2021-01-01から1年間の記事一覧

大晦日

〇いのちあり晦日の蕎麦の味をとる (いのちありみそかのそばのあじをとる) 〇命えて大年に聴く第九かな 河童三子 〇大年の亀を起こして洗ひけり 々 〇大年の日差し豊かにペンキ塗り 々

日記果つ

〇一冊の闘病記録日記果つ (いっさつのとうびょうきろくにっきはつ) 〇入院と退院までの日記果つ 河童三子 〇この頃は切り抜き貼って日記果つ 々 〇癌といふ病の途中日記果つ 々

年用意

〇年用意かりそめの世を慈しむ (としよういかりそめのよをいつくしむ) 〇髪切って風呂に終わりぬ年用意 河童三子 〇数年に一度の寒波年用意 々 〇冷凍のお節届くや年用意 々

年木

〇年木積む落合村の煙かな (としぎつむおちあいそんのけむりかな) 〇山郷に節木の燃える年の暮 河童三子 〇雲水の襷掛けたる年木割り 々 〇家々の暮らし見せたる年木かな 々

年詰まる

〇荷揚げ待つタンカーの灯や年詰まる (にあげまつタンカーのひやとしつまる) 〇ATMの列に並びて年詰まる 河童三子 〇年詰まる水菜白菜葱買いしむ 々 〇防災食買いだめに似て年詰まる 々

山眠る

〇駅伝や都大路の山眠る (えきでんやみやこおおじのやまねむる) 〇山眠る隣の山は振り向かず 河童三子 〇崩れ跡あらわに見えし山眠る 々 〇一年を生き延びてきて山眠る 々

〇鱈鍋に豆腐白菜みな白し (たらなべにとうふはくさいみなしろし) 〇鱈の腑の抜かれ魂胆なき身かな 河童三子 〇北海の水底暗く鱈棲める 々 〇雪海を助惣鱈の漁船行く 々

室咲き

〇室咲きの出て世間に身を置くや (むろざきのいでてせけんにみをおくや) 〇室咲の華の値競う花展かな 河童三子 〇室出でて存外強き花ならむ 々 〇室育ち鼻にもかけぬ露地の花 々

炉話

〇炉話のをはりて雪の降りはじむ (ろばなしのおわりてゆきのふりはじむ) 〇炉話を座敷童の待ってをり 河童三子 〇炉話やゆんべの童ひとりをり 々 〇雪になり子にせがまれる炉の話 々

柚子湯

〇猿風呂に柚子投げ込まれ冬至かな (さるぶろにゆずなげこまれとうじかな) 〇一人湯に柚子二つ三つ冬至風呂 河童三子 〇豊作の柚子を貰ひてジャム煮る日 々 〇温かき柚子湯のカップ双手に持つ 々

冬至南京

〇カボチャ煮て早や日の暮れる冬至かな (かぼちゃにてはやひのくれるとうじかな) 〇転がりし冬至南京煮られしや 河童三子 〇南京の晴れて煮らるる冬至かな 々 〇従妹煮や冬至かぼちゃと小豆かな 々

焚火

〇流寓の民集まりて浜焚火 (りゅうぐうのたみあつまりてはまたきび) 〇ジプシーの夜の灯りや焚火の火 河童三子 〇焚火の火荒野に眠る羊飼い 々 〇流れ星焚火の上へ墜ちにけり 々

善知鳥

〇子を撃たれ善知鳥は流す血の泪 (こをうたれうとうはながすちのなみだ) 〇北の果て善知鳥親子の睦みをり 河童三子 〇子を遣って父は静かな善知鳥かな 々 〇子を想ふ善知鳥地獄の鬼となり 々

〇雪起し戸を響かせて夜もすがら (ゆきおこしとをひびかせてよもすがら) 〇粉雪や信号待てば二三片 河童三子 〇一足の靴跡つづく雪の道 々 〇月の夜は狐の跳ねる雪の上 々

実南天

〇鵯鳴きて南天の実を欲りにけり (ひよなきてなんてのみをほりにけり) 〇どどどーと南天の実へ雪おろし 河童三子 〇鵯啄む南天の実の朱色かな 々 〇雨去って日の輝きや実南天 々

