2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

冬の虹

〇冬の虹高野川から加茂川へ (ふゆのにじたかのがわからかもがわへ) 〇円町を半円の下冬の虹 秋甫 〇眼鏡やへ玻璃越して入る冬の虹 々 〇乳房取る日言い渡されて冬の虹 々

冬瓜

〇冬瓜の水晶に煮て孫思ふ (とうがんのすいしょうににてまごおもう) 〇冬瓜やうりざね顔で貴公子で 秋甫 〇冬瓜のころんと在りし隅の冷え 々 〇冬瓜の煮るほど深く透きとおり 々

冬紅葉

〇手を放すタイミング待ち冬紅葉 (てをはなすタイミングまちふゆもみじ) 〇風が来て大車輪など冬紅葉 秋甫 〇散る姿美しくあれ冬紅葉 々 〇冬紅葉雨にも冬の寒さにも 々

冬の虫

〇開け閉ての格子掴みぬ冬の虫 (あけたてのこうしつかみぬふゆのむし) 〇冬の虫食摂るときも目を瞑り 秋甫 〇冬の虫光の中を死での旅 々 〇穏やかな解脱の境地冬の虫 々

〇夕畑に葱摘みをれば洟たるる (ゆうはたにねぎつみおればはなたるる) ○荒海や朝餉夕餉に葱刻む 秋甫 ○北山の風に耐えけり九条葱 々 ○京野菜とて看板出でて葱並ぶ 々

石蕗の花

〇繋がれて罪人が行く石蕗の花 (つながれてつみびとがいくつわのはな) 〇荒城の石垣登る石蕗の花 秋甫 〇長留守居石蕗のほうけて咲にけり 々 〇海向いて惚けし頭石蕗の花 々

木の葉髪

〇寂しさの尾を曳く今朝の木の葉髪 (さびしさの尾を曳くけさのこのはがみ) 〇若者の耳栓に降る木の葉髪 秋甫 〇木の葉髪一言余分だったかも 々 〇娘の家を木の葉髪拾って出づる 々

〇落ち葉掃き頭に落ち葉きつね貌 (おちばはきあたまにおちばきつねがお) 〇木枯しや狐の目した女逝く 秋甫 〇地下道で振り返へられし狐の目 々 〇狐家の嫁入りらしき日照り雨 々

草紅葉

〇草紅葉イーゼル据えて比叡描く (くさもみじイーゼルすえてひえいかく) 〇草紅葉踏まれて立てる力かな 秋甫 〇寝転べば一つ一つの草紅葉 々 〇草紅葉地球はいつも青かった 々

闇鍋

〇闇鍋や山葵に山椒とうがらし (やみなべやわさびにさんしょとうがらし) 〇闇鍋やB級グルメの味のして 秋甫 〇闇鍋の短き物や長き物 々 〇闇鍋の箸で見ている形かな 々

神の留守

〇韋駄天のもう還り来し神の旅 (いだてんのもうもどりきしかみのたび) 〇手術日の繰り延べになり神戻る 秋甫 〇風神のスカートめくる神の旅 々 〇神の旅空は苦手の道祖神 々

小鳥来る

〇大欅枯葉にまがう小鳥来る (おおけやきかれはにまがうことりくる) 〇忙(せわし)しなく舞散る欅小鳥来る 秋甫 〇小鳥来てまた黄落す大欅 々 〇小鳥来る名は山雀と娘の言うに 々

枯柏

〇キャンパスの塀に留まる枯柏 (キャンパスのへいにとどまるかれかしわ) 〇枯柏夕暮れはハンギングツリー 秋甫 〇枯柏コウモリか魔女の帽子か 々 〇宵闇に立ちはだかれる枯柏 々

茎漬け

〇茎漬けの石どんどんと老舗裏 (くきづけのいしどんどんとしにせうら) 〇上賀茂の軒にすぐき菜商いす 秋甫 〇塩盛りて祖母が牙城に茎漬す 々 〇大根とて頭丸めて聖護院 々

翁忌

〇芭蕉忌や湖の末なるしずく哉 (ばしょうきやうみのすえなるしずくかな) 〇翁忌や近江の里に日の菜買う 秋甫 〇時雨忌や裏街道を伊賀甲賀 々 〇芭蕉忌や深草の里にしぐれつつ 々

