2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧
〇戸を少し開けて笹鳴き確かめり (とをすこしあけてささなきたしかめり) 〇笹鳴きや内向の子をそっと待つ 秋甫 〇笹鳴きやおとぎ噺の筺開ける 々 〇猫の耳ぴくりと動く笹子かな 々
〇三階の欅に雪を着せてゐる (さんがいのけやきにゆきをきせている) 〇今降った雪降りやんだもう消えた 秋甫 〇旅人のふりして歩く雪の野を 々 〇鼻の上へ落ちるばかりや小米雪 々
〇病得て茎石をやや持て余す (やまいえてくきいしをややもてあます) 〇日の菜漬け日の出のやうに漬けあがる 秋甫 〇強運といわれ今年の茎漬ける 々 〇茎石の今年も増えて並びけり 々
〇千両の実の盛り上がり創癒える (みせんりょうのみのもりあがりきずいえる) 〇万両の首うな垂れて病重し 秋甫 〇藪柑子一灯献ず癌基金 々 〇蛍雪の功ともしをり藪柑子 々
〇浄水器ピピッと鳴るや寒の水 (じょうすいきピピッとなるやかんのみず) 〇寒水を飲み肋骨に染みわたる 秋甫 〇酒蔵の筧溢るる寒の水 々 〇食後飲む薬に添えし寒の水 々
〇京の鴨底冷えの底覗きをり (きょうのかもそこびえのそこのぞきをり) 〇底冷えや京都も奈良も底の中 秋甫 〇底冷えや癌病棟のリノリュウム 々 〇麻酔さめて底冷えの手術台かな 々
〇頑なに混わり拒む寒卵 (かたくなにまじわりこばむかんたまご) 〇寒卵割り入れ今朝の験担ぐ 秋甫 〇寒卵子の旅立ちに揺れ動く 々 〇産み落ちてまだ暖かき寒卵 々
〇寒雀欅を鵯に乗っ取られ (かんすずめけやきをひよにのっとられ) 〇成年にならぬ危うさ寒雀 秋甫 〇寒雀群れを離れて寂しかろ 々 〇寒雀俯くな寒雀らしく 々
〇冬の雨身に耳すます予後の日々 (ふゆのあめみにみみすますよごのひび) 〇追いかけて子に渡す傘冬の雨 秋甫 〇胸の窩(あな)静かに流る冬の雨 々 〇大欅枝に宿れる冬の雨 々
〇水仙や真っすぐ伸びる予後の日々 (すいせんやまっすぐのびるよごのひび) 〇空晴れて予後まっすぐな水仙花 秋甫 〇水仙のむさくるしさに吾齢 々 〇水仙の一本崖の群生に 々
〇初大師讃岐うどんを釜上げに (はつだいしさぬきうどんをかまあげに) 〇初弘法土佐の刃物も並びけり 秋甫 〇初大師満濃の水たゆたえし 々 〇初弘法筆の誤り見て帰る 々
〇悴める子の手摩れどほどかれし (かじかめるこのてさすれどほどかれる) 〇男の子なれど白魚のごと悴める 秋甫 〇一人一人の闇ありて悴めり 々 〇叡山の空張り付くや悴めり 々
〇大寒や駅への路の遅速かな (だいかんやえきへのみちのちそくかな) 〇大寒や武者震いして岐路を行く 秋甫 〇大寒を背負って歩く人のゐて 々 〇大寒や静かに血路ひらくなり 々
〇山陰の潤め鰯に海鳴りす (さんいんのうるめいわしにうみなりす) 〇北の海来て鰯の目潤みけり 秋甫 〇山陰の悲話に鰯の目潤む 々 〇潤め鰯みすずの詩を聞きしかや 々
〇俯きの背負いバッグに寒の月 (うつむきのせおいバックにかんのつき) 〇寒月の出て踊り出す北の町 秋甫 〇この街の猫あらわれず寒の月 々 〇信号機眠らせていく寒の月 々
