2023-01-01から1年間の記事一覧
〇大年やインディジョーンズの魔宮の中 (おおとしやインディジョーンズのまきゅうのなか) 〇大年や成せし仕事に満足す 河童三子 〇大年や鯛のあら煮の照りもよく 々 〇燭きって大年の鐘を待つかな 々
〇冬銀河より吾な呼ぶ声聞きぬ (ふゆぎんがよりわがなよぶこえききぬ) l 〇冬銀河沖に睦みて朝迎へよ 河童三子 〇ことばさへ無き古(いにしえ)の冬銀河 々 〇冬銀河わが胸中を透かすかな 々
〇ストーブに黒豆まかせ年用意 (ストーブにくろまめまかせとしようい) 〇何はともあれ黒豆の年用意 河童三子 〇死も佳さそう澄子がいふて黒豆にる 々 〇黒豆に執着のある年用意 々
〇年の瀬や月も朝を惜しむかな (としのせやつきもあしたをおしむかな) 〇年の瀬の女子会に二杯目のモカ 河童三子 〇おまわりに詐欺の手口を聞く年の瀬 々 〇嵌まらないパズルのピース年詰まる 々
〇まだ若き句歴抱きて年歩む (まだわかきくれきいだきてとしあゆむ) 〇厨より海の凪みて年歩む 河童三子 〇年歩む八十年の山河かな 々 〇八十の未知へ向かって年歩む 々
〇襤褸市や砲弾の炸裂近し (ぼろいちやほうだんのさくれつちかし) 〇ぼろ市へ己の入るる景色かな 河童三子 〇ぼろ市や曼荼羅仏の御座(おわす)す寺 々 〇襤褸市や利休の茶さじといふも在り 々
〇戸を絶てて風の音聞く薬喰ひ (とをたててかぜのおときくくすりくい) 〇薬喰い猟奇事件の匂ひすら 河童三子 〇山くじら煮らるる鍋の薬喰ひ 々 〇爺婆の眼のぎらつくや薬喰ひ 々
〇オラトリオ繰り返される聖夜かな (オラトリオくりかえされるせいやかな) 〇幼子のホサナホサナと聖夜劇 河童三子 〇庭の木の雁字搦めの聖樹かな 々 〇天婦羅を揚げて聖夜の赤ワイン 々
〇塗りつぶす修正ペンと日記買ふ (ぬりつぶすしゅうせいペンとにっきかう) 〇日記買ふ色鮮やかなカバーにして 河童三子 〇暮の日の蛍光店に日記買ふ 々 〇文具屋に子どもと混じり日記買ふ 々
〇障子の影日の名残りある冬至かな (しょうじのかげひのなごりあるるとうじかな) 〇冬至の日五時起きに二時間の闇 河童三子 〇早起きに冷ややかな今日冬至 々 〇ひらひらと遅き冬至の陽が昇る 々
〇日溜まりが歩ませてゐる冬の蜂 (ひだまりがあゆませているふゆのはち) 〇燃える木の火へ歩みよる冬の蜂 河童三子 〇荼毘という温もりにいる冬の蜂 々 〇冬蜂の眼の存外に明るきよ 々
〇山姥の髪の靡きか枯尾花 (やまんばのかみのなびきかかれおばな) 〇海と山隔てるやうに枯尾花 河童三子 〇枯尾花山へ向く日と海向く日 々 〇夕暮の雀吐き出す枯尾花 々
〇大嚏太平楽に暮らしをり (おおくしゃみたいへいらくにくらしおり 〇連発の犬の嚏や水しぶき 河童三子 〇懐石の潤菜もどる嚏かな 々 〇猫の貌(かお)狆(ちん)になりたる嚏かな 々
〇冬耕や海へ転げる岡の上 (とうこうやうみへころげるおかのうえ) 〇冬耕や今も合戦語る浦 河童三子 〇潮灼けの手に冬耕の鍬を持つ 々 〇ごろ石を垣に積み上げ冬耕す 々
〇白が好き真白がよかり冬桜 (しろがすきましろがよかりふゆざくら) 〇冬桜人はまばらに来て無口 河童三子 〇冬桜静かに見上げ宴もなし 々 〇玲瓏や悲しみを秘す冬桜 々
