2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

小六月

〇小六月沖停泊のチップ船 (ころくがつおきていはくのチップせん) 〇小春凪釣りする人を突堤に 河童三子 〇鳶の輪の港を回る小春空 々 〇海向きの厨に臨む小春凪 々

冬晴れ

〇冬麗や工煙真すぐに紙の街 (とうれいやこうえんますぐにかみのまち) 〇冬麗海を見ながらジャムを煮る 河童三子 〇冬日和峰を越え行く鴉かな 々 〇冬うらら海眺めつつ予後の日々 々

暮れ早し

〇暮早し小屋なき家鴨灯に寄り来 (くれはやしこやなきあひるひによりく) 〇沖を行く船の速さや暮れ早し 河童三子 〇暮れ早ししばらく不平雀の子 々 〇椋鳥の帰り来る樹の暮れ早し 々

冬の海

〇冬の海浜千鳥ゐてモノトーン (ふゆのうみはまちどりいてモノトーン) 〇浜千鳥友にはぐれて冬の海 河童三子 〇冬の浜鴉引きゆく魚の腸(うおのわた) 々 〇流木の風にあがらう冬の浜 々

短日

〇短日や同じ樹影に都市墓園 (たんじつやおなじじゅえいにとしぼえん) 〇県境の山の東に日短 河童三子 〇短日の珈琲館にハチャトリアン 々 〇百姓の早風呂出でし日短か 々

冬桜

〇冬桜トロッコ置かる坑の道 (ふゆざくらトロッコおかるこうのみち) 〇冬桜淡き憂いを放たれず 河童三子 〇冬桜楓紅葉を括るかな 々 〇冬桜人は静かに見て去りぬ 々

木枯

〇木枯やドラマティックなエピローグ (こがらしやドラマティックなエピローグ) 〇木枯の窓打つ音に暖炉の前 河童三子 〇木枯や吾晩年の不服なく 々 〇耳鳴りのごと木枯の哭きにけり 々

勤労感謝の日

〇新嘗祭未来都市には何供えむ (にいなめさいみらいとしにはなにそなえむ) 〇未来図に勤労感謝の日あるや 河童三子 〇勤労感謝の日音速越えて飛ぶ 々 〇金属の衣着るやも新嘗祭 々

〇雪原は狐一匹ゐるばかり (あばしりはきつねいっぴきいるばかり) 〇京みやげ稲荷の狐貴船の雪 河童三子 〇里へ来て甲賀のきつね下駄盗む 々 〇藪入りの狐の包み赤い蹴出し 々

波郷忌

〇波郷忌や筵に座る女かな (はきょうきやむしろにすわるおんなかな) 〇切れ字という句のいのちあり波郷の忌 河童三子 〇湯の街に坊ちゃん電車波郷の忌 々 〇波郷忌や笊の枯露柿裏返す 々

石蕗の花

〇石蕗の花盛りにて主帰る (つわぶきのはなさかりにてあるじかえる) 〇石蕗の黄氏選ばずに寺の庭 河童三子 〇石蕗のお寺に存らば高貴の黄 々 〇予後の日や石蕗日和つづくかな 々

根深汁

〇気の晴れぬ朝多かりき根深汁 (きのはれぬあさもありけりねぶかじる) 〇大根の千六本に味噌の香や 河童三子 〇やうやうに朝しらみけり根深汁 々 〇根深汁葱の泪を刻むかな 々

初冬

〇初冬や京に別れの紐結ぶ (はつふゆやきょうにわかれのひもむすぶ) 〇航跡の光る初冬の橋渡る 河童三子 〇病癒え戻りし庭の初冬かな 々 〇初冬の窓に欅葉舞やまず 々

干し柿

〇干し柿をならべて明日は戻るかな (ほしがきをならべてあすはもどるかな) 〇キャンパスの見ゆる三階柿を干す 河童三子 〇マンションに日は短かしや柿吊るす 々 〇枯露柿を日々天心に裏返す 々

冬の蜂

〇戻る巣は閉ざされてあり冬の蜂 (もどるすはとざされてありふゆのはち) 〇蜜を吸う力も果てて冬の蜂 河童三子 〇暖かき日の夢の中冬の蜂 々 〇越えられぬ働きバチの冬来る 々

