2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧
〇夏布団二枚重ねし山の宿 (なつぶとんにまいかさねしやまのやど) 〇相部屋に嵩の小さし夏蒲団 河童三子 〇夏布団眼裏に仁淀川ブルー 々 〇夏布団峡の河鹿の早かりき 々
〇夏帽子並んで渡る沈下橋 (なつぼうしならんでわたるちんかばし) 〇夏帽子出せば五枚と六個あり 河童三子 〇夏帽子歩かせてゐる仔猫かな 々 〇夏帽子鍔ひろければ肩に乗せ 々
〇梔子の花びら白は錆びやすし (くちなしのはなびらしろはさびやすし) 〇しどけなく梔子咲いてしまひけり 河童三子 〇梔子の綻びに雨溜めてをり 々 〇梔子の籬に頬を寄せる人 々
〇ダチュラ咲く六月の空垂れ下がる (だちゅらさくろくがつのそらたれさがる) 〇六月の蜃気楼ちょう霞堤 河童三子 〇六月や双子座に生るサクランボ 々 〇六月や己が手足の重さかな 々
〇箱眼鏡うちゅうゆうえい夢のなか (はこめがねうちゅうゆうえいゆめのなか) 〇前世か次の世なのか箱眼鏡 河童三子 〇箱眼鏡水中すでに異界なり 々 〇船底に銀河流る箱眼鏡 々
〇子を抱いて梅雨の晴れ間の沈下橋 (こをだいてつゆのはれまのちんかばし) 〇梅雨晴間亀も甲羅を干してをり 河童三子 〇梅雨晴間沈下橋にてすれ違ふ 々 〇どの庭も白き物干す梅雨晴間 々
〇埋もるるや浜昼顔の蜑の家 (うもるるやはまひるがおのあまのいえ) 〇流寓のものの哀れや浜昼顔 河童三子 〇流木の浜昼顔に曳かれをり 々 〇浜昼顔夜の貌とてなきものを 々
〇トウキビの風ざわざわと慰霊の日 (トウキビのかぜざわざわといれいのひ) 〇トウキビの迷路の闇に沖縄忌 河童三子 〇屋上に阿吽のシーサー沖縄忌 々 〇慰霊の日碑名を指に愛おしむ 々
〇フィヨルドの村にて買ひぬさくらんぼ (フィヨルドのむらにてかいぬさくらんぼ) 〇ノルウエーのサクランボの実暗き色 河童三子 〇さくらんぼふふみて枝を回しをり 々 〇さくらんぼ買ってぼんやり句をおもふ 々
〇土佐に在れば皿鉢料理と生節 (とさにあればさわちりょうりとなまりぶし) 〇母あれば今ごろに煮る生節(なまりぶし) 河童三子 〇甘辛くとろりと煮たる生節 々 〇生節(なまぶし)の期間限定白きかな 々
〇十薬を根こそぎ掘って渇きをり (じゅうやくをねこそぎほってかわきおり) 〇十薬や廃工場の塀の下 河童三子 〇ながながしどくだみの根の白さかな 々 〇十薬に囲まれてゐる道祖伸 々
〇青春の門に至りし桜桃忌 (せいしゅんのもんにいたりしおうとうき) 〇太宰の忌本読み耽る子を案ず 河童三子 〇桜桃忌ダダイズムらし奔流に 々 〇桜桃忌てふ日生まれて雨男 々
〇触れ合えば微かに匂ふ木天蓼の木 (ふれあえばかすかににおうまたたびのき) 〇タマ公に径の木天蓼土産にす 河童三子 〇隠れ咲く木天蓼の花山の宿 々 〇木天蓼を挿して心は旅のこと 々
〇蛇苺童話は悪を滅ぼしぬ (へびいちごどうわはあくをほろぼしぬ) 〇蛇苺ハリーポターも二十歳過ぐ 河童三子 〇蛇いちご隠れ棲みたる屋敷跡 々 〇蛇苺いがくり頭の中学生 々
◯篠竹にお国訛りや伊予簾 (しのだけにおくになまりやいよすだれ) 〇青簾斜めに立てて風ゆたか 河童三子 〇女らのため口を聞く青簾 々 〇昼餉済む厨に憩ふ青簾 々
