2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

新生姜

〇新生姜女だてらにカリと噛む (しんしょうがおんなだてらにカリとかむ) 〇白肌に薄紅さすや新生姜 河童三子 〇赤紫蘇に染まらずにいる新生姜 々 〇悪口抑え新生姜噛みにけり 々

猫じゃらし

〇玉の尾や狗尾草の夢のあと (たまつけてえのころぐさのゆめのあと 〇犬よりも野良ねこ多し猫じゃらし 河童三子 〇カルデラに金の産毛や猫じゃらし 々 〇猫じゃらし触れて感覚目覚めけり 々

白粉花

〇独り居の庭におしろい花咲いて (ひとりいのにわにおしろいばなさいて) 〇おしろいや郷の姉やの手のえくぼ 河童三子 〇爪染めしおしろい花に昔かな 々 〇賑やかに咲いて寂しい白粉花 々

〇蜩の朝な夕なを哀します (ひぐらしのあさなゆうなをかなします) 〇蜩や肩叩かれて禅寺に 河童三子 〇打座といて蜩の声満ちにけり 々 〇かなかなに魚板を敲く夕餉かな 々

別れ烏

〇雨の日や別れ烏のまだをりぬ (あめのひやわかれからすのまだおりぬ) 〇親兄弟鳴き交してや別れ烏 河童三子 〇別れ烏何処の空にまた逢はむ 々 〇意を決して銀座をめざす別れ烏 々

空蝉

〇空蝉の掴む姿に堕ちてゐる (うつせみのつかむすがたにおちている) 〇空蝉の泥着て乾く哀しさよ 河童三子 〇空蝉をそっと乗せやる掌(たなごころ) 々 〇今年また空蝉一つ拾ひけり 々

朝顔

〇蕣を小さく咲かす町屋かな (あさがおをちいさくさかすまちやかな) 〇朝顔や鼓動のやうに揺れて咲く 河童三子 〇留守の日の朝顔日記頼まれし 々 〇朝顔のつぼみかぞへて明日を待つ 々

無花果

〇無花果の実りて呪ひ解けにけり (いちじくのみのりてのろいとけにけり) 〇イチジクを食べてイエスを考える 河童三子 〇無花果や網掛けられて実りをり 々 〇無花果を描いて絵日記終りけり 々

法師蝉

〇道服に透く痩身や法師蝉 (どうぶくにすくそうしんやほうしぜみ) 〇終活のつくづく長し法師蝉 河童三子 〇法師蝉茶粥冷やして昼餉かな 々 〇法師蝉ころりころりと往生す 々

流星

〇流星や願ひごとまた飛んでゐる (りゅうせいやにがいごとまたとんでいる) 〇流れ星月と土星のあいだ逝く 河童三子 〇流星群願ひごとなど箇条書き 々 〇流星や津軽海峡わたるかな 々

赤とんぼ

〇桑の実は黒く熟れたよ赤とんぼ (くわのみはくろくうれたよあかとんぼ) 〇赤とんぼ誰か待ってる山の駅 河童三子 〇赤とんぼ袈裟干す竿へ止まりけり 々 〇赤とんぼめでたき赤や山の上 々

秋暑し

〇門口に胡麻の木立てて秋暑し (かどぐちにごまのきたててあきあつし) 〇ラーメンのスープの脂秋暑し 河童三子 〇水呑みに起きて厨の残暑かな 々 〇秋暑し貝塚のごと塵の穴 々

星月夜

〇サーカスの幕降り象に星月夜 (サーカスのまくおりぞうにほしづきよ) 〇星月夜ピエロは顔を消していく 河童三子 〇サーカスの夢をみてゐる星月夜 々 〇サーカスのテントを包む星月夜 々

韮の花

〇行き詰る足下に白い韮の花 (いきづまるそっかにしろいにらのはな) 〇韮炒め花はコップに挿してやる 河童三子 〇韮の花おもはぬ茎の固さかな 々 〇句づまりや韮の花とて借りださん 々

貴船菊

〇都出て水辺に忍ぶ貴船菊 (みやこでてみずべにしのぶきふねぎく) 〇落武者の痩身哀れ貴船菊 河童三子 〇貴船菊水占ひを風が消す 々 〇貴船菊水に浸して読む神籤(みくじ) 々