冬籠り

〇冬籠りわが身ばかりが太りけり (ふゆごもりわがみばかりがふとりけり) 〇白湯飲みて羊羹のある冬ごもり 河童三子 〇鈍色の沖に船みる冬籠り 々 〇駆り立たる挑戦もなく冬籠る 々

枇杷の花

〇枇杷の花両の乳房は切って無し (びわのはなりょうのちぶさはきってなし) 〇此処がその終の棲家か枇杷の花 河童三子 〇日当たりは申し分なき枇杷の花 々 〇枇杷の花胸のもやもや消えぬ日や 々

日向ぼこ

〇日向ぼこ譲りゆずりて風の道 (ひなたぼこゆずりゆずりてかぜのみち) 〇居並びて宇宙行く話日向ぼこ 河童三子 〇ほっこりといのち温めて日向ぼこ 々 〇クレヨンの散らばりをりぬ日向ぼこ 々

襟巻

〇草色のマフラー穴に狐の子 (くさいろのマフラーあなにきつねのこ) 〇純白のマフラー哀し開戦忌 河童三子 〇変身の帽子マフラー町徘徊 々 〇襟巻に包む故郷のつむじ風 々

手袋

〇手袋の右手ばかりを喪しけり (てぶくろのみぎてばかりをなくしけり) 〇手袋を咥えて家の鍵探す 河童三子 〇椅子の上へ手袋置かるプロローグ 々 〇手袋の手と握手して別れけり 々

冬帽子

〇冬帽子膝に第九の演奏会 (ふゆぼうしひざにだいくのえんそうかい) 〇冬帽子被りて病に立ち向かふ 河童三子 〇貧を売るアナーキストの毛糸帽 々 〇街角に吟遊詩人冬帽子 々

火燵

〇手の触れて二人俯く火燵かな (てのふれてふたりうつむくこたつかな) 〇たけくらべ駅の火鉢の埋火に 河童三子 〇遠き日の火燵に並ぶトランプよ 々 〇懐かしき火燵の中の昭和かな 々

師走

〇術後の胸師走の風にカサつきぬ (じゅつごのむねしわすのかぜにカサつきぬ) 〇極月や鮪の切り身叩き売り 河童三子 〇アメ横を師走の風の通り抜け 々 〇上野山下りて師走の西郷さん 々

時雨

〇朝時雨羽ばたく真似を樹の枝に (あさしぐれはばたくまねをじゅのえだに) 〇時雨虹鞍馬の天狗跳びをるや 河童三子 〇時雨虹片端掛くる東山 々 〇朝からの柚子煮る厨沖しぐれ 々

冬の波

〇北窓を閉じず眺むる冬の波 (きたまどをとじずながむるふゆのなみ) 〇冬の波ただひたひたと曳く潮も 河童三子 〇北斎の手が伸びて来る冬の波 々 〇荒び逝く廃港搏つや冬の濤 々

氷上魚

〇馬喰一代男の気質氷上魚焼く (ばくろいちだいおとこのかたぎこまいやく) 〇こまい穴覗いて行きぬ氷上魚釣り 河童三子 〇差出しに氷上魚など干す蜑の家 々 〇氷上魚釣り氷一枚足場にして 々

冬苺

〇小さき人歩いて来たり冬苺 (ちさきひとあるいてきたりふゆいちご) 〇冬苺コロボックルは葉の陰に 河童三子 〇今年また離村の一家冬苺 々 〇冬苺峠の径の日当たりに 々

〇白熊の氷河の夢や檻の中 (しろくまのひょうがのゆめやおりのなか) 〇白熊のピース氷河を知らずをり 河童三子 〇ミルク吞む白熊のゐて海氷なし 々 〇背に鳴るは熊追う鈴や冬の山 々

隙間風

〇隙間風マンションに入る隙間なし (すきまかぜマンションにいるすきまなし) 〇笑っても歯の間より隙間風 河童三子 〇隙間風昭和レトロの町再現 々 〇ローマ字で書く日本語の隙間風 々

十二月

〇京に在れば加茂川の風十二月 (きょうにあればかもがわのかぜじゅうにがつ) 〇術後の創痺れ残れる十二月 河童三子 〇ひしひしと河童に辛き十二月 々 〇ジャム蕪酢に送り状書く十二月 々