2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

二月尽

〇二月尽野にも山にも光満つ (にがつじんのにもやまにもひかりみつ) 〇吾乳房なきにも慣れし二月尽 河童三子 〇終末に見取り図のあり二月尽 々 〇軋む戸を直して開ける二月尽 々

北窓開く

〇北窓を開けば牛の顔顔顔 (きたまどをひらけばうしのかおかおかお) 〇北窓を開けて小鳥の林檎差す 河童三子 〇北窓を開け劉生の絵を観てり 々 〇「しおかぜ」の北窓開く裏走る 々

春めく

〇駅弁を紐解く車窓春めくや (えきべんをひもとくしゃそうはるめくや) 〇各駅に青春切符春めきぬ 河童三子 〇一陣の風の匂に春めきて 々 〇光満つ橡林の春めきし 々

如月

〇如月の都大路をひとり歩す (きさらぎのみやこおおじをひとりほす) 〇如月や癌検診の帰り道 河童三子 〇如月の夜道ひときわ靴の音 々 〇きさらぎの夜すき焼きを約しけり 々

獺祭

〇賑やかにやがて淋しき獺祭 (にぎやかにやがてさびしきだつまつり) 〇人の死や獺の祭に終りけり 河童三子 〇老いてなほ夢あれこれと獺祭 々 〇老い暮らし獺の祭の真っ最中 々

三椏の花

〇三椏や籬の横に咲にけり (みつまたやまがきのよこにさきにけり) 〇三椏の花自給自足の郷へ入る 河童三子 〇三椏の花紙漉きの小屋のぞく 々 〇山里の人に似し三椏の花 々

踏絵

〇魔女となる勇気はあらず踏絵ふむ (まじょとなるゆうきはあらずふみえふむ) 〇すり減りし聖母子像の踏絵かな 河童三子 〇今年また踏み絵の前に立ってゐる 々 〇守る命一つもってる絵踏かな 々

菠薐草

〇ポパイ知らぬ世代となりて箥薐草 (ポパイしらぬせだいとなりてほうれんそう) 〇ひらひらとまた風花に菠薐草 河童三子 〇春寒し菠薐草が甘くなる 々 〇青々と凍て土抱きぬ菠蘢草 々

多喜二の忌

〇海荒れて怒れる二月多喜二の忌 (うみあれていかれるにがつたきじのき) 〇蟹の脚だらりと伸びし多喜二の忌 河童三子 〇朝の雨霙となりし多喜二の忌 々 〇北方の領土哀しき多喜二の忌 々

雨水

〇粥炊いて大根煮てゐる雨水かな (かゆたいてだいこにているうすいかな) 〇キッチンの闇に芽の出る雨水かな 河童三子 〇水甕を満たしてをりぬ雨水の水 々 〇今日雨水啐啄の機を待ってをり 々

料峭

〇料峭や診療所の下足札 (りょうしょうやしんりょうしょのげそくふだ) 〇料峭やまた薄化粧峰の雪 河童三子 〇料峭や安曇野の野に道祖神 々 〇料峭や交番に尋ね猫のビラ 々

安吾忌

〇安吾忌の次かの子忌の火宅かな (あんごきのつぎかのこきのかたくかな) 〇安吾忌や寺もこの世の火宅かな 河童三子 〇安吾忌の火事のニュースの二つかな 々 〇安吾忌や父は太郎を肩車 々

梅の花

〇白梅や真澄の空を魁る (はくばいやますみのそらをさきがける) 〇梅の花術後一年一か月 河童三子 〇白梅や四十八本雄蕊もち 々 〇白梅も咲いて終われば南高梅 々

はこべ

〇はこべらに放して山羊を飼いし日々 (はこべらにはなしてやぎをかいしひび) 〇陽の下の薺(なずな)はこべらみな逞し 河童三子 〇焼け跡にまずはこべらの立ち上がる 々 〇はこべの野にユキと名付けし山羊を飼う 々