送り火

〇送り火の大の字を見て還ろうか (おくりびのだいのじをみてかえろうか) 〇送り火や大黒天の山に法 河童三子 〇送り火の妙法距離のよき夫婦 々 〇送り火を忘れて遊ぶ亡者かな 々

終戦忌

〇敗戦忌ラジオに聞きし尋ね人 (はいせんきらじおにききしたずねびと) 〇玉音てふ放送ありて終戦日 河童三子 〇終戦日二歳の吾は戦中派 々 〇のら犬も飼ってみたけど敗戦忌 々

新涼

〇雄羊の腹のペンキや秋涼し (おひつじのはらのペンキやあきすずし) 〇新涼やフェルに犬呼ぶ羊飼い 河童三子 〇涼新(りょうあらた)子も杖持ちて羊飼い 々 〇新涼や牧羊犬の熟睡(うまい)かな 々

爽やか

〇長髪の球児爽やかに戻り来る (ちょうはつのきゅうじさやかにもどりくる) 〇爽やかに強肩みせし三塁手 河童三子 〇爽やかや浜風を突くホームラン 々 〇腕(かいな)にて涙拭ふも爽やかな 々

盆の月

〇跳びはねる鯔の影見ゆ盆の月 (はかとじてひとりになってぼんのつき) 〇墓閉じて我が身独りの盆の月 河童三子 〇盆の月濁流の川照らすかな 々 〇宇宙(そら)船と少し遅れて盆の月 々

初嵐

〇表閉め裏閉め忘れ初嵐 (おもてしめうらしめわすれはつあらし) 〇行ったかと思へば戻る初嵐 河童三子 〇初嵐おのれの道に迷ひしや 々 〇初嵐一過熱帯低気圧 々

施餓鬼

〇先に置く施餓鬼啄む烏かな (さきにおくせがきついばむからすかな) 〇一族はみな甘党の施餓鬼棚 河童三子 〇驟雨きて施餓鬼の菓子のほとびけり 々 〇大師像に讃岐うどんの施餓鬼かな 々

夏のはて

〇ツーアウト満塁はずし夏果てぬ (ツーアウトまんるいはずしなつはてぬ) 〇滑り込みベース掴みて夏終る 河童三子 〇高く遠く犠牲フライの夏おはる 々 〇三振打者一塁盗む夏の果て 々

立秋

〇虫の音の幼し今朝や秋立ぬ (むしのねのおさなしけさやあきたちぬ) 〇秋の気を胸に覚へて今朝目覚む 河童三子 〇秋立つ日延長戦の甲子園 々 〇白白と障子暁けくる今朝の秋 々

百日草

〇百日草満艦飾に疎まれし (ひゃくにちそうまんかんしょくにうとまれし) 〇片隅の祖母の思ひ出百日草 河童三子 〇頑なに昔気質の百日草 々 〇亡き祖母へ百日草を咲かせをく 々

八月六日

〇八月六日核のボタンが見えてゐる (はちがつむいかかくのボタンがみえている) 〇炭素と化す地上の年輪原爆忌 河童三子 〇ひろしまや吾も一人の原爆の子 々 〇地の渇き八月六日忘れぬため 々

海月

〇浜の子ら去って海月の海となる (はまのこらいってくらげのうみとなる) 〇放浪記呉の港の水母(くらげ)かな 河童三子 〇海飢えて越前水母網みたす 々 〇月見上げ憂きことのある海月かな 々

睡蓮

〇禅僧の睡蓮守となりにけり (ぜんそうのすいれんもりとなりにけり) 〇蓮池の鯉に混じりて鯔の貌 河童三子 〇遅れ来て極楽の蓮眠れるや 々 〇蓮咲いて天上天下見よとかや 々

炎天下

〇極楽も地獄もひとつ炎天下 (ごくらくもじごくもひとつえんてんか) 〇下北は北のはてなり炎天下 河童三子 〇炎天下硫黄流る恐山 々 〇最果てに来て浅虫の炎天下 々

天道虫

〇天道虫だましが背負ふ星の数 (てんとうむしだましがせおうほしのかず) 〇天道虫わが掌(てのひら)に羽閉じぬ 河童三子 〇羽の先仕舞ひ忘れて天道虫 々 〇てんと虫人差し指を飛び立てり 々