2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

狐火

○狐火や兄弔ひて戻る道 (きつねびやあにとむらいてもどるみち) ○狐火や甲賀の里の古狸 秋甫 ○狐火やこの頃こんと哭きたくなる 々 ○狐火をまことしやかに炉の話 々

暮早し

○駅前に狂女がひとり暮早し (えきまえにきょうじょがひとりくれはやし) ○三人の京の別れや暮早し 秋甫 ○暮早し京都駅にて別れけり 々 ○昨日より今日の日暮のまた早し 々

冬紅葉

○兄の訃や京は盛りの冬紅葉 (あにのふやきょうはさかりのふゆもみじ) ○斎膳や煮しめの上の冬紅葉 秋甫 ○弟と一つの傘に冬紅葉 々 ○京に来て極みを見たり冬紅葉 々

冬構

○廃屋の蔦絡ませる冬構 (はいおくのつたからませるふゆがまえ) ○喪の家の一人声なき冬構 秋甫 ○冬構縄で結わえし浜の家 々 ○大甕に水たっぷりと冬構 々

○下仁田と名のある葱の土乾ぶ (しもにたとなのあるねぎのつちからぶ) ○刻みネギ少年は声変わりけり 秋甫 ○下仁田の葱ステーキに醤油の香 々 ○葱刻む手を止めし震度三かな 々

目貼

○目貼して一人は繭の中の虫 (めばりしてひとりはまゆのなかのむし) ○北向きに胸の窓あり目貼する 秋甫 ○目貼して目貼をはがす日を思う 々 ○目貼して世の喧噪を遠ざかる 々

お七夜

○お七夜のお斎に赤いお豆さん (おしちやのおときにあかいおまめさん) ○兄の訃を知らせてきたり親鸞忌 秋甫 ○親鸞忌南無阿弥陀仏阿弥陀仏 々 ○報恩講和讃聞く子に涙かな 々

鉢叩

○予備校の講師のチョーク鉢叩 (よびこうのこうしのチョークはちたたき) ○北山通り東へ向かふ鉢叩 秋甫 ○しばらくは寝やも震わす鉢叩 々 ○音に乱れあるも愛嬌鉢叩 々 「いつやるんですか?今でしょう!」受験生に檄をとば塾の講師が、チョークで黒板を叩く…

神農祭

○大根の横に鍬売る神農祭 (だいこんのよこにくわおくしんのうさい) ○神農さんと張り子のトラが首を振る 秋甫 ○いとはんは治らぬ病神農さん 々 ○神農祭地産地消の地採れかな 々

宇津田姫

○出稼ぎの父に息吹く宇津田姫 (でかせぎぎのととにいきふくうつたひめ) ○雪女ゆんべおらんち叩いだが 秋甫 ○雪女郎白い蒲団を干してゐた 々 ○五番町夕霧楼の雪女郎 々

冬の色

○又造のめくら鴉に冬の色 (またぞうのめくらがらすにふゆのいろ) ○冬の色ガラスケースの檳榔売り 秋甫 ○逝く道は昭和鉄路の冬景色 々 ○欄干に廓の蒲団冬の色 々

片時雨

○片しぐれ青菜にジョロの水やれば (かたしぐれあおなにジョロのみずやれば) ○廃村の草の入り口柿しぐれ 秋甫 ○小夜しぐれ寝返りうてば寂しけり 々 ○朝しぐれ瀬戸曇らせてゐたりけり 々

思い羽

○思い羽の神の企み妙なるや (おもいばのかみのたくらみたえなるや) ○鴛鴦(おしどり)の彩絵のやうに流れゆく 秋甫 ○思い羽を濡らさぬ鴛(おし)の佇まい 々 ○思ひ羽しかと定めむ鴦(おう)なれば 々 鴛鴦の(鴛)は雄で、(鴦)は雌をさします。 思い羽(…

風除

○風除と口笛とモノクロ映画 (かぜよけとくちぶえとモノクロえいが) ○風除とて頬ひび割れし幼き日 秋甫 ○風除の中散り散りに一期一会 々 ○風除や軒低くして暮らしけり 々 第一句に掲載したものでは差し詰め黒沢監督の映画「用心棒」の一場面が心にあったよ…

大根

○ひとり居の日はたっぷりと煮大根 (ひとりいのひはたっぷりとにだいこん) ○大根の葉を選り好む冬の蝶 秋甫 ○大根の葉を持ち上げて見る太さ 々 ○一本の擂る煮る膾大根膳 々

