2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧
〇病中やカリリと噛めり新生姜 (びょうちゅうやカリリとかめりしんしょうが) 〇年老いし兄妹の家新生姜 河童三子 〇新生姜きりりと辛き朝の卓 々 〇しめ魚に薄紅涼し新生姜 々
〇休暇明け身丈に合わぬランドセル (きゅうかあけみたけにあわぬランドセル) 〇帰る子に送る荷物や休暇果つ 河童三子 〇幼顔の乙女となりて休暇明く 々 〇休暇明けもの言わぬまま子は去ぬる 々
〇赤とんぼ縞のパンツで竿の先 (あかとんぼしまのぱんつでさおのさき) 〇吾生きてまた新しき赤とんぼ 河童三子 〇赤蜻蛉赤レンジャーの目玉かな 々 〇赤とんぼ夕日の色も神の赤 々
〇底紅や老いぼれてゆく底もなし (そこべにやおいぼれてゆくそこもなし) 〇底紅や底意地わるき人に泣く 河童三子 〇白槿ひやけの貌も二つ三つ 々 〇潔(いさぎよ)く落ちてゐるなり槿かな 々
〇蜩に啼かれて海を渡りけり (ひぐらしになかれてうみをわたりけり) 〇蜩の啼けば痛むや胸の創 河童三子 〇蜩の山赤く燃え暮なじむ 々 〇若き日の蜩の声澄にけり 々
〇麦飯のとろろ掛けなら掻き込める (むぎめしのとろろがけならかきこめる) 〇とろろ擂る鉢の持ち役だった頃 河童三子 〇円卓の擂鉢囲むとろろ汁 々 〇喉越しは冷や汁にしたとろろかな 々
〇サーカスの喇叭響くや秋の町 (サーカスのらっぱひびくやあきのまち) 〇サーカス開くお伽の国へ秋の夜 河童三子 〇秋の夜天の綱より落天使 々 〇道化師の化粧落としぬ夜の秋 々 ロシヤ旅行より(サーカスの思い出)
○無花果にみなぶんぶんの先客あり (いちじくにみなぶんぶんのせんきゃくあり) 〇無花果の果肉に溺死するぶんぶん 河童三子 〇無花果三つ浜の恵比寿に供えらる 々 〇さぬき路の無花果を売る露店かな 々
○処暑の空メガホン響く甲子園 (しょしょのそらメガホンひびくこうしえん) ○今朝処暑の海越えて行く治療かな 河童三子 ○麺麭にバターたっぷりつけて処暑の朝 々 ○処暑の風ぼんやり蜻蛉眺めてゐる 々
○地蔵盆媼ひとりの灯守かな (じぞうぼんおうなひとりのひもりかな) ○路地の奥毛氈敷いて地蔵盆 河童三子 ○新調の赤い前掛け地蔵盆 々 ○地蔵盆子が唄いだす炭坑節 々
○今落ちてゆっくり動く蝉の足 (いまおちてゆっくりうごくせみみのあし) ○化野の石仏の上へ蝉落ちる 河童三子 ○落ち蝉の足に絡まる蜘蛛の糸 々 ○落蝉の大往生か腹見せて 々
○故郷に戻りて病みぬ秋の蝶 (ふるさとにもどりてやみぬあきのちょう) ○一頭の庭に休める秋の蝶 河童三子 ○其々の孤独に棲める秋の蝶 々 ○百年の孤独読み切る秋の蝶 々
○病む寝屋の未明を襲う秋の雷 (やむねやのめいをおそうあきのらい) ○小夜更けて寝惑う老いや秋の雷 河童三子 ○秋雷や宮の大杉真っ二つ 々 ○秋雷や父の座布団薄くなり 々
○珈琲の香に部屋満てる今朝の秋 (コーヒーのかにへやみてるけさのあき) ○胸の傷指になぞるや今朝の秋 河童三子 ○今朝の秋食器に籠る冷たさよ 々 ○今朝秋や塵収集車雨の中 々