〇烏の子ボアアボアアと親呼べり (からすのこボアアボアアとおやよべり) 〇雨の木にひねもす啼きぬ烏の子 河童三子 〇烏の子落下して腰ぬかしけり 々 〇七つ目も羽ばたき真似る烏の子 々
〇カルメンの薔薇の如きに昼寝の夢 (カルメンのばらのごときにひるねのゆめ) 〇白亜紀をアンモナイトの昼寝かな 河童三子 〇昼寝覚めこの世は狭き処かな 々 〇悩みごと神に預けし昼寝かな 々
〇燕の子猫が見てるぞ落ちるなよ (つばめのこねこがみてるぞおちるなよ) 〇六つめはいつも寝てゐる燕の子 河童三子 〇どんびりとて寵愛を享く燕の子 々 〇子燕の競へぞ母の愛ひとし 々
〇蜥蜴の目飼い主に似てきたるかな (とかげのめかいぬしににてきたるかな) 〇ゆっくりと見れば可愛い蜥蜴かな 河童三子 〇円らなる瞳している蜥蜴かな 々 〇手に乗せて蜥蜴の息を思ひやる 々
〇毛虫ただ一踏みにして苦しませず (けむしただひとふみにしてくるしませず) 〇燃える炎へイガラ投げ込む火刑かな 河童三子 〇ピエロの顔描いて毛虫のお尻かな 々 〇柿の葉をイガラならびて食らひけり 々
〇引きこもる子に時の日の大時計 (ひきこもるこにときのひのおおどけい) 〇時の日に生まれし母の忌は忘るる 河童三子 〇時の日や無人駅なる大時計 々 〇時の日や籠る子を看に特急で 々
〇ぬか漬けの彩鮮やかや夏料理 (ぬかづけのいろあざやかやなつりょうり) 〇朝採りにヴァージンオイル夏料理 河童三子 〇夏料理オリーブオイル回し掛け 々 〇砥部焼の小鉢に洗ひ夏料理 々
〇出合い頭ごきぶりと相対峙する (であいがしらごきぶりとあいたいじする) 〇ごきぶりと一瞬の隙はかりをる 河童三子 〇留守の間のごきぶり三日天下かな 々 〇石棺の中にごきぶりをはしめす 々
〇紫陽花の夜来の雨の水色に (あじさいのやらいのあめのみずいろに) 〇鎌倉や螺髪頭と七変化 河童三子 〇軒越して山紫陽花の庭にあり 々 〇紫陽花の稀き赤を挿しにけり 々
〇聚落に人なく栗の花豊か (しゅうらくにひとなくくりのはなゆたか) 〇大いなる命の匂ひ栗の花 河童三子 〇芝栗の咲く山道を忘れじや 々 〇栗咲いて人懐かしき山の駅 々
〇老鶯の一声のみの谷渡り (ろうおうのひとこえのみのたにわたり) 〇祖谷渓を老鶯の鳴き昇りくる 河童三子 〇迷い来し径老鶯と出会いけり 々 〇山の湯に老鶯の声近きかも 々
〇吾庭の蛍袋は山恋ふる (わがにわのほたるぶくろはやまこうる) 〇山の湯や蛍袋のみな白し 河童三子 〇蛍袋影を好むか峠道 々 〇山肌に蛍袋と杣の家 々
〇上一枚脱げばおはりぬ更衣 (うえいちまいぬげばおわりぬころもがえ) 〇衣更へて駅員のみな甲斐甲斐し 河童三子 〇新宿を白妙にして更衣 々 〇更衣乳房なき胸隠さずや 々
〇さっと来てあと腐れなきが男梅雨 (さっときてあとくされなきがおとこあめ) 〇何分に漢の梅雨の暴れがち 河童三子 〇山も海も搦めてしまう男梅雨 々 〇男梅雨女梅雨ちょう命水 々
〇忙しなき夏蝶に午後雨となる (せわしなきなつちょうにごごあめとなる) 〇荒々し烏蝶来る嵐の前 河童三子 〇翅とじて八手の裏に梅雨の蝶 々 〇訃の知らせめく黒蝶の庭去らぬ 々