづつ (とうかしたしひとりにとうかひとつづつ) 〇宿の灯や灯火親しむ旅情かな 河童三子 〇灯火親し宿の聖書を繙きぬ 々 〇灯火親し写真添付の旅信かな 々

仲秋

〇仲秋やホテルの夜食コンビニへ (ちゅうしゅうやホテルのやしょくコンビニへ) 〇仲秋や利き酒に酔う三杯目 河童三子 〇仲秋や七階に月遠からず 々 〇仲秋や藍の暖簾に丸き月 々

鹿

〇京暮れてものの哀れに鹿の声 (きょうくれてもののあわれにしかのこえ) 〇女子大の寮覗き来る牡鹿かな 河童三子 〇禰宜の吹く鹿笛に立つ神の鹿 々 〇目が合ってじっと動かぬ鹿の妻 々

木守柿

〇バスの席ゆずってくれし木守柿 (バスのせきゆずってくれしこもりがき) 〇木守柿竹馬の友は認知症 河童三子 〇長男は甚六がよき木守柿 々 〇明日の夢鵯が見ている木守柿 々

お十夜

〇お十夜の婆の詠歌も胸をうつ (おじゅうやのばばのえいかもむねをうつ) 〇十夜橋お大師さんが寝てござる 河童三子 〇十夜僧話の締めは「そうでねや」 々 〇お十夜の終わりは月もまん丸に 々

秋渇く

〇転寝の夢より覚めて秋渇く (うたたねのゆめよりさめてあきかわく) 〇秋渇きピューッピューッと牡鹿啼く 河童三子 〇虚しさや水平線に秋渇く 々 〇秋渇く命に至る水あらむ 々

秋思

〇銀杏の乾きて白き秋さびし (ぎんなんのかわきてしろきあきさびし) 〇若鹿の尾根に佇む秋さびし 河童三子 〇お稲荷の狐の貌も秋思かな 々 〇一陣の風に捕まる秋思かな 々

榧の実

〇榧の実に雨の雫の膨らみて (かやのみにあめのしずくのふくらみて) 〇陸奥や榧の実栃の実胡桃の実 河童三子 〇榧の実のぽつんと一つ朴念仁(ぼくねんじん) 々 〇榧の実を炒れば爆ぜるよ炉の話 々

寒露

〇蕎麦汁に蕎麦湯飲み干す寒露かな (そばつゆにそばゆのみほすかんろかな) 〇イグアナや泪のための寒露嘗め 河童三子 〇朝の実のきらきら光る寒露の日 々 〇朝日浴ぶ草の葉上の寒露かな 々

そぞろ寒

〇そぞろ寒萎縮つづける脳細胞 (そぞろさむいしゅくつづけるのうさいぼう) 〇そぞろ寒鏡に見るや手術痕 河童三子 〇縮む身や衣の中のそぞろ寒 々 〇そぞろ寒足長蜂が窓覗く 々

〇鵯のコロラトゥーラのマチネかな (ひよどりのコロラトゥーラのマチネかな) 〇鵯と鵙棲み分けてある時刻表 河童三子 〇鵯の窓の葉隠れ欅の実 々 〇鵯語にて口説かれをりぬ小半時 々

〇蝗、螽、もっとも美し稲子かな (いなご、いなご、もっともうましいなごかな) 〇人もみな喰い荒らさぬが良き蝗 河童三子 〇縄文の下顎もって蝗生く 々 〇雑食の人類蝗喰らいけり 々

秋の風

〇能登に買う白木の箸や秋の風 (のとにかうしらきのはしやあきのかぜ) 〇翌檜を財布に入れし秋の風 河童三子 〇蛍烏賊能登の朝市秋の風 々 〇秋の風輪島の椀に吹きあたる 々

十月

〇紫蘇の実を噛めばプチプチ十月に (しそのみをかめばプチプチじゅうがつに) 〇十月や今朝の味噌汁少し濃し 河童三子 〇十月の御空と風と食欲と 々 〇十月や銀杏の実の翡翠色 々

草虱

〇百人の敵に交えて草虱 (ひゃくにんのてきにまじえてくさじらみ) 〇凱旋のポチのどや顔草虱 河童三子 〇故郷や草虱まで懇ろに 々 〇故郷や寝屋にも零る草虱 々