○空蝉の己が山河を抱きしめる (うつせみのおのがさんがをだきしめる) ○空蝉の今年の一つ加えをり 河童三子 ○空蝉や背に腹は代えられぬもの 々 ○空蝉や何に縋るや吾骸(わがむくろ) 々
○魂送り三日に及ぶ雨滂沱 (たまおくりみっかにおよぶあめぼうだ) ○この闇にやらずの雨や魂送り 河童三子 ○長尻へ裏口開けて魂送り 々 ○瓜の馬雨に走らす魂送り 々
○宅老のベッドの上の生身魂 (たくろうのぶベッドのうえのいきみたま) ○丘の上を望みてをりぬ生身魂 河童三子 ○生身魂とて慕われもせずをりぬ 々 ○生身魂生くるも死すも風まかせ 々
○復員の父の水筒酔芙蓉 (ふくいんのちちのすいとうすいふよう) ○酔芙蓉戦に捨し生身魂 河童三子 ○戦争が腑を撃ちぬきぬ酔芙蓉 々 ○だんだんに筆枯にけり酔芙蓉 々
○芋殻焚く汝と在りし日の思い出に (おがらたくなとありしひのおもいでに) ○芋殻の火小さく焚いて汝をしのぶ 河童三子 ○吾胸の明かりを見ぬや魂迎 々 ○芋殻火のすぐ燃え尽きぬこの世かな 々
○湖を背にカムイが鳥の踊りの輪 (うみをせにカムイがとりのおどりのわ) ○胎内で河内音頭を踊りしや 河童三子 ○地を蹴って女踊りの進みけり 々 ○山寺の踊りを月の照らすかな 々
○盆行や法師蝉来て鳴き競ふ (ぼんぎょうやほうしせみきてなききそう) ○つくつくやお前も昼餉どきならむ 河童三子 ○絽の衣震わせて啼く法師蝉 々 ○八瀬に乗るロープウェーや法師蝉 々
○初嵐一過の朝や空の刷け (はつあらしいっかのあさやそらのはけ) ○初嵐寝不足の目のじんじんす 河童三子 ○竹箒畑に拾ふ初嵐 々 ○欅の葉窓に張り付く初嵐 々
○幾山河流寓の夏果てんとす (いくさんがりゅうぐうのなつはてんとす) ○夏果つる流木の影ひとつだに 河童三子 ○砂山の白骨木や夏果つる 々 ○人ゐんで波打ち際に夏果つる 々
○向日葵のやうにと言われ育ちけり (ひまわりのやうにといわれそだちけり) ○向日葵の顔お日さまに憧れし 河童三子 ○向日葵や己がコストにうな垂れる 々 ○向日葵の夜の姿を見も遣らず 々
○桐一葉吾はも少し軽ろからん (きりひとはわれはもすこしかろからん) ○一葉落つ大きな穴の開いてをり 河童三子 ○桐一葉胸の虚ろは消えぬまま 々 ○桐一葉乗っても良かれ今朝の風 々
○天皇の手植えの田圃稲の花 (てんのうのてうえのたんぼいねのはな) ○玉の露つけて開くや稲の花 河童三子 ○産土の風にさざ波稲の花 々 ○稲の花産土神の丈と容 々
〇丸齧りとてプチトマトホークにて (まるかじりとてプチトマトホークにて) ○青臭き蕃茄(とまと)齧れば汁被る 河童三子 ○齧りつく蕃茄の種や鼻の先 々 ○ミニトマト娘が唇のルビーかな 々
〇農小屋の葦簀の中や西瓜番 (のうごやのよしずのなかやすいかばん) ○裏小路葦簀が内に猫の貌 河童三子 ○川床や葦簀内なる灯の揺らぎ 々 ○旗掛の葦簀の風や海の小屋 々
〇スヌーピの切手で届く文月文 (スヌーピのきってでとどくふづきふみ) ○文月や欅の葉裏虫番う 河童三子 ○文月や頬杖突いてばかりかな 々 ○文月や月みて泣くはかぐや姫 々
〇頑なに天牛は手を拒む (かたくなにかみきりむしはてをこばむ) 〇カチカチと髪切り虫の歯ぎしりか 河童三子 〇くつろいで天牛の髭なぶる 々 〇拒まれて天牛を捨つるかな 々