2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧
○青梅雨が岬も畔も盗みけり (あおつゆがみさきもくろもぬすみけり) ○青梅雨や書肆に動かぬ人並べ 秋甫 ○青梅雨やモネの絵の油滴る 々 ○青梅雨やマーラーのラララアダージェット 々
○耕して天より吹きぬ青田風 (たがやしててんよりふきぬあおたかぜ ○青田風朝な夕なに父母の愛 秋甫 ○都より近江に近し青田風 々 ○比良下りる近江の里の青田風 々
○柚子青し堅き頭の青二才 (ゆずあおしかたきあたまのあおにさい) ○青柚子や冷やし豆腐に香の優し 秋甫 ○青柚子の落つれば先に熟れにけり 々 ○青柚子の頑固なまでに石頭 々
○蛭蓆気怠き午後の牧の牛 (ひるむしろきだるき午後のまきのうし) ○蛭筵小暗らがりをば親しめり 秋甫 ○蛭つけて叔母が田圃を上がり来る 々 ○血を吸って腓(こむら)の蛭の丸くなり 々
○沢潟を生けて目高を泳がせる (おもだかをいけてめだかをおよがせる) ○沢潟や遅き梅雨入りの報ありし 秋甫 ○沢潟の見栄切って立つ田の舞台 々 ○沢潟や田に名門の冥利尽く 々
○夕闇に知らぬが仏烏蛇 (ゆうやみにしらぬがほとけからすへび) ○蛇の業賢さゆえに地を這いぬ 秋甫 ○蛇塚の社に白蛇祀られし 々 ○様つけし庭の祠の家守り蛇 々
○生かされて明日は囮の鮎となる (いかされてあすはおとりのあゆとなる) ○鮎背ごし喰わず嫌ひも確かにある 秋甫 ○鮎釣の男を分ける早瀬かな 々 ○鮎釣るや平家の裔か笠の影 々
○樗の花欅の柱夢みるや (おうちのはなけやきのはしらゆめみるや) ○水辺咲く樗とみたり悪夢かな 秋甫 ○花樗虫に嫌われ獄門台 々 ○晒し首など昔ごと樗咲く 々
○時計なき鳥らと共に夏至の朝 (とけいなきとりらとともにげしのあさ) ○夏至の日の朝刊を待ちくたびれる 秋甫 ○夏至の日の最も長きひと日終え 々 ○老いの身に漸よう夏至の日が墜ちて 々
○茄子の花吾に子一人孫ひとり (なすのはなわれにこひとりまごひとり) ○水茄子といわれて花の愛ほしき 秋甫 ○京野菜なればしっとり茄子の花 々 ○過疎村に水たっぷりと茄子の花 々
○潮騒も海酸漿の音も寂し (しおさいもうみほうずきのねもさびし) ○海酸漿の乾きて波止に投げ出さる 秋甫 ○手に揉んで海酸漿を聞いてみる 々 ○荒磯や海酸漿の子守歌 々
○時経てば己が旧りぬ桜桃忌 (ときたてばおのれがふりぬおうとうき) ○店頭に桃並び出す太宰の忌 秋甫 ○少年の人間探求桜桃忌 々 ○桜桃忌少年が持つ美顔液 々
○子が真似て鼻に皺寄す虎魚かな (こがまねてはなにしわよすおこぜかな) ○虎魚みて機嫌を治す山の神 秋甫 ○鬼虎魚顔と白身にあるギャップ 々 ○この男気は優しくて虎魚顔 々
○身につまされる孑孑に生きること (みにつまされるぼうふらにいきること) ○ががんぼのヤゴの水中めがねかな 秋甫 ○空梅雨の世に孑孑の少子かな 々 ○孑孑に水田の宇宙膨張説 々
○南風に立ちガッツポーズを拒む君 (はえにたちガッツポーズをこばむきみ) ○南風来れば宝島など夢想する 秋甫 ○クビライの襲来止めし南風なれば 々 ○古の南風蝋燭の灯に睦けり 々
