2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧
○晦日蕎麦きつねたぬきの呼び出さる (みそかそばきつねたぬきのよびださる) ○大晦日京より届く鰊蕎麦 秋甫 ○濃い口薄味錯綜の晦日蕎麦 々 ○大年の仕舞い銭湯の帰途の鐘 々
○日記果さてつぎの世をなんとしょう (にっきはつさてつぎのよをなんとしょう) ○日記果心のままに矩越えず 秋甫 ○六道の入口にてや日記果 々 ○平成と令和の御代の日記果 々
○只管に米喰う日々の古日記 (ひたすらにこめくうひびのふるにっき) ○饒舌の言い訳に尽く古日記 秋甫 ○厄介な荷物となりぬ古日記 々 ○古日記半世紀とはゴミ屋敷 々
○独居の年用意こそ勤しめり (ひとりいのとしよういこそいそしめり) ○一々のスマホ検索年用意 秋甫 ○節豆の割合わする年用意 々 ○ストーブの煮物見ている年用意 々
○湯豆腐に肩凝る京を離れけり (ゆどうふにかたこるきょうをはなれけり) ○湯豆腐に鼻つけてけもの径帰る 秋甫 ○湯気親しお粥湯豆腐お味噌汁 々 ○湯豆腐や着倒れは京気質かな 々
○数へ日やスクルージの夢見せられし (かぞえびやスクルージのゆめみせられし) ○数へ日や今年も懺悔多かりき 秋甫 ○数へ日や子の帰る日の二重丸 々 ○数へ日や金柑を煮て香を満たす 々
○亡き兄もとなりに座る日向ぼこ (なきあにもとなりにすわるひなたぼこ) ○瀬戸をゆく白き船見ぬ日向ぼこ 秋甫 ○この地球の片隅にゐる日向ぼこ 々 ○ミサイルが飛んで来るやも日向ぼこ 々
○オルガンにぶつかって出る聖夜劇 (オルガンにぶつかってでるせいやげき) ○降臨祭天使のはしご描いてある 秋甫 ○エスさまと歌う讃美歌聖夜劇 々 ○羊飼いばかり出てくる聖夜劇 々
○青年の心隠して山眠る (せいねんのこころかくしてやまねむる) ○獣らを眠らせる山海を閉ざす 秋甫 ○青年の背に重き荷や山眠る 々 ○眠る山降りて獣の放浪す 々
○髪染めて昼に使いし冬至風呂 (かみそめてひるにつかいしとうじぶろ) ○カピバラの目を細めたる柚子湯かな 秋甫 ○仕切りやが柚子回しやる冬至風呂 々 ○湯治客持参の柚子を浮かせけり 々
○大嚏でて一人居の憂さ晴れる (おおくしゃみでてひとりいのうさはれる) ○噂にものぼらぬ嚏たてつづく 秋甫 ○断末魔か猫身もだえる嚏かな 々 ○己がして己が驚く嚏かな 々
○涸川の小石に遠き旅路かな (かれがわのこいしにとおきたびじかな) ○涸川や誰か一人を渡らしむ 秋甫 ○川涸れて今年の小石拾いけり 々 ○涸川の磧楽しむ日の光 々
○火を焚けば人来て昔懐かしむ (ひをたけばひときてむかしなつかしむ) ○普請場の人立ち替わる焚火かな 秋甫 ○瓦師の大工うらやむ焚火かな 々 ○焚火して原始人の血蘇る 々
○実南天となりの塀を覗くかな (みなんてんとなりのへいをのぞくかな) ○実南天釣瓶の水を鏡とす 秋甫 ○南天の実に雪うさぎ生まれけり 々 ○南天の実に大吉の籤結ぶ 々
○菰巻いて獄に引かれる蘇鉄かな (こもまいてごくにひかれるそてつかな) ○松の菰臍の辺りと見てとりぬ 秋甫 ○菰巻の松みな低き腰並べ 々 ○菰巻の松の鯔背に並びけり 々
