2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

晩秋

〇晩秋をシンメトリーに描く湖 (ばんしゅうをシンメトリーにえがくうみ) 〇晩秋や暗褐色に吾包む 河童三子 〇晩秋やシンメトリーの虚実見せ 々 〇晩秋や過ぎし祭の幡靡く 々

〇霧迅し来島を行く船の笛 (きりはやしくるしまをいくふねてき) 〇霧はれてなあんだここにあったのか 河童三子 〇霧晴れて姨捨山が見えていた 々 〇人生の四分の一は霧の中 々

色鳥

〇色鳥が起きよ寝よやと言ひに来る (いろどりがおきよねよやといいにくる) 〇里暮れて色鳥早も寝る繕い 河童三子 〇色鳥や翁まろびておわしけり 々 〇色鳥に目が合って首傾げらる 々

柚子

〇隠れ家と言ふ宿の名や柚子の里 (かくれやというやどのなやゆずのさと) 〇我名柚かおりたつよな句つくりたし 河童三子 〇人知れず葉ずれに香る柚子の里 々 〇山の湯へ柚子浮かばせて湯治猿 々

秋夕焼

〇秋夕焼あの日観たマカロニウエスタン (あきゆやけあのひみたマカロニウエスタン) 〇秋夕焼燈台の灯を点け渋る 河童三子 〇鴇色の恋もありそう秋夕焼 々 〇幼日の秋夕焼の中に今 々

神無月

〇佛壇に仏はおはす神無月 (ぶつだんにほとけはおわすかんなづき) 〇気の抜けぬ術後二年目神無月 河童三子 〇誕生の神無月なる傘寿かな 々 〇神無月出雲へ神を尋ねるや 々

合歓の実

〇風に透く西施が合歓の実の哀れ (かぜにすくせいしがねむのみのあわれ) 〇合歓は実に母の形見の着物干す 河童三子 〇合歓の実や晶子も常の母ならむ 々 〇垂乳根の母となりけむ合歓は実に 々

木守柿

〇残り柿原田泰治と昭和の空 (のこりがきはらだたいじとしょうわのそら) 〇一つより二つが強し木守柿 河童三子 〇落柿舎に三百年の木守柿 々 〇木守柿烏に七つ子のありし 々

団栗

〇選ばれし団栗の実の丸し (えらばれしどんぐりのみのまるし) 〇団栗や今も秘密の橡の木 河童三子 〇今年また団栗拾ふ心かな 々 〇秘密の木見上げて落ちる団栗待つ 々

牛膝

〇あろうことか京の土産に牛膝 (あろうことかきょうのみやげにいのこづち) 〇都人も付けて戻りぬ牛膝 河童三子 〇牛膝からりと晴れし神の径 々 〇晩年の君に出会ひし牛膝 々

初紅葉

〇金閣の館も褪せぬ初紅葉 (きんかくのやかたもあせぬはつもみじ) 〇懐石の膳よりもらふ初紅葉 河童三子 〇きのふ今日いやに冷えたり初紅葉 々 〇初紅葉しまなみ海道自転車に 々

数珠玉

〇数珠玉の固き輝き還らぬ日 (じゅずだまのかたきかがやきもどらぬひ) 〇数珠玉や欲る子の背丈越してなる 河童三子 〇インデアンごっこずずこの首飾り 々 〇数珠玉をきのふと違う風ゆらす 々

〇象の目にサバンナ遠き月映る (ぞうのめにサバンナとおきつきうつる) 〇月出でてサバンナの夢見入る象 河童三子 〇檻の上に月出て象の目に泪 々 〇象の子に父無く母といる月夜 々

美術展

〇日展を出て夕暮れの六本木 (にってんをでてゆうぐれのろっぽんぎ) 〇日展や応募の夢に友老いぬ 河童三子 〇紅葉ぬけ青の時代のピカソ展 々 〇奈良もみじ襞柔らかき白鳳仏 々

鹿

〇北山の妻恋ふ鹿の声に雨 (きたやまのつまこうしかのこえにあめ) 〇鹿啼くやひねもす雨に濡れてゐし 河童三子 〇老鹿の角たそがれに靡くやう 々 〇朝靄に息白く鹿立ち上がる 々

