2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧
○本読み了へて夕焼けに包まれる (ほんよみおえてゆうやけにつつまれる) ○後向いても胸まで染める大夕焼け 秋甫 ○孫呼びて厨より見る大夕焼け 々 ○大夕焼けあの世へは舟で逝くらし 々
○蟻が列離れし一つ道探す (ありがれつはなれしひとつみちさがす) ○怠け蟻求道の振りに見えなくも 秋甫 ○ぐぐっと噛まれし蟻の敵意つよし 々 ○螽斯それとも蟻か吾は鳴かず 々
○蜩や無睾の黎明震わせる (ひぐらしやむこのれいめいふるわせる) ○かなかなに朝の山里澄みわたる 秋甫 ○蜩の翅濡れてゐて飛び立てず 々 ○かなかなや疑うことの容易くて 々
○虫干やラ・カンパネルラ朝に訊く (むしぼしやラ・カンパネルラあさにきく) ○土用干丘の団地の並びたつ 秋甫 ○土用干十七歳のニキビかな 々 ○虫干や雀の遊ぶ庭となり 々
○草いきれ兵は去り雲はるか (くさいきれつわものはさりくもはるか) ○踏切の坂を上がって草いきれ 秋甫 ○砂浜へ小径をぬける草いきれ 々 ○鎌提げて祖父母の戻る草いきれ 々
○人の世を少し沈んで浮いてこい (ひとのよをすこししずんでういてこい) ○浮いてこいブリキ金魚の色剥げし 秋甫 ○へっこんだブリキの金魚浮いてこい 々 ○金輪際沈むものかと浮いてこい 々
○端居して世の真ん中を眺めけり (はしいしてよのまんなかをながめけり) ○座り心地確かめてゐる端居かな 秋甫 ○十七の孫の寄り来る端居かな 々 ○端居してより夕凪のはじまりぬ 々
○梅雨晴れて河童の皿に餓鬼の彩 (つゆはれてかっぱのさらにがきのいろ) ○河童忌の鼻もてあまし暮れ残す 秋甫 ○河童忌や日暮れの畑で胡瓜採る 々 ○龍之介忌朱色に燃える凌霄花 々
○雲峰や爆音高くヘリコプター (くもみねやばくおんたかくヘリコプター) ○泳ぎ就けず水平線の雲の峰 秋甫 ○干潮の引っ張ってゐる嶺の雲 々 ○雲の嶺満身創痍に十七歳 々
○パン焼いて土用餅にと届きけり (パンやいてどようもちにととどきけり) ○土用太郎二郎三郎雨の中 秋甫 ○竹にまた節一つ増え土用かな 々 ○漁の船ぐるりと回る土用凪 々
○参考書宅配にして帰省の子 (さんこうしょたくはいにしてきせいのこ) ○追い込みという辺りかな夏休み 秋甫 ○夏休み髭剃る孫の現れて 々 ○框低しと帰省子の背伸びかな 々
○未来図に彩取りどりの黴の花 (みらいずにいろとりどりのかびのはな) ○パンに黴生えて安心自然食 秋甫 ○菌株が新薬と聞き黴生やす 々 ○黄黴青黴黴の字を覚えけり 々
○冷麦の彩を取り合う兄妹 (ひやむぎのいろをとりあうあにいもうと) ○素麺流し空掬うばかりかな 秋甫 ○素麺流し青竹の距離長し 々 ○冷麦に豚カツ添えて孫の昼餉 々
○棒杭のシャツとシャッポで瓜の番 (ぼうくいのシャツとシャッポでうりのばん) ○棒杭の瓜番に頭さげて行く 秋甫 ○水番の灯の田の隅を回りけり 々 ○水番の単車一日右往左往 々
○青蛙織部焼ならぐい吞みに (あおがえるおりべやきならぐいのみに) ○いつの間にか扇風機止み雨蛙 秋甫 ○一匹で家中ひびく枝蛙 々 ○夏蛙止みそうになく夜の雨 々