○水足りて早苗饗の夜の月映す (みずたりてさなぶりのよのつきうつす) ○早苗饗の有線放送ある在所 秋甫 ○早苗饗にひやけの顔の揃いけり 々 ○早苗饗や水番の籤引いて閉ず 々
○ハンカチやもう青年と謂うべきか (ハンカチやもうせいねんというべきか) ○真白なるハンカチ似合う青年なり 秋甫 ○人混みにハンカチ振って君と会う 々 ○ハンケチという物に縁遠く過ぐ 々
○十薬をまこと薬のやうに嗅ぐ (じゅうやくをまことくすりのやうにかぐ) ○山棲やどくだみに囲まれてある 秋甫 ○十薬の野に一本の径白し 々 ○どくだみの吊るされてある寂しさよ 々
○蚊柱の渾沌に顔叩かれる (かばしらのこんとんにかおたたかれる) ○蚊柱や因果律など考える 秋甫 ○蚊柱のこれが乱れぬ動きかな 々 ○蚊柱の蜂起に見えぬ蜂起かな 々
○蝸牛梅雨入りは今日もせぬそうな (かたつむりついりはきょうもせぬそうな) ○いつの日か壁食べ尽くす蝸牛 秋甫 ○教室にでで虫集い理科授業 々 ○でで虫の渡る世間に鬼一匹 々
○時の日や朝の田に鷺立ってをり (ときのひやあさのとにさぎたってをり) ○時の日や食後の薬飲み忘れる 秋甫 ○時の日のパン焼く時間短くする 々 ○早死の母時の日の生まれだった 々
○青葉冷トロールのゐる北の森 (あおばびえトロールのいるきたのもり) ○青葉冷ムーミン谷のトロールたち 秋甫 ○青葉潮隣にばかり鯵の群 々 ○青葉闇俳句雑誌の発売日 々
○パセリの樹青虫の森食べ歩き (パセリのきあおむしのもりたべあるき) ○青虫のパセリ丸齧りして現れる 秋甫 ○親指の爪に摘み取るパセリの香 々 ○パセリ噛んで朝をパリッと始めけり 々
○走り梅雨にて床下の浸かりけり (はしりつゆにてゆかしたのつかりけり) ○走り梅雨とてそれなりの晴れ間かな 秋甫 ○石鎚に雲溜めてをり走り梅雨 々 ○白き蚊のパソコン歩む走り梅雨 々
○牧の風現の証拠を牛の食む (まきのかぜげんのしょうこをうしのはむ) ○医者ゐらずと現の証拠の昔かな 秋甫 ○老う母にげんのしょうこを摘む息子 々 ○茨の葉探して現の証拠踏む 々
○青梅雨や首振って牧の牛来る (あおつゆやくびふってまきのうしくる) ○青梅雨のスカイラインを走りけり 秋甫 ○ライダーの並び青梅雨ぬけて行く 々 ○青梅雨や風のキャンプに天狗岳 々
○蜥蜴の夢ティラノサウルスだった頃 (とかげのゆめティラノサウルスだったころ) ○よく見ればつぶらなるかな蜥蜴の目 秋甫 ○蜥蜴手に持つ子の瞳蜥蜴の目 々 ○尻尾切って神は蜥蜴を守り給う 々
○梅雨めくや食後の薬呑み忘れ (つゆめくやしょくごのくすりのみわすれ) ○梅雨めくや卯木の花の俯きて 秋甫 ○暁の潤めば宙の梅雨めける 々 ○仰ぐもの俯くものや梅雨待てり 々
○嵩のない記憶畳んで衣更 (かさのないきおくたたんでころもがえ) ○句敵のゐて衣替え迫られる 秋甫 ○脱ぎ捨てし古着の山や衣替え 々 ○そう謂えば喜寿になるのか衣更 々
○六月の日暮は匂うダツラかな (ろくがつのひぐれはにおうだつらかな) ○六月の鴉が落とす羽一本 秋甫 ○六月の杉のてっぺん子だくさん 々 ○六月の花色替えて咲にけり 々