2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

遅き日

〇野を帰る牛も飽くるや暮遅し (のをかえるうしもあくるやくれおそし) 〇遅き日や裏に忘れし干し蒲団 河童三子 〇独り済ます夕餉の後の暮遅し 々 〇春日遅々回覧板の立ち話 々

春愁

〇トルソーの首なきゆえの春憂ひ (トルソーのくびなきゆえのはるうれい) 〇春愁やこの乱世を生きること 河童三子 〇春愁や駄々こねる子の機嫌にも 々 〇AIが小説を書く春愁(うれ)ふ 々

衣更着

〇如月の底石見せて池乾く (きさらぎのそこいしみせていけかわく) 〇衣更着や嘘の話に愛想して 河童三子 〇衣更着の母ぼけたまふ夜の道 々 〇如月や鍾繇(しょうよう)の字を好む人 々

水温む

〇跳ね橋の運河の水も温むころ (はねばしのうんがのみずもぬるむころ) 〇水温むいそしく立つや厨ごと 河童三子 〇紙漉きの水の温みを戒める 々 〇今年また一人の暮し水温む 々

料峭

〇料峭や恋の不首尾にふて寝猫 (りょうしょうやこいのふしゅびにふてねねこ) 〇料峭やスマホ片手に迷ふ街 河童三子 〇料峭や乳房なき胸の聴診器 々 〇料峭や一点の差の合否かな 々

東風

〇夕東風が雀遊ばす魂あそび (ゆうこちがすずめあそばすたまあそび) 〇北海に東風来て鰯打ちあがる 河童三子 〇鰆東風鰆届ける在所なく 々 〇曳売りの魚乾かしぬ朝の東風 々

〇宍道湖の蜆と聞くや神々し (しんじこのしじみときくやこうごうし) 〇鍋と釜石垣りんとシジミかな 河童三子 〇産褥の母に父煮る蜆汁 々 〇かりかりと蜆洗って眠らせる 々

春塵

〇春塵やマスカラつけた駱駝の目 (しゅんじんやマスカラつけたらくだのめ) 〇炊き出しの釜へ飛び込む春埃 河童三子 〇春塵に笛吹いてゐネパール人 々 〇春埃開店のドア押して入る 々

春一番

〇春一番振袖の娘を拉致せんと (はるいちばんふりそでのこをらちせんと) 〇春一番丘の上より見る我が家 河童三子 〇春一番路地もの攫ひ通り過ぐ 々 〇春一番この世の襤褸舞い上げる 々

木の芽雨

〇木の芽雨電話で誘ふランチかな (きのめあめでんわでさそうランチかな) 〇この雨が促してゐる山椒の芽 河童三子 〇山椒の木雨に潤みて芽吹き待つ 々 〇山裾の雲が隠すや芽吹き雨 々

春寒し

〇イソップの狐の噺春寒し (イソップのきつねのはなしはるさむし) 〇春寒き瓦礫の下に鈴の音 河童三子 〇起きぬけのトイレに転び春寒し 々 〇ポータブルトイレある部屋春寒し 々

春の星

〇春の星ジャズシンガーの黒き肌 (はるのほしジャズシンガーのくろきはだ) 〇春の星古地図の中に日本なく 河童三子 〇一つ二つ零れてきそう春の星 々 〇春の星句集刷るプリンターの音 々

種芋

〇種芋の闇に芽の出る憂ひかな (たねいものやみにめのでるうれいなか) 〇芽を出せる種芋の胎窶れけり 河童三子 〇種芋の余り夕餉の煮ころがし 々 〇捨てられし屑芋も芽を出しにけり 々

春待つ

〇夭折の画家の自画像春待てり (ようせつのがかのじがぞうはるまてり) 〇明日とて誰にも知れぬ春を待つ 河童三子 〇鳴き砂に波の音して春を待つ 々 〇抱擁する画家の自画像春嵐 々

