2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

十一月

○うかうかと十一月を零しけり (うかうかと十一がつをこぼしけり) といっても うかうかは言葉の綾で、本当のところは、それなりにコツコツとと言ってもいいくらい細々とではあるけれど、過ごしたのである。 以前友人に、句から私の気持ちが見えてこないと言…

烏瓜

○顔彩の朱色盗みし烏瓜 (がんさいのしゅいろぬすみしからすうり) 朱色の絵 烏瓜を色紙に描いたのは去年。今年は柿を描いた。両方ともよく熟れると真っ赤になるが、それは、あくまで林檎の赤色とは異なっている。私の絵具はいつも朱色が一番先になくなって…

尉鶲

○尉鶲ひとり暮しでないような (じょうびたきひとりぐらしでないような) 独居老人宅 尉鶲が近くの木で賑やかに鳴いている。一人暮らしではそんな声を聞くだけでも家の外と繋がっている気持ちになる。 きのうは雨でどこかに隠れていた彼らが今朝はたのしそう…

冬の雨

○傘の娘の腰ふくよかに冬の雨 (かさのこのこしふくよかにふゆのあめ) 雨の一日 台所の窓から自分の頭のように、ぼんやり霞んでいる海を見ていた。朝から何度見てもそこは同じ眺めであった。 その景色を破って傘が畠の中の道を下って行った。冷たい雨にも関…

蕪引く

○爺婆孫 犬猫も来て蕪引く (じじばばまごいぬねこもきてかぶらひく)

新酒

○新酒横目に焼酎ボトル抱え取る (しんしゅよこめにしょうちゅうボトルかかえとる) 新酒は秋から冬に絞られる。で、畢竟冬の季語となるが、かたや焼酎は夏の季語に分類される。

青鮫

○青鮫が兜太の庭に来て寒し (あおさめがとうたのにわにきてさむし) ○梅咲いて庭中に青鮫が来ている 金子兜太 青鮫は戦争体験の心象風景であると、兜太自身の解説をテレビで聞いたことがある。

新嘗祭

○白米をもっとも好きで新嘗祭 (はくまいをもっともすきでにいなめさい)

青写真

○兄はまだ日向にゐるよ青写真 (あにはまだひなたにいるよあおじゃしん)

江戸菊

○江戸菊の毛槍のごとく咲きにけり (えどぎくのけやりのごとくさきにけり) 古典菊 牧野植物園の江戸菊

冬の蝶

○日溜や婀娜な姿に冬の蝶 (ひだまりやあだなすがたにふゆのちょう) 暖かな冬 今日は暖かかった。10月中旬の陽気だそうだ。 下のジャガイモ畑の上を数匹の蝶が舞っていた。どこかに潜んでいたのが陽気に誘われて出てきたのだろうが、ジャガイモの葉に卵を…

○凩の雨戸叩いて哭く夜かな (こがらしのあまどたたいてなくよかな) 凩一号 全国的にはしばらく前に凩一号のニュースを聞いたが、当地では昨夜の風がそうだったかもしれない。春一番も凩も当地では「やまじ風」として扱われ、市役所の放送でやまじ風の予報…

大根引

○一本づつ老の夕餉に大根引く (いっぽんづつろうのゆうげにだいこひく)

冬の灯

○冬の灯の裏見て走る一輌車 (ふゆのひのうらみてはしるいちりょうしゃ)

芭蕉忌

○芭蕉忌や蓮いもは涙もろくて (ばしょうきやはすいもはなみだもろくて) 蓮いもまたは琉球ともいう レンコンでも里芋でもない。長く伸びた茎を食料にするために栽培される。 一宿泊まりで高知の牧野植物園から「いの」へ廻って仁淀川沿線や寒風山の紅葉を観…

実葛

○実葛むかし男のリーゼント (さねかずらむかしおとこのリーゼント) 実葛 実葛はまた美男葛とも呼ばれるそうだ。この実から男性の整髪料が作られたことが名の由来とか。昔の整髪料はハードに固めるものが多かったように思う。

照紅葉

○蔀戸の城下に狭の照紅葉 (しとみどのじょうかにきょうのてるもみじ)

口切

○口切や生涯二番煎じにて (くちきりやしょうがいにばんせんじにて) 口切 春に作った新茶を詰めた茶筒の封を切って茶事をするときのこと。

酉の市

○熊の手に福あり余る酉の市 (くまのてにふくありあまるとりのいち) 今年の一の酉は(11月11日) 各地の神社で酉の市が開かれた。酉の市といえば熊手。最近は熊手の竹の手が見えないほど福の物が一杯盛られて2〜3万円辺りの物が人気らしい。

小春日和

○小春日和八千色に世界堂 (こはるびよりはっせんしょくにせかいどう) 画材店「世界堂」 文房具店はどんな年齢になっても嬉しい所だ。 新宿に本店のある「世界堂」は絵具の色だけでも8000色もあるそうだ。

末枯

○末枯や丘に日当たる窓のあり (うらがれやおかにひあたるまどのあり) 冬暁の散歩 数か月ぶりに散歩を再開した。6時前にはまだ暗い家を出発して、東へ斜めに国道へ降り、国道を西へ歩いて丘を上がる小一時間ほどの行程。 我が家が見える丘の所まで上がって…

○凩や笛や太鼓の政事 (こがらしやふえやたいこのまつりごと) アメリカ大統領選挙 大方のアメリカ人にブーイングされているトランプ氏が選挙に勝った。 イギリスのEU離脱国民投票の結果とどこか似ている。国民は誰もがとどまりたかったと言っているのに結…

一位の実

○魂の不滅もらひし一位の実 (たましいのふめつもらいしいちいのみ) 永遠の命 キリスト教では一位の実は永遠の命を象徴していると、どこかでちょい聞きしたけど。

立冬

○立冬や障子に光集めをり (りっとうやしょうじにひかりあつめをり)

冬の空

○胴上げの覇者風花を喰らいけり (どうあげのはしゃかざばなをくらいけり) 全日本大学駅伝 今年の伊勢路は青山学院が優勝。

身に入む

○腑抜けしにものの哀れの身に入みる (ふぬけしにもののあわれのみにしみる)

冬に入る

○八つめの鐘やゝ小さく冬に入る (やっつめのかねややちさくふゆいいる)

文化の日

○文化の日通販に本予約する (ぶんかのひつうはんにほんよやくする) 佐藤愛子 今年93歳になられるらしい。大声で怒れる元気を持ち合わせておられるのは頼もしい限りで、何故か大阪出身であるというところにホットしたものだ。 僅か数時間で通販で買った「…

熟柿

○熟柿喰ふ産褥の母見てしまう (じゅくしくらうさんじょくのははみてしまう)  幼児期の記憶 戦後も私は滋賀の祖父母の元に一人疎開の延長生活をつづけていた。そこへ京都から母がやって来た。時々母は帰省していたのだろう。しばらくは滞在していくのが何…

柿熟るる

○馴初めの枝に今年の柿熟るる (なれそめのえだにことしのかきうるる)