朴落葉

○朴落葉踏んで異国の街の音 (ほおおちばふんでいこくのまちのおと) ○朴落葉孫と論語を諳んずる 秋甫 ○朴落葉獣のやうに病んでをり 々 ○朴落葉文学館の前の坂 々

冬用意

○機をおりてまず身を包む冬用意 (きをおりてまずみをつつむふゆようい) ○ひとり身の衣の山に冬支度 秋甫 ○冬支度熊はひたすら餌を拾う 々 ○忘却に芽の出る栗鼠の冬用意 々

冬めく

○冬めくや九份の赤提灯に雨 (ふゆめくやきゅうふんのあかちょうちんにあめ) ○天燈の灯欲る夜空の寒さかな 秋甫 ○天燈の願い上がれり凍夜空 々 ○凍天はゆっくり万燈呑み込みぬ 々

夜鷹蕎麦

○映画観て橋の袂の夜鷹蕎麦 (えいがみてはしのたもとのよたかそば) ○チャルメラの欠伸してゐる夜鳴きそば 秋甫 ○時そばの噺を客に夜鳴き蕎麦 々 ○夜鳴き蕎麦柳の下にいつも出て 々

黄落

○孔子廟屋根黄落を敷き詰める (こうしびょうやねこうらくをしきつめる) ○黄落の吾にしばしの色留めむ 秋甫 ○黄落や樹上より路上は楽し 々 ○黄落の刻へて完全浄土かな 々

朔風

○朔風やドア引いて入る地下カフェ (さくふうやドアひいているちかカフェ) ○北風に背中おされて地下カフェ 秋甫 ○北風や自転車の椿油売り 々 ○朔風に又三郎の行方尋く 々

櫨落葉

○山々は白寿百寿の櫨落葉 (やまやまははくじゅひゃくじゅのはぜおちば) ○櫨の実の垂れて魔界のさまを見る 秋甫 ○旅ごろも燃える心を櫨紅葉 々 ○櫨の実の日暮れは黒き魔女になる 々

立冬

○立冬や木枯も一号となる (りっとうやこがらしもいちごうとなる) ○立冬の橄欖に蝶五六頭 秋甫 ○パン二枚ポンと飛び出て今朝の冬 々 ○木守柿よおけ残って冬に入る 々

オリオン

○オリオンの寄り来る窓の霜夜かな (オリオンのよりくるまどのしもよかな) ○オリオン座出てオリオン星に送らるる 秋甫 ○オリオンは龍の落とし子空の海 々 ○ひとり居の米研ぐ窓に北斗星 々

秋灯

○秋灯や朗読を子守歌にして (しゅうとうやろうどくをこもりうたにして) ○街灯の風に揺れてる冬どなり 秋甫 ○秋陽の落葉の栞灯に繙く 々 ○ガレのランプ晩秋の野を燈す 々

夜霧

○波止場の灯夜霧よ今夜もありがとう (はとばのひよぎりよこんやもありがとう) ○霧の中ビッドに足を架けてみる 秋甫 ○夜霧ながれ浚渫船を置いて行く 々 ○灯を消せば沖ゆく船の霧笛鳴る 々

石蕗の花

○霄に隅があるなら石蕗の花 (おおぞらにすみがあるならつわのはな) ○花石蕗に添われて嬉し露地仏 秋甫 ○石蕗日和と人に言われて庭に出る 々 ○庭中にひとり歩きの石蕗咲けり 々

文化の日

○文化の日卵二つに目玉焼き (ぶんかのひたまごふたつにめだまやき) ○文化の日「何でも鑑定団」の壺を見る 秋甫 ○ハンバーグの肉叩いてをりぬ文化の日 々 ○文化の日ひとりグラスにワイン注ぐ 々

小春

○髭切られ眠る子猫の小春かな (ひげきられねむるこねこのこはるかな) ○鶺鴒の背黒に光る小春かな 秋甫 ○小春日やショーウインドの中の闇 々 ○白菜は身を包まずに小春かな 々

花八手

○雨戸打つ夜半の雨や花八手 (あまどうつやはんのあめやはなやつで) ○厠恐し廊下の先の花八手 秋甫 ○母留守に部屋うす寒し花八手 々 ○中庭に橙もあり花八手 々