2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧
○蓑虫の逆さ立つ塀日の暮れる (みのむしのさかさたつへいひのくれる)
○畑の口みな閉じられて落とし水 (はたのくちみなとじられておとしみず)
○文明の滅びる予感昼の虫 (ぶんめいのほろびるよかんひるのむし)
○秋高し独り暮らしの鍵三つ (あきたかしひとりぐらしのかぎみっつ)
○稲妻に一か八かの啓示受く (いなずまにいちかはちかのけいじうく)
○渡り鳥また拾ひ来よ命の木 (わたりどりまたひろひこよいのちのき)
○芋の秋吾を育てし日記帳 (いものあきわれをそだてしにっきちょう)
○糸瓜忌や俳人もまたよかりけり (へちまきやはいじんもまたよかりけり) 糸瓜忌は9月19日
○彼岸華墓参の人は皆地味で (ひがんばなぼさんのひとはみなじみで)
○灯を消せば吾を統ぶるや夜のちちろ (ひをけせばわれをすべるやよのちちろ)
○颱風の先回りして旅戻る (たいふうのさきまわりしてたびもどる)
○百歳がここかしこいて敬老日 (ひゃくさいがここかしこいてけいろうび)
○空澄むや地の底ながる神の水 (そらすむやちのそこながるかみのそこ)
○玄界に外国言葉牧水忌 (げんかいにとつくにことばぼくすいき)
○今は昔芭蕉も聞けり虫しぐれ (いまはむかしばしょうもきけりむししぐれ)
○なごり蚊に刺されし痕を引いてをり (なごりかにさされしあとをひいており)
○秋簾残して旅の気がかりに (あきすだれのこしてたびのきがかりに)
○阿蘇を刈り旅の塒に草泊 (あそをかりたびのねぐらにくさどまり)
○秋航やいま関門に夜の風 (しゅうこうやいまかんもんによるのかぜ)
○旅仕度すればコオロギ淋しと鳴く (たびしたくすればコオロギさびしとなく)
○赤き実の人拐す林檎享く (あかきみのひとかどわかすりんごうく)
○雨やれば蟋蟀の野に安らぎぬ (あめやればこおろぎののにやすらぎぬ)
○虫の音のその名覚へず聞き明かす (むしのねのそのなおぼえずききあかす)
○秋桜や山霧に消えいく二人づつ (こすもすやがすにきえいくふたりづつ)
○さよならと遺影が手振る葉鶏頭 (さよならといえいがてふるはげいとう)
○颱風に吹き飛ばしたい吾のゐて (たいふうにふきとばしたいわれのいて)
○長き夜の枕頭灯すLED (ながきよのちんとうともすLED)
○秋立つや百年の夢は壺中に (あきたつやひゃくねんのゆめはこちゅうに)
○秋風や人焼くけむり乗せて逝く (あきかぜやひとやくけむりのせてゆく)
○二百十日大往生の訃を受くる (にひゃくとおかだいおうじょうのふをうくる)