2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧
◦椀ごとき独りの鍋に大根煮る (わんごときひとりのなべにだいこにる)
◦石蕗の花外にも音なき一日かな (つわのはなとにもおとなきひとひかな)
◦山茶花やふっつり来なくなった猫 (さざんかやふっつりこなくなったねこ)
◦村人に語り部のなき焚火かな (むらびとにかたりべのなきたきびかな)
◦塩切れてやっと腰上ぐしぐれ中 (しおきらしやっとこしあぐしぐれなか)
◦仰向けばカフカを思う冬の甲虫 (あおむけばカフカをおもうふゆのむし)
◦綿虫の用ありそうに夕の庭 (わたむしのようありそうにゆうのにわ)
◦路地出ると肩のならぶや一葉忌 (ろじでるとかたのならぶやいちようき)
◦オリオンに悲しい恋の話聞く (オリオンにかなしいこいのはなしきく)
◦火事消えし工場の窓の虚ろかな (かじきえしこうばのまどのうつろかな)
◦朔やオリオンの三つ星光る (ついたちやオリオンの三つぼしひかる)
◦牛鍋の箸にかからぬ香かな (ぎゅうなべのはしにかからぬかおりかな)
◦冬萌や目の上の瘤の水ぬく (ふゆもえやめのうえのこぶのみずぬく)
◦初冬や絵手紙展の案内くる (はつふゆやえてがみてんのあないくる)
◦大根干す山の夫婦の日中かな (だいこほすやまのふうふのひなかかな)
◦黄落の色喪くしゆく音を聴く (おうらくのいろなくしゆくおとをきく)
◦鳶職の屋根降りて来て冬となる (とびしょくのやねおりてきてふゆとなる)
◦片時雨舟の二人を分かち往く (かたしぐれふねのふたりをわかちゆく)
◦ポットの湯十一月の庭師に置く (ポットのゆ十一がつのにわしにおく)
◦小春日やペンキ塗り立て屋根の上 (こはるびやペンキぬりたてやねのうえ)
◦作業場の棚の熊手や一の酉 (さぎょうばのたなのくまでやいちのとり)
◦うそ寒き夕暮れに覚め病み始む (うそさむきゆうぐれにさめやみはじむ)
◦身に入むや左官の壁にひと日かな (みにしむやさかんのかべにひとひかな)
◦普請場の釘の光りて良夜かな (ふしんばのくぎのひかりてりょうやかな)
◦夕月に大工は道具しまひけり (ゆうづきにだいくはどうぐしまいけり)
◦南天の実に袋して塀塗らる (なんてんのみにふくろしてへいぬらる)
◦短日や機関銃に釘打たす (たんじつやきかんじゅうにくぎうたす)
◦三遷を孟母に倣ふ文化の日 (さんせんをもうぼにならうぶんかのひ)
◦しみじみと鴉濡れるや暮の秋 (しみじみとからすぬれるやくれのあき)
◦眼鏡屋のショールームや秋の昼 (めがねやのショールームやあきのひる)