2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧
○行く秋をゴミ待つ鴉と惜しみけり (いくあきをゴミまつからすとおしみけり) ○行く秋や曲がり損ねし千曲川 秋甫 ○行く秋の厨に見える海の色 々 ○行く秋を北回帰線へ逃れけり 々
○山下りて袋の中は煙茸 (やまおりてふくろのなかはけむりだけ) ○月夜茸の色香を好む夜の山毛欅 秋甫 ○茸狩り勧善懲悪の気迫 々 ○詰まるところポットに育つ茸鍋 々
○郁子垂るる万葉の庭迷い入る (むべたるるまんようのにわまよいいる) ○のっぺりとお公家の顔のあけびかな 秋甫 ○大甕に花展の郁子の華やかし 々 ○木に垂るる木通(あけび)嬉しき低きにあり 々
○空港の釣瓶落しへ飛び立つ機 (くうこうのつるべおとしへとびたつき) ○双海の海の釣瓶落しに喝采す 秋甫 ○二階の机釣瓶落しに灯を点す 々 ○心中を釣瓶落しの海に沈める 々
○ひき潮に鷺立つ沖の秋暮るる (ひきしおにさぎたつおきのあきくるる) ○敷布の糊ぱりつと効いて暮るる秋 秋甫 ○歳時記の表紙のやぶれ秋暮るる 々 ○うどん屋のかけ二玉に暮るる秋 々
○メハジキや目の梁とって聖書読む (メハジキやめのはりとってせいしょよむ) ○メハジキや夭折の子の長睫毛 秋甫 ○益母草犬と歩けば棒にあたる 々 ○血の道の女の障り益母草 々
○残る虫生きをれば鳴く息をして (のこるむしいきおればなくいきをして) ○残る虫もとより意図は何もなく 秋甫 ○残る虫ただランダムな数の中 々 ○残る虫耳鳴りを危ぶまれをり 々
○柿たわわ落柿舎を詠む句のお題 (かきたわわらくししゃをよむくのおだい) ○大和路に柿売る棚は人もなし 秋甫 ○御所柿の由緒敗れて富有の郷 々 ○吾郷は猿が柿の実穫るといふ 々
○爽やかに死して羊の雲の上 (さわやかにししてひつじのくものうえ) ○爽やかや七十六のバースデー 秋甫 ○目にさやか初冠雪の富士の山 々 ○さやけしや能登の朝市白木の箸 々
○金鈴子即位の礼の朝かな (きんれいしそくいのれいのあしたかな) ○栴檀の魔除けなる実を集めをり 秋甫 ○紫の花が黄金に樗の実 々 ○数珠にして魔手遠ざける楝の実 々
○冬瓜の味もざっくり年古りぬ (とうがんのあじもざっくりとしふりぬ) ○冬瓜のゴロゴロと出て道の駅 秋甫 ○冬瓜に似た人ひとり身内にも 々 ○冬瓜の味もそっけもなく在りぬ 々
○新松子コロボックルの砦かな (しんちじりコロボックルのとりでかな) ○新松子介護ホームの窓灯る 秋甫 ○新松子ひねもす海の子守歌 々 ○新松子ラグビーボール蹴られけり 々
○どぶろくを隠し寝かせる床の下 (どぶろくをかくしねかせるゆかのした) ○ワンカップ飛騨のどぶろく店先に 秋甫 ○濁酒の壺持ち寄って味見会 々 ○にごり酒チマチョゴリ着て持て成さる 々
○勇み立つ大漁唄に浦祭 (いさみたつたいりょううたにうらまつり) ○秋祭男凛々しき木遣唄 秋甫 ○山車曳きの伊勢音頭よき秋祭 々 ○村々を輿の中より稲穂神 々
○藁塚のこの指とまれ神の郷 (わらづかのこのゆびとまれかみのさと) ○今年藁砧に打てば青き艶 秋甫 ○今年わら人形の馬の青さかな 々 ○新藁も売られてゐたり苗の横 々