〇海底の海鼠の矜持こりと噛む (うみそこのなまこのきょうじこりとかむ) 〇転がして腹も見るなり海鼠かな 河童三子 〇海鼠腸(このわた)や海鼠といふどす黒き物 々 〇あの時はただ呑み込んだ海鼠かな 々
〇雨の日も上向いてをり枇杷の花 (めのひもうえむいてをりびわのはな) 〇温かき雨になりけり枇杷の花 河童三子 〇朝靄にまず現るる枇杷の花 々 〇この家の主律儀や枇杷の花 々
〇ホメラレモセズニクマレモセズ日向ぼこ (ほめられもせずにくまれもせずひなたぼこ) 〇日向ぼこ何にもいらぬと言いながら 河童三子 〇ありがたやありがたやとて日向ぼこ 々 〇手放してこの世みている日向ぼこ 々
〇でくのぼうの背も借りたし煤払 (でくのぼうのせいもかりたしすすはらい) 〇はたき持つ陶の狸と煤籠 河童三子 〇煤逃げや珈琲店のモーニング 々 〇そこのけそこのけルンバが通る大掃除 々
〇極月や自動扉に拒まれて (ごくげつやじどうとびらにこばまれて) 〇極月の雨が洗いひぬ屋根瓦 河童三子 〇極月や弘法市に刃物買ふ 々 〇極月の水惜しまれず魚市場 々
〇虎刈りを隠してをりぬ冬帽子 (とらがりをかくしておりぬふゆぼうし) 〇ニット帽素手の両手はポケットに 河童三子 〇夜勤終え銀漢見上ぐ鳥打帽 々 〇ニット帽プロレタリアを証して 々
〇小春凪釣りする人も顔馴染み (こはるなぎつりするひともかおなじみ) 〇小春凪小船を下りる関税吏 河童三子 〇水先人乗り込む艦の小春かな 々 〇浮桟橋タプリタプリと小春凪 々
〇漱石忌萩も薄も季を過ぐ (そうせききはぎもすすきもときをすぐ) 〇イギリスのツアーわいわい漱石忌 河童三子 〇漱石忌重き全集上の棚 々 〇初恋は坊ちゃんだった漱石忌 々
〇霰魚父が歌ひし子守唄 (あられうおちちがうたいしこもりうた) 〇杜夫魚(かくぶつ)の父情に厚き育ちかな 河童三子 〇杜夫魚や母には逢えぬ定めとて 々 〇霰魚極寒に生れ父とゐし 々
〇叡山の作務に鉈もつ年木樵 (えいざんのさむになたもつとしきこり) 〇山肌へそっと実を挿す年木樵 河童三子 〇年木山いのちの分だけ頂いて 々 〇山住にチェンソーも慣れ年木樵 々
〇湯豆腐に粋な酒酌む万太郎 (ゆどうふにいきなさけくむまんたろう) 〇湯豆腐やゆらゆら淡き夢の果て 河童三子 〇湯豆腐の明かりの果てに老いて在る 々 〇湯豆腐の湯気に包まる薄あかり 々
〇三椏を剥く村紙を漉く町と (みつまたをむくむらかみをすくまちと) 〇紙漉の取材了りて枯れ葎 河童三子 〇冷たさに紙漉の弟子戻り来ぬ 々 〇冬の雲製紙の煙呑み込むや 々
〇少年の心斬りさく鎌鼬 (しょうねんのこころきさくかまいたち) 〇狐のよめいり斬りこむ鎌鼬 河童三子 〇乳房二つすっぱり切りぬ鎌鼬 々 〇海へ出て一角となる鎌鼬 々
〇すきま風通ればそこに光射す (すきまかぜとおればそこにひかりさす) 〇隙間風胸の赤い羽根ゆらす 河童三子 〇すきま風明日に光通しけり 々 〇一人居は居間も寝間にも隙間風 々
〇褞袍着て浮腫を隠してをりにけり (どてらきてふしゅをかくしておりにけり) 〇丹前や酸ヶ湯の宿の雪計る 河童三子 〇褞袍着て座れば酒の燗思う 々 〇がん取って予後三年の褞袍かな 々