芋煮会

〇放蕩の甥戻り来て芋煮会 (ほうとうのおいもどりきていもにかい) 〇徐に(おもむろ)に本音出にけり芋煮会 河童三子 〇芋鍋やころころと出る過去の罪 々 〇芋鍋の湯気の向こうの同胞よ 々

熟柿

〇夕焼けの中の熟柿は黒かりき (ゆうやけのなかのじゅくしはくろかりき) 〇熟柿とて旬のありけり真っ赤かな 河童三子 〇熟柿喰らふ鬼子母神にならんとや 々 〇処女のごと血潮の満てる熟柿かな 々

帰り花

〇電車バス乗り継いで来し帰り花 (でんしゃバスのりかえてこしかえりばな) 〇帰り花病癒やして帰る道 河童三子 〇寂しさに耐えて咲くかな帰り花 々 〇帰り花切らずに寿命まっとうさす 々

大根

〇青首のぬっと立ちたる大根かな (あおくびのぬっとたちたるだいこかな) 〇味淡き大根の生き残るかな 河童三子 〇大根切る千六本のリズムかな 々 〇通学路大根畑の七十年 々

障子

〇今頃は障子に影す吊るし柿 (いまごろはしょうじにかげすつるしがき) 〇縁側にどくだみ干せる障子かな 河童三子 〇どの家も白き障子や里帰り 々 〇まろやかな障子明りや机の辺り 々

湯豆腐

〇湯豆腐や釈迦牟尼の灯の前に (ゆどうふやしゃかむにぶつのひのまえに) 〇竹仙の湯豆腐に見栄の松茸 河童三子 〇湯豆腐の鍋の火尽きて命あり 々 〇湯豆腐寺湯気の向こうに釈迦牟尼仏 々

冬隣

〇風邪の子の夢の花園冬隣 (かぜのこのゆめのはなぞのふゆどなり) 〇冬隣心ゆたかに白湯を呑む 河童三子 〇一日を風の音聴く冬隣 々 〇物忘日に日に増えて冬近し 々

団栗

〇団栗の優劣決める裁判員 (どんぐりのゆうれつきめるさいばんいん) 〇賽銭は団栗なりや山の宮 河童三子 〇鹿棲みて団栗塚を残しけり 々 〇抽斗へ今年の団栗加えけり 々

花八手

〇花八手幼き日々を隠すかな (はなやつでおさなきひびをかくすかな) 〇花八手手水の水を貰いけり 河童三子 〇軒先に少し日陰や花八手 々 〇戸口まで踏み石二つ八手咲く 々

牧閉じる

〇牧閉じてカルストに風鳴くばかり (まきとじてカルストにかぜなくばかり) 〇カルストを霰叩きぬ牧閉じる 河童三子 〇牧閉じて牛が夢みる草千里 々 〇特老の三階の鍵牧閉じる 々

落柿舎

〇落柿舎や三百年の柿の実成る (らくししゃやさんびゃくねんのかきのみなる) 〇落柿舎の釜屋の徳利冬どなり 河童三子 〇落柿舎の高き柿の木柿仰ぐ 々 〇嵯峨野来て紫式部白式部 々

紅葉

〇寂庵の門閉ざされて照紅葉 (じゃくあんのもんとざされててるもみじ) 〇照紅葉特老を見て帰る道 河童三子 〇一二本在って目を惹く櫨紅葉 々 〇故郷の雑木紅葉に火照るかな 々

文化の日

〇麺麭にバターたっぷり塗って文化の日 (パンにバターたっぷりぬってぶんかのひ) 〇文化の日健身球を掌に回す 河童三子 〇知恩寺に古本まつり文化の日 々 〇麺麭好きの一斤食す文化の日 々

綿虫

〇綿虫の大綿担ぎ飛びにけり (わたむしのおおわたかつぎとびにけり) 〇雪婆(ゆきばんば)逃れて祖母の袖袂 河童三子 〇綿虫の綿打ち直す仕事持ち 々 〇大綿の漂う昏れの気鬱かな 々

小春

〇知恩寺に古本並ぶ小春かな (ちおんじにふるほんならぶこはるかな) 〇小春日の近衛通りに吉田寮 河童三子 〇小春日や百万遍に団子買う 々 〇小春日や犬も歩けば棒にあたる 々