○秋茱萸の灯りし庭の廃家かな (あきぐみのともりしにわのはいかかな) ○榧の実も橡の実も山もながれた 秋甫 ○椿の実頑固おやじの一人は欲し 々 ○紫蘇の実をのせて豆腐の香り立つ 々
○籾摺の日昏は早し農の庭 (もみすりのひぐれははやしのうのにわ) ○籾筵積む軒下の陽の匂い 秋甫 ○空高し丘の狭庭の籾筵 々 ○籾殻焼く煙流れる千曲川 々
○落し水集めて回る千曲川 (おとしみずあつめてまわるちくまがわ) ○夜どうしの水落つ音に月明り 秋甫 ○落し水ゆたかに落ちて農ゆたか 々 ○落とし水鮒に受難の旅始まる 々
○日あたりの端掴みたる秋の蜂 (ひあたりのはしつかみたるあきのはち) ○秋の蜂ポストの口を吟味する 秋甫 ○力尽き風に吹かるる秋の蜂 々 ○秋の蜂巨人大鵬たまご焼き 々
○手にとって鼻に値踏みの林檎かな (てにとってはなにねぶみのりんごかな) ○国光は籾殻つけた林檎なり 秋甫 ○林檎剥けば薄切りにすることに慣れ 々 ○ひばりの映画白き林檎を齧るかな 々
○抽斗の中どんぐりの去年今年 (ひきだしのなかどんぐりのこぞことし) ○団栗のまろきを好む癖今も 秋甫 ○団栗に搏たれ実家の坂のぼる 々 ○ころころと鳴るどんぐりの賑やかや 々
○新米の水控えめに炊きあがる (しんまいのみずひかえめにたきあがる) ○玄関に俵袋の今年米 秋甫 ○玄米でわが故郷の今年米 々 ○新米の炊きあがる香を胸に吸う 々
○そぞろ寒気鬱ゴリラの目と遇ひぬ (そぞろさむきうつゴリラのめとあいぬ) ○夕日見る麒麟の首のうそ寒し 秋甫 ○椋鳥の帰る街樹のうそ寒く 々 ○また鳴るや無言電話のそぞろ寒 々
○菊月や差し出し屋根に江戸の菊 (きくづきやさしだしやねにえどのきく) ○菊月や熱帯樹園に蝶乱舞 秋甫 ○長月やすき焼に葱たっぷりと 々 ○長月や窓閉めて酒温めをり 々
○ままごとの美男葛は一つ盛 (ままごとのびなんかずらはひとつもり) ○実葛ひとつ盛られる玩具の皿 秋甫 ○葉隠れに紅の気配や実葛 々 ○美男葛みつけて心落ち着かず 々
○かまつかやメソッド忘れ咲きにけり (かまつかやメソッドわすれさきにけり) ○雁来紅己が天寿を見きわめる 秋甫 ○葉鶏頭の真紅寂しき夕間暮れ 々 ○かまつかや百歳の寿命問ひけり 々
○梔子の実の口固き同志かな (くちなしのみのかたきどうしかな) ○蔓引けば隣の蔓の零余子落つ 秋甫 ○栗の実はもう冒険を止めました 々 ○耶馬渓に煎銀杏を買おて食ぶ 々
○赤い羽根挿すや鴉の前髪に (あかいはねさすやからすのまえがみに) ○赤い羽根学びの道に子の並ぶ 秋甫 ○下駄箱の上を動かぬ赤い羽根 々 ○自治会の五百円かな赤い羽根 々
○秋時雨止まず無性に虫しぐれ (あきしぐれやまずむしょうにむししぐれ) ○ラグビーのスクラム揺らす秋時雨 秋甫 ○山頭火の墓に無患子秋しぐれ 々 ○秋しぐれ苗もの植るる人濡らす 々
○牛膝つけて威厳に猫戻る (いのこづちつけていげんにねこもどる) ○伊予と土佐分けてくれよと牛膝 秋甫 ○ナナという小説読みぬ牛膝 々 ○牛膝リュックの人の旅つづく 々