○一匹の蠅もろともに冬籠 (いっぴきのはえもろともにふゆごもり) ○冬籠机上の画集俳句集 秋甫 ○ひねもすの風の音のみ冬籠 々 ○寄り添ひてまことしやかに冬籠 々
○隙間風より一条の光射す (すきまかぜよりいちじょうのひかりさす) ○隙間風封じ一間の孤独かな 秋甫 ○教室の椅子の下より隙間風 々 ○隙間風の線上にある死をみつめる 々
○雑炊を好まぬ父の薄情け (ぞうすいをこのまぬちちのうすなさけ) ○雑炊のいやおじやのと鍋奉行 秋甫 ○雑炊の牡蠣蟹河豚と驕れるや 々 ○雑炊の賑やかなれど粥寂し 々
○山の灯を盗んで来たり冬いちご (やまのひをぬすんできたりふゆいちご) ○冬いちごシンクの窓を明るくす 秋甫 ○冬いちごふふみし孫の唇紅し 々 ○山径に見つけて嬉し冬いちご 々
○手袋を脱ぐ仕事する素手を信じ (てぶくろをぬぐしごとするすでをしんじ) ○手袋は忘れる物と思いけり 秋甫 ○手袋に紐編む母の意図みえて 々 ○親指の穴の手袋杖もつ手 々
○眼に鷹を写してをりぬ冬の蜂 (めにたかをうつしておりぬふゆのはち) ○今生の陽だまりにゐて冬の蜂 秋甫 ○蜜蜂の山の巣箱に冬陽かな 々 ○冬の蜂夢は花野の蜜の中 々
○遠嶺へつづく尾根道冬暖 (とおみねへつづくおねみちふゆあたたか) ○葉隠れに木いちご赤し冬暖 秋甫 ○峰に出て山の稜線冬あたたか 々 ○冬温し障子に白き陽の満ちて 々
○枯すすき昭和を遠く懐かしむ (かれすすきしょうわをとおくなつかしむ) ○枯蘆の暮れて雀を放ちやる 秋甫 ○淀川にハーモニカ吹く枯芒 々 ○枯蘆を舟が分け逝くあの世かな 々
○開戦忌レノンも銃にたおれけり (かいせんきレノンもじゅうにたおれけり) ○十二月八日晴朗なれど濤高し 秋甫 ○鰤の目に海の残れる開戦忌 々 ○十二月八日朝焼けの中にゐる 々
○藪柑子根を直角に立ち上がる (やぶこうじねをちょっかくにたちあがる) ○赤き実の雪より出でし藪柑子 秋甫 ○鎮かさや奥の間に挿す藪柑子 々 ○聖書もてる小さき人や藪柑子 々
○この家に律儀に老いて枇杷の花 (このいえにりちぎにおいてびわのはな) ○割烹着に目白もてなす枇杷の花 秋甫 ○弔いの庭騒がしや枇杷の花 々 ○村の子の声懐かしき枇杷の花 々
○冬帽子胸に聖堂見て回る (ふゆぼうしむねにせいどうみてまわる) ○おそろいの毛糸帽にてフョルドの船 秋甫 ○冬帽子少し斜めに被りをり 々 ○冬帽子愚直に被る背を見つつ 々
○冬の海鮫の背渡る兎かな (ふゆのうみさめのせわたるうさぎかな) ○冬海や魔物潜みぬ千尋かな 秋甫 ○冬の海断崖に立つ命札 々 ○カラカラと浚渫船を冬の浜 々
○群衆のマスクの中の怒りかな (ぐんしゅうのマスクのなかのいかりかな) ○マスクして風邪のふりして通り過ぐ 秋甫 ○道化師のマスクの奥の憂い顔 々 ○マスクして少し隠れている気持ち 々
○荒星の梁軋ませる音ぞする (あらぼしのはりきしませるおとぞする) ○サーカスの象の涙や寒昴 秋甫 ○オッペルの象に優しき冬の月 々 ○冬銀河一つ閑に零れをり 々 宮沢賢治のオッペルの象は、大きな分銅をつけられて毎日稲扱ぎ機をノンノンノンと 踏んでいた…