2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

遠花火

〇町ひとつ越して急かるる遠花火 (まちひとつこしてせかるるとおはなび) 〇対岸に製紙の街や遠花火 河童三子 〇遠花火音に走れば海の闇 々 〇祖母の背にただ眠たくて遠花火 々

土用照り

〇何処からも鰻の話でぬ土用 (どこからもうなぎのはなしでぬどよう) 〇迷い人の放送ありぬ土用照り 河童三子 〇夜はよで月も照るなり土用かな 々 〇一雨もなき十日過ぎ土用入り 々

羽抜鳥

〇癌の身にどこやら哀れ羽脱鳥 (がんのみにどこやらあわれはぬけどり) 〇羽抜鳥おまへも癌の治療中か 河童三子 〇口あけて鳥肌見せて羽抜鳥 々 〇羽抜鳥眼力喝っと強かりき 々

草いきれ

〇寝ころべば地上は深き草いきれ (ねころべばちじょうはふかきくさいきれ) 〇君はどう生きて行くのか草いきれ 河童三子 〇草いきれ喰らいて犀のいのち哉 々 〇草いきれアフリカ象の大移動 々

雲の峰

〇この浦の浦島太郎雲の峰 (このうらのうらしまたろうくものみね) 〇機影見て積乱雲の上にゐる 河童三子 〇峰雲や窓より見やる伊吹島 々 〇宿題のノートに涎(よだれ)雲の峰 々

晩夏

〇峯寺の裏の稜線晩夏光 (みねでらのうらのりょうせんばんかこう) 〇倒木の森に遊べる晩夏光 河童三子 〇ひたひたと汀に寄せる晩夏光 々 〇山の湯は晩夏の風と光充つ 々

月見草

〇白日に堪え得ぬゆめの月見草 (はくじつにたええぬゆめのつきみそう) 〇月見草蜑の苫屋に捨て小舟 河童三子 〇月見草夜行列車が揺らし行く 々 〇月を見て開いてをりぬ月見草 々

河童忌

〇河童忌の太宰も並ぶ本棚に (かっぱきのだざいもならぶほんだなに) 〇河童忌や飛び込む音もなかりけり 河童三子 〇麺麭の飢えより辛き餓鬼忌かな 々 〇河童忌や世の中はぼんやりと見よ 々

夏潮

〇夏潮や怒濤に近くランチ席 (なつしおやどとうにちかくランチせき) 〇赫灼(かくしゃく)と漁船戻りぬ夏の潮 河童三子 〇磯浦の天神を搏つ夏の潮 々 〇一隻を巌陰に置く夏の潮 々

梅雨明ける

〇梅雨明けて山喧しくなりにけり (つゆあけてやまやかましくなりにけり) 〇空脱げば海もぬぐなり梅雨明ける 河童三子 〇梅雨明ける麒麟は首を干すやうに 々 〇梅雨明くや塵収集車二度回る 々

千日紅

〇百までの一人は長し千日紅 (ひゃくまでのひとりはながしせんにちこう) 〇齢食へば千日紅に親しめり 河童三子 〇千日紅まっすぐ立って枯れにけり 々 〇千日紅ぽろりと落ちし前歯かな 々

滴り

〇滴りの始まる勢い堪へにけり (したたりのはじまるきおいたえにけり) 〇滴りの源流となる旅心 河童三子 〇芋の葉の露にはじまる滴りか 々 〇一滴の空をひろげて滴りぬ 々

箱庭 

〇箱庭に傘寿のわれを立たせけり (はこにわにさんじゅのわれをたたせけり) 〇異国にてバオバブの箱庭の中 河童三子 〇箱庭にバオバブの木をまず立てる 々 〇箱庭は訪ねる人も吾もなく 々

熱帯夜

〇絵金観る蝋燭の灯の熱帯夜 (えきんみるろうそくのひのねったいや) 〇熱帯夜映像に氷河崩るる 河童三子 〇良寛も不眠もちなり熱帯夜 々 〇あの夜のサリン事件や熱帯夜 々

油照り

〇カラカラの蚯蚓引かるる油照り (からからのみみずひかるるあぶらでり 〇油照り百万遍の交差点 河童三子 〇小路より山車練り出づる油照り 々 〇下に見る京都盆地の油照り 々