七五三

〇こっぽりの鈴転がれり七五三 (こっぽりのすずころがれりひちごさん) 〇渡月橋すずが渡るや七五三 秋甫 〇晴れ着きて泣く子ぐづる子七五三 々 〇三代の氏子集いて七五三 々

散紅葉

〇手招きされ老婆に貰ふ散紅葉 (てまねきされろうばにもらうちりもみじ) 〇群雀飛べば紅葉の降りしきる 秋甫 〇風の来て別れの曲に散紅葉 々 〇一葉は壁に描きたる紅葉かな 々

帰り花

〇キャンパスの雨にも負けず帰り花 (キャンパスのあめにもまけずかえりばな) 〇帰り花耄碌帳を繙けば 秋甫 〇帰り花とて愛おしく眺めけり 々 〇今に在るいのちの証帰り花 々

大根

〇大根畠小原女のみち今昔 (だいこはたおはらめのみちいまむかし) 〇大根葉の切り捨てられし隅の箱 秋甫 〇尻敷に似て守口の大根漬け 々 〇大根のみな背伸びして暖かき 々

冬に入る

〇叡山を鳥の越え行く冬に入る (えいざんをとりのこえていくふゆにいる) 〇今朝吹くは比叡颪や冬に入る 秋甫 〇欅の葉使いつくして冬に入る 々 〇冬に入る窓の夕日を遮らず 々

紅葉山

〇大原の里を抱きし紅葉山 (おおはらのさとをいだきしもみじやま) 〇大原の里に目覚めて紅葉山 秋甫 〇バスに来て八瀬大原の紅葉山 々 〇紅葉山下りて京都の橋の上 々

〇山荘や瀬音に雁の鳴き渡る (さんそうやせおとにかりのなきわたる) 〇山の湯の峡を過ぎるや雁渡し 秋甫 〇梟の首よく回る雁の夜 々 〇雁渡り今宵比叡の山越えに 々

吾亦紅

〇突っ張って折れそうにゐて吾亦紅 (つっぱっておれそうにいてわれもこう) 〇謝れば風に肯く吾亦紅 秋甫 〇吾亦紅脇見もするが折れずにいる 々 〇吾亦紅沢山あって寂しそう 々

花八つ手

〇裏切りは思わぬ形花八つ手 (うらぎりはおもわぬかたちはなやつで) 〇低き戸の敷居の横の花八つ手 秋甫 〇花八つ手木戸の内から声かかる 々 〇遺書という仰山なもの花八つ手 々

薄紅葉

〇薄紅葉濃い茶に添えし菓子の彩 (うすもみじこいちゃにそえしかしのいろ) 〇人に聞く永観堂も薄紅葉 秋甫 〇癌の身を捌かれる夢薄紅葉 々 〇校内の薄紅葉描く画学生 々

秋灯

〇病棟の部屋一斉に消ゆ秋灯 (びょうとうのへやいっせいにきゆしゅうとう) 〇秋灯や娘と向き合って座りをり 秋甫 〇秋灯に一筆啓上後のこと 々 〇秋灯やこう明かければ死なれない 々

深秋

〇来る鳥の種も落ち着きて秋深む (くるとりのしゅもおちつきてあきふかむ) 〇秋深し今年米にも慣れにけり 秋甫 〇深秋や予備校の前にも落ち葉 々 〇秋深し出社一番落ち葉掃き 々

文化の日

〇文化の日手で物食うも文化かな (ぶんかのひてでものくうもぶんかな) 〇左京区の地図など広げ文化の日 秋甫 〇突っ掛けで蕎麦食べに出る文化の日 々 〇左手の自由に動く文化の日 々

〇圓通寺の借景の庭柿ひとつ えんつうじのしゃっけいのにわかきひとつ) 〇洛北の雨の一日を柿も堪え 秋甫 〇大和路に柿の葉すしや吉野柿 々 〇柿博打なんこなんこや種何個 々

十一月

〇香り立つ十一月のコーヒー豆 (かおりたつじゅういちがつのコーヒーまめ) 〇朝の鳥来ず日が昇る十一月 秋甫 〇十一月胸切られる日待ちにけり 々 〇京久し十一月の風の音 々