孕鹿

◯目の奥に畏れ湛へし孕み鹿 (めのおくにおそれたたへしはらみしか) 〇若草や女の園に孕み鹿 河童三子 〇若草の尾根に目覚むる春の鹿 々 〇孕み鹿目の合って距離測られる 々

水菜

〇京料理水菜壬生菜のお番菜 (きょうりょうりみずなみぶなのおばんざい) 〇土肥へて水菜ハリハリ蓬髪 河童三子 〇京水菜となりの畝は九条葱 々 〇京を出て山の水菜のあらあらし 々

春障子

〇春障子敲けばポンと音すなり (はるしょうじたたけばポンと音すなり) 〇影さして外に声する春障子 河童三子 〇村うちの浮世話しに春障子 々 〇春障子終の住処の光かな 々

紀元節

〇紀元節継ぎ合わされし弥生土器 (きげんせつつぎあわされしやよいどき) 〇紀元節カヌーで渡る太平洋 河童三子 〇建国日大急ぎ梅開花 々 〇神話経て古事記の国の建国日 々

北窓開ける

〇北窓を開ければ雀遊びゐる (きたまどをあければすずめあそびいる) 〇北窓を開けて白亜のアマルフィ 河童三子 〇海見える北窓開けて水しごと 々 〇北窓を開け海光の窓となる 々

余寒

〇水槽の亀眠らせる余寒かな (すいそうのかめねむらせるよかんかな) 〇浚渫船(しゅんせつせん)余寒の水を鷲掴む 河童三子 〇ガラガラと余寒巻き揚ぐ浚渫船 々 〇俎板の上の余寒に青菜切る 々

猫柳

〇日のマント瀬の光背に猫やなぎ (ひのマントせのこうはいにねこやなぎ) 〇猫やなぎ一歩踏み出す速さかな 河童三子 〇猫柳お日さまを着てファッションショー 々 〇猫やなぎマイクのやうに声拾ふ 々

獺まつり

〇獺祭十二柱のご先祖で (おそまつりじゅうにはしらのごせんぞで) 〇しんじょう君土佐の高知で獺まつり 河童三子 〇老の日を獺の祭に暮すかな 々 〇本棚の獺祭(だっさい)めくを愛をしむ 々

恋猫

〇一瞬を砂利けり上げる猫の恋 (いっしゅんをじゃりけりあげるねこのこい) 〇恋猫に斬られの与三が二三匹 河童三子 〇春猫は略奪婚を成し遂げし 々 〇恋猫の雨夜はことに窶れしや 々

絵踏

〇絵踏すませて生まれしか信仰を得ず (えふみすませてうまれしかしんこうをえず) 〇ただ生きて絵踏の苦難知らざるも 河童三子 〇世の中の何の絵踏をせよとかや 々 〇絵踏の夢子規の写真が前に在る 々

春立ちぬ

〇ヒヤシンス根が目に見えて春立ちぬ (ヒヤシンスねがめにみえてはるたちぬ) 〇白湯飲めば茶柱もなき春立ちぬ 河童三子 〇立春と言われて畑の大根立つ 々 〇立春やきのうの鰯くれと猫 々

節分

〇節分の柊いわし猫招く (せつぶんのひいらぎいわしねこまねく) 〇節分の一人の昼餉恵方向く 河童三子 〇節分や柊の棘溌剌と 々 〇節分会赤鬼が出す招待状 々

煮凝り

〇煮凝の鯛の目玉を琥珀とや (にこごりのたいのめだまをこはくとや) 〇煮凝に標本のごとあばら骨 河童三子 〇懐かしき思いでに似て煮凝ぬ 々 〇いつか星になる煮凝のエキスかな 々

春隣

〇生水に若菜洗ふや春隣 (しょうずいにわかなあらうやはるとなり) 〇目刺焼く昼餉の煙春隣 河童三子 〇校門にひよこ売りゐて春近し 々 〇春近し追憶にあるひよこ売り 々