東風

〇風見鶏カラカラ鳴らし東風来る (かざみどりカラカラならしこちきたる) 〇東風吹いて砂噛む思ひ多かりき 河童三子 〇夕東風や雀百羽を西へやる 々 〇朝東風は干し菜の縄を踊らせる 々

春の星

〇人の世に疎んじられて春の星 (ひとのよにうとんじられてはるのほし) 〇春の星憂える日々のつづきをり 河童三子 〇この地球(ほし)に憂いのありて朧星 々 〇春の星チョコ三枚を荷に入れて 々

蕗の薹

〇ほどほどの苦さが良けれ蕗の薹 (ほどほどのにがさがよけれふきのとう) 〇ほろ苦き天ぷらがよき蕗の薹 河童三子 〇蕗の薹人にも旬の短くて 々 〇年々に遠くへ去りし蕗の薹 々

紀元節

〇人に馬に埴輪の穴や紀元節 (ひとにうまにはにわのあなやきげんせつ) 〇真っすぐに畑野の煙建国祭 河童三子 〇建国日日の丸揚げるジャンプ台 々 〇人の世に旗立てて行く紀元節 々

春時雨

〇手術後の身を存問す春時雨 (しゅじゅつごのみをそんもんすはるしぐれ) 〇春しぐれバス停に待つ赤い傘 河童三子 〇飛び出して行く子を止めず春しぐれ 々 〇春時雨墨染を縫う烏かな 々

青木の実

〇彩に艶あるにはあるが青木の実 (いろにつやあるにはあるがあおきのみ) 〇嫁に行く一途な願い青木の実 河童三子 〇青木の実鍵盤の音響く庭 々 〇気に添わぬ一つや二つ青木の実 々

大試験

〇神棚に受験票上げて大試験 (かみだなにじゅけんひょあげておおしけん) 〇大試験終えし子の顔清々し 河童三子 〇生まれ出るためにあの世の大試験 々 〇我が道の回答のなき大試験 々

待春

〇晩年の春待つ心質しけり (ばんねんのはるまつこころただしけり) 〇待春や暖炉に聖書繙いて 河童三子 〇待春や待つことの奥義身に滲む 々 〇待春の心迷えるコレヘトの書 々

余寒

〇気が付けば余寒の中に一人ゐて (きがつけばよかんのなかにひとりいて) 〇ラジオ消す闇の余寒へ手を伸ばす 河童三子 〇受話器持つ全身に余寒包みし 々 〇掛時計針の止まりし余寒かな 々

浅春

〇浅春の癒える兆しに座りをり (せんしゅんのいえるきざしにすわりおり) 〇田作りの残り炒る部屋浅き春 河童三子 〇術痕の美しく癒え春兆す 々 〇春浅し伝道の書を開けて閉ず 々

立春

〇立春の次の日雪の舞い始む (りっしゅんのつぎのひゆきのまいはじむ) 〇春立つや卒寿の人に励まされ 河童三子 〇立春や花びらのやう雪踊る 々 〇今雪の窓に日が照り春立つや 々

追儺

〇追儺とて北北西へ恵方巻 (ついなとてほくほくせいへえほうまき) 〇豆まきの声なく豆の音もなく 河童三子 〇年豆を両手に余し困憊す 々 〇節豆に敲きだされし鬼とゐる 々

凍蝶

〇凍蝶の或る日砕ける散華かな (いてちょうのあるひくだけるさんげかな) 〇凍蝶の今朝かるがると風に舞う 河童三子 〇冬の蝶風葬を待つ今朝の風 々 〇凍蝶の悲しみのなき息微か 々

三寒四温

〇連れだって猫の散歩や四温の日 (つれだってねこのさんぽやしおんのひ) 〇山三日雪の日過ぎて四温かな 河童三子 〇野と山に三寒四温水の音 々 〇登校の子の弾む声四温かな 々