団扇

〇絵団扇に猫が三味弾く酒を酌む (えうちわにねこがしゃみひくさけをくむ) 〇団扇取れば歯のない顔が笑ひをり 河童三子 〇国芳の浮世絵うちわ京の宿 々 〇酢めし混ぜる母の手叩く団扇かな 々

蜘蛛の巣

〇蜘蛛の囲に掛りて蜘蛛の不機嫌に (くものいにかかりてくものふきげんに) 〇朝の道蜘蛛の巣の意図考へる 河童三子 〇蜘蛛の囲や子は力学を学びをり 々 〇繕って蜘蛛の巣城の主かな 々

斑猫

〇斑猫に引かれて田舎暮らしかな (はんみょうにひかれていなかくらしかな) 〇当たるも八卦斑猫の径を行く 河童三子 〇道をしへものすごい顎持ってをり 々 〇京の斑猫化野へ誘ひぬ 々

〇もろぶたに押し鮨運ぶ法被の子 (もろぶたにおしずしはこぶはっぴのこ) 〇二階から子が取りにくる祭ずし 河童三子 〇祭ずし山車(だし)曳く子にも振舞われ 々 〇祭ずし卵の花に紅の蕊(しべ) 々

兜虫

〇兜虫の子棟梁となりにけり (かぶとむしのことうりょうとなりにけり) 〇兜虫風格を見せ飛び立てり 河童三子 〇雌カブト銃後備へと言われし時 々 〇宿題の子の手離さぬカブト虫 々

名古屋場所

〇ご贔屓の上布着こなし名古屋場所 (ごひいきのじょうふきこなしなごやばしょ) 〇名古屋場所勝ち力士にも尻の砂 河童三子 〇三関脇みな白星の名古屋場所 々 〇鯱(しゃちほこ)の幡に隠るる名古屋場所 々

〇昨日今日雷あまた梅雨明くや (きのうきょうかみなりあまたつゆあくや) 〇雷なってビバルディの曲のなか 河童三子 〇梅雨の雷傘を抱へて走りけり 々 〇稲光寝室の詳らかなり 々

夜鷹

〇昼にみる夜鷹はまこと鷹でなし (ひるにみるよたかはまことたかでなし) 〇醜さを嘆きて啼くは夜鷹かな 河童三子 〇夜鷹鳴く星があんまし近い夜は 々 〇ケッケッケッ森の夜鷹は月に鳴く 々

〇乳房なき谷間のあたり汗ぬぐふ (ちぶさなきたにまのあたりあせぬぐう) 〇病の夫一生分の汗に逝く 河童三子 〇アルプスを三日歩きて汗の塩 々 〇次の世も美しき汗流したし 々

七夕

〇星まつり傘寿祝ひてくれるといふ (ほしまつりさんじゅひわいてくれるという) 〇星合や逢いたい人のみな銀河 河童三子 〇七夕の笹に溢るる子の昔 々 〇短冊の世界平和に七夕雨 々

水中花

〇カンパリを好む女と水中花 (カンパリをこのむおんなとすいちゅうか) 〇乳房喪き女に開く水中花 河童三子 〇水中花再発のなきがん細胞 々 〇偽りを永久に咲かせる水中花 々

凌霄花

〇北窓の海を隠すや凌霄花 (きたまどのうみをかくすやのうぜんか) 〇椋鳥が蹂躙するか凌霄花 河童三子 〇のうぜんに独りの卓を覗かるる 々 〇憧れは空の青さか凌霄花 々

梅雨出水

〇何枚の青田沈めし梅雨出水 (なんまいのあおたしずめしつゆでみず) 〇梅雨出水線状帯といふ大雨 河童三子 〇オリーブの木の流れくる出水川 々 〇梅雨出水ポスト浸かりし書の行方 々

山開き

〇山開きご神体背に霧の嶺 (やまびらきごしんたいせにきりのみね) 〇山開き一の鎖に二の鎖 河童三子 〇神山を白装束に山開く 々 〇法螺貝が導き登る山開き 々

半夏生

〇たこ焼きをくるりと回す半夏生 (たこやきをくるりとまわすはんげしょう) 〇半夏生モーリタニアの蛸と鯖 河童三子 〇百姓の次男は大工半夏生 々 〇終活を迫られている半夏かな 々