〇枯菊の裾惹く隅のあわれかな (かれぎくのすそひくすみのあわれかな) 〇枯れてなを野菊の可憐誘うかな 秋甫 〇枯菊やわが罪の許されしかば 々 〇枯菊の姿晒すも仏意かな 々
〇術後の痕皮一枚に寒旱 (じゅつごのあとかわいちまいにかんひでり) 〇老農の莨(たばこ)くゆれる寒旱 秋甫 〇癒えずして唇渇く寒旱 々 〇寒旱この涙もて拭わんや 々
〇日脚伸ぶ旅行鞄で退院す (ひあしのぶりょこうかばんでたいいんす) 〇父の影息子の影や日脚伸ぶ 秋甫 〇気掛かりなことの上にも日脚伸ぶ 々 〇気の病少しづつかな日脚伸ぶ 々
〇冬桜一期一会の四人部屋 (ふゆざくらいちごいちえのよにんべや) 〇飛び立てる羽をもらひし冬桜 秋甫 〇明日こそは君の翔ぶとき冬桜 々 〇幼子のこぶしひろげる冬桜 々
〇冬の蚊や胸の創痕あわれなり (ふゆのかやむねのきずあとあわれなり) 〇冬の蚊や胸の左右に無き乳房 秋甫 〇冬の蚊の長き手足の置き場所 々 〇冬の蚊を打たずにおけばないてをり 々
〇病卓に赤飯の出て成人日 (びょうたくにせきはんのでてせいじんび) 〇点滴下げ癌病棟の新成人 秋甫 〇新成人の肩ポンと押し出す 々 〇背負いバックの一団に成人の日 々
〇冬の月術後の傷の品定め (ふゆのつきじゅつごのきずのしなさだめ) 川瀬巴水の版画冬の月より 〇冬の月喪くした乳を見せあふて 秋甫 〇ひとり哭けばもらひ泣きする冬の月 々 〇冬の月癌病棟の灯が落ちて 々
〇病得て生きて還さる去年今年 (やまいえていきてかえさるこぞことし) ヤフージャパンの画像お借りしました 〇イエスの裳裾触ってみたし去年今年 秋甫 〇雲流るやうに息する去年今年 々 〇去年今年ベッドにものを考える 々
〇窓際へベッド移りて冬の雲 (まどぎわへべっどうつりてふゆのくも) 福井気象台の写真をお借りしました 〇退院のベッド光るや冬の雲 秋甫 〇冬の雲結露の玻璃を流れをり 々 〇愛宕山ベレーのような冬の雲 々
〇七草の病院食で祝わるる (ななくさのびょういんしょくでいわわるる) 〇七草粥京野菜もて叩かるる 秋甫 〇蓋取れば熱き薺の粥なりき 々 〇チュウブ提げ薺の粥をいただきぬ 々
〇肩たたかれ麻酔覚めたる淑気かな (かたたたかれますいさめたるしゅくきかな) 〇医師の手が軽くベッドに淑気かな 秋甫 〇笹立てて川を行く夢淑気かな 々 〇声掠れため口きけず淑気かな 々
〇松取れて乳がん取ってお疲れさん (まつとれてにゅうがんとっておつかれさん) 〇松取れて胸はイエスのごと哀れ 秋甫 〇癌病棟常の比叡や松取れて 々 〇松取れて愛宕の山に日の当たる 々
〇福笑いの目マスクして泣いてをり (ふくわらいのめマスクしてないてをり) 〇福笑いピカソが泣いてをりにけり 秋甫 〇福笑い京奈良ほどに目のあいて 々 〇福笑い術後の医師と手を握る 々
〇三日にて病院食の節も飽く (みっかにてびょういんしょくのせちもあく) 〇病窓の眺めも飽きて三日かな 秋甫 〇節三日しじみ汁に葱の香恋し 々 〇三日過ぎ仕事はじめの手術かな 々
〇六階のがん病棟に初比叡 (ろっかいのがんびょうとうにはつひえい) 〇初山河遠嶺の雪輝きぬ 秋甫 〇癒さるる旅の途中に初山河 々 〇病棟を周回すれば初山河 々