○夏場所や小兵力士の勝ち名乗り (なつばしょやこひょうりきしのかちなのり) ○夏場所や両横綱の金の鯱 秋甫 ○白絣常連さんに名古屋場所 々 ○床山の髷棒と夏定年す 々
○海の日や鳴門の潮は雨を呑む (うみのひやなるとのしおはあめをのむ) ○海の日の潮に静かな小糠雨 秋甫 ○海の日のさかな市場にワカメ買う 々 ○海の日の亡夫と歌った海ゆかば 々
○舟虫や無声映画の早送り (ふなむしやむせいえいがのはやおくり) ○舟虫やダンゴ虫なら丸くなる 秋甫 ○ダルマさんが転んだ舟虫逃げた 々 ○舟虫や髭ふる蝦の海鮮丼 々
○カーナビの後戻りなき道をしえ (カーナビのあともどりなきみちおしえ) ○道をしえすぐ誘い込むけもの道 秋甫 ○前の木へその前の木へ道をしえ 々 ○道をしえその先はもう冥土かな 々
○夏帽のよれよれもまた身になじむ (なつぼうのよれよれもまたみになじむ) ○夏帽子海の市場にワカメ汁 秋甫 ○夏帽子見える魚は釣れざりき 々 ○夏帽の馴染めば何処かうらぶれし 々
○天道虫翅折るときの個性かな (てんとうむしはねおるときのこせいかな) ○天道虫六つ八つ星疎まれて 秋甫 ○天道虫七つ星なら励まされ 々 ○天道虫騙しは裏の道をいく 々
○蒙古斑の子天花粉に逃げ惑う (もうこはんのこてんかふんににげまどう) ○するすると風くる心地天花粉 秋甫 ○髪切って襟足剃れば天花粉 々 ○幼日の形見となりて天花粉 々
○梅雨出水蜊蛄ひろう田圃道 (つゆしゅっすいざりがにひろうたんぼみち) ○青田行くアンパンマンの六輌車 秋甫 ○ジュンサイの箱舟揺れし梅雨の空 々 ○浮草の流れる演歌聞いてをり 々
○夏潮にふぐりを搏たす不死夫かな (なつしおにふぐりをうたすふしおかな) ○夏潮や鯨観る船うばう船 秋甫 ○岸壁を四角く回る鱏の夏 々 ○工場の排水無色夏の潮 々 秋元不死男の俳句に ○夏潮にふぐりを搏たす孤島かな というのを見つけた。 男だったらこれ以…
○逢えずとも共に健やか星祭 (あえずともともにすこやかほしまつり) ○七夕の子へ夢書けと父の声 秋甫 ○笹竹の幼名あわれ糠星よ 々 ○孫に読む賢治の童話星まつり 々
○お隣の橡からまた落し文 (おとなりのくぬぎからまたおとしぶみ) ○主の顔みえしさりとて落し文 秋甫 ○落し文あっち此方でときめかず 々 ○文なれば読んでもみたき落し文 々
○銘泉を町家の井戸に覗く夏 (めいせんをまちやのいどにのぞくなつ) ○フランスの或る泉水を汲む列に 秋甫 ○殺されて処女は泉を生みにけり 々 ○野良仕事泉水汲んで昼餉にす 々
○梅雨晴れや賓頭盧さんの足撫でに (つゆはれやびんずるさんのあしなでに) ○新しきシューズで歩く梅雨晴れ間 秋甫 ○梅雨晴れ間なかなか家へ入れない 々 ○梅雨晴れま総理の胸に黄色い羽根 々
○凌霄花いつも一枝が空へ咲く (のうぜんかいつもいっしがそらへさく) ○ガーベラに理路整然を諭されし 秋甫 ○向日葵の返事はいつも午後になる 々 ○園児らの発表会や金魚草 々
○乾麺の煮汁溢しぬ雨安居 (かんめんのにじるこぼしぬあめあんご) ○安居僧しりおったてて廊下拭き 秋甫 ○畑ものの蒲焼匂う夏断かな 々 ○奥の間も開け放したる夏籠 々