灯火親し

〇秋灯しコーラン置かる宿机 (とうかしたしコーランおかるやどつくえ) 〇灯火親し封筒貼てふ内職の 河童三子 〇パソコンのキー押す灯火親しみて 々 〇灯火親しまだ見つからぬ捜し物 々

秋まつり

〇秋まつり太鼓に喧嘩煽る人 (あきまつりたいこにけんかあおるひと) 〇出前鮨届き始まる秋まつり 河童三子 〇提灯のひとつ灯りし秋祭 々 〇伊勢音頭唄ひて来るや秋祭 々

赤い羽根

〇赤い羽根ワンコインとて五百円 (あかいはねワンコインとてごひゃくえん) 〇乳房取ってピンクのリボン赤い羽根 河童三子 〇乳房なき胸を飾りぬ赤い羽根 々 〇入り口に見せて置きけり赤い羽根 々

新蕎麦

〇新蕎麦に蘊蓄多き老舗かな (しんそばにうんちくおおきしにせかな) 〇新蕎麦と謂ひ緑濃き混ぜ物を 河童三子 〇新蕎麦に炙り鮎乗す祖谷の狭 々 〇新蕎麦の笊に盛られし淡みどり 々

枸杞の実

〇枸杞の実の健気に空家守れるや (くこつみのけなげにあきやまもれるや) 〇入る人も無き枸杞の実の籬(まがき)かな 河童三子 〇クコの実摘みて国領川の土手すべる 々 〇枸杞の実を漬けて長寿の夢の仲 々

銀木犀

〇夢に覚め銀木犀の香の中に (ゆめにさめぎんもくせいのかのなかに) 〇木犀の香に誘われ他人の墓 河童三子 〇鯨幕張る境内の銀木犀 々 〇木犀の香満つ新聞休刊日 々

零余子

〇零余子飯山の匂ひに炊き上る (むかごめしやまのにおいにたきあがる) 〇飯盒に焚きて喜ぶ零余子飯 河童三子 〇零余子採る指ホロホロと零れけり 々 〇一つ二つ栗ほど大き零余子飯 々

十三夜

〇隣家の葬済みて静まる十三夜 (りんかのそうすみてしずまるじゅうさんや) 〇十三夜群雲を着て青白し 河童三子 〇午前二時頭上に高き十三夜 々 〇仰ぎ見る森のけものに十三夜 々

柘榴

〇鬼子母神柘榴持つ手の血潮かな (きしもじんざくろもつてのちしおかな) 〇子を喰らひ柘榴もらひぬ鬼子母神 河童三子 〇累々と多産の女柘榴熟る 々 〇臨月の柘榴に風が促すや 々

秋時雨

〇秋時雨窓より葬を見送りぬ (あきしぐれまどよりそうをみおくりぬ) 〇秋時雨人の出入りに棺かな 河童三子 〇秋時雨今朝の薬を飲み忘れ 々 〇島の船降りる人なき秋時雨 々

穭田

〇穭田の青あおと吾も許さるる (ひつじだのあおあおもゆるさるる) 〇穭田に雨を溜めをる哀れかな 河童三子 〇穭田に風が連れくる祭笛 々 〇故郷の江州米や穭の田 々

そぞろ寒

〇頬欠ひてそぞろ寒しや道祖神 (ほほかいてそぞろさむしやどうそじん) 〇そぞろ寒ピリッと痛む手術痕 河童三子 〇そぞろ寒市焼却炉の底深し 々 〇三度めの間違い電話そぞろ寒 々

天高し

〇限界の集落高し秋高し (げんかいのしゅうらくたかしあきたかし) 〇天高し九十九曲がっていろは坂 河童三子 〇にぎり飯三つ背負って秋高し 々 〇天高し釣り糸投げて鳶寄り来 々

〇籾干や菰が広がる楽しさよ (もみほしやこもをひろげるたのしさよ) 〇籾筵並べて庭の座敷かな 河童三子 〇菰敷いて庭暖かや籾筵 々 〇陽の庭に籾干見るや湖東線 々

露寒

〇露寒や目覚めて胸を合わせ着る (つゆざむやめざめてむねをあわせきる) 〇露寒やさらりと炊きし芋の粥 河童三子 〇夕暮の三日月清く露寒し 々 〇露寒や停泊船の灯ともる 々