2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

九月尽

〇九月尽キャンパスに聲戻り来し (くがつじんキャンパスにこえもどりきし) 〇九月尽またデカンショウ引っ提げて 河童三子 〇ひたすらにスマホ操る九月尽 々 〇消しゴムの小さくなって九月尽 々

案山子

〇住民票もつ案山子村席捲す (じゅうみんひょうもつかかしむらせっけんす) 〇尋ねても案山子ばかりで埒あかぬ 河童三子 〇雨降れば傘さしてやる案山子かな 々 〇奥祖谷に案山子訪ねて来る人の 々

出来秋

〇出来秋や実を山もりに道の駅 (できあきやみをやまもりにみちのえき) 〇でき秋に四方囲まるる吾家かな 河童三子 〇でき秋や鳥も歓喜の声あぐる 々 〇でき秋の田に百姓の大き声 々

月光

〇月光や石見神楽の龍討たるる (げっこうやいわみかぐらのりゅううたるる) 〇月光や跨ってみし竹箒 河童三子 〇月光に包まれて物忘れかな 々 〇竹取の月の光の狭庭かな 々

秋の蠅

〇三日ゐて少し親しき秋の蠅 (みっかいてすこししたしきあきのはえ) 〇秋の蠅窓へ来るのに出たがらず 河童三子 〇瑠璃色に少し妬けるや秋の蠅 々 〇秋の蠅ぼんやり一日(ひとひ)暮れにけり 々

秋なすび

〇秋茄子妊娠線のくっきりと (あきなすびにんしんせんのくっきりと) 〇未確認物体宿る秋なすび 河童三子 〇朝市の今を盛りに秋なすび 々 〇秋なすび物の名忘ること多し 々

曼殊沙華

曼殊沙華村道のレッドカーペット (まんじゅしゃげそんどうのレッドカーペット) 〇葉をつけて遣るなど無粋曼殊沙華 河童三子 〇花魁(おいらん)の道中まっ赤曼殊沙華 々 〇情念の理路整然と曼殊沙華 々

〇洗われて伊予美人ちょう里芋も (あらわれていよびじんちょうさといもも) 〇温泉の入り口に売る芋葉物 河童三子 〇芋の郷月の川原に鍋もって 々 〇子芋とて煮っころがしにされにけり 々

秋天

〇秋天の同じ高さに吾家かな (しゅうてんのおなじたかさにわがやかな) 〇秋天へ先生の笛ピリピッピー 河童三子 〇秋天へ集めて回る人の聲 々 〇秋天や集音機など鳥の声 々

秋彼岸

〇化野や後振り向けぬ秋彼岸 (あだしのやあとふりむけぬあきひがん) 〇秋彼岸無縁仏の石いろいろ 河童三子 〇水掛けてすぐ乾きけり秋彼岸 々 〇雲一つなき秋の彼岸となりにけり 々

稲雀

〇稲雀列車が分かつ北南 (いなすずめれっしゃがわかつきたみなみ) 〇稲雀さては南京玉すだれ 河童三子 〇伸縮も自由自在に稲雀 々 〇かろがろと稲穂の上や稲雀 々

子規忌

〇糸瓜忌の照って曲がりし糸瓜かな (へちまきのてってまがりしへちまかな) 〇獺祭忌ルンバ(掃除機)の回る所なし 河童三子 〇孫が挿す一輪の花糸瓜の忌 々 〇子規の忌やダイエット迫られてゐる 々

零余子

〇風一陣ハラと零るる零余子かな (かぜいちじんハラとこぼるるむかごかな) 〇壺尻に零余子の落ちる底のあり 河童三子 〇零余子飯一粒づつを箸に選る 々 〇百落とし五六個拾ふ零余子かな 々

虫時雨

〇どこまでも闇へ繋がる虫時雨 (どこまでもやみへつながるむししぐれ) 〇石垣の奥の隙間や虫時雨 河童三子 〇虫しぐれ心閉ざして鳴いてゐる 々 〇新聞の折ぐせ直す虫しぐれ 々

鳥兜

〇阿寒湖のアイヌの郷に鳥兜 (あかんこのアイヌのさとにとりかぶと) 〇鳥兜人を殺める記事のある 河童三子 〇情念のかたちと見たり鳥兜 々 〇静かなる毒を宿して鳥兜 々

秋の声

〇草々に木魂舞ひ降る秋の声 (くさぐさにこだままいふるあきのこえ) 〇玄関に高畑君と秋の声 河童三子 〇捨てられし栄螺の虚ろ秋の声 々 〇山々や獣のあわれ秋の声 々

秋簾

〇子どもらの缶蹴る音や秋簾 (こどもらのかんけるおとやあきすだれ) 〇魚焼く夕餉の匂ひ秋簾 河童三子 〇軒並みにまだ掛けられて秋簾 々 〇秋簾上げて肉じゃが届けらる 々

秋遍路

〇坊の灯へ遅れて着きぬ秋遍路 (ぼうのひへおくれてつきぬあきへんろ) 〇真っ白は疲れる色ぞ秋遍路 河童三子 〇夕暮れの鐘に急るる秋遍路 々 〇残りゐる二膳の夕餉秋遍路 々

青北風

〇犬の恋青北風の海およがせる (いぬのこいあおきたのうみおよがせる) 〇青北風の巻貝の殻鳴らしゆく 河童三子 〇青北風の群青にする海の色 々 〇青北風を漁師は指に予感する 々

宮相撲

〇宮相撲体あるごとく神と取る (みやずもうたいあるごとくかみととる) 〇尻ぼたの砂を恥じ入る宮相撲 河童三子 〇軍配は禰宜が振りけり宮相撲 々 〇宮相撲取る越智さんは市職員 々

葛の花

〇電線の鼠返しや葛の花 (でんせんのねずみがえしやくずのはな) 〇葛咲くや足引かれつつ海へ出る 河童三子 〇ふるさとの山河を隠し葛咲くや 々 〇摩崖仏虜(とりこ)にせむと葛の花 々

菊の酒

〇酒上戸三代の裔菊の宴 (さけじょうごさんだいのえいきくのえん) 〇菊挿して夕べは酌まむ菊の酒 河童三子 〇宴の声重陽の空澄みわたる 々 〇重陽の空ロケットも侵さざる 々

濁酒

〇呑み初めは祖父の秘密の濁り酒 (のみそめはそふのひみつのにごりざけ) 〇アリランの哀歌も出るやにごり酒 河童三子 〇濁酒や祖父の手作り内緒呑み 々 〇片口やとろりとろりと濁り酒 々

蓑虫

〇蓑虫の雨の日は雨の生き方 (みのむしのあめのひはあめのいきかた) 〇蓑虫の震度八にも驚かず 河童三子 〇蓑虫や蓑一枚の渡世かな 々 〇蓑虫に哲学の門たたくかな 々

秋の夜

〇秋の夜の陶人形の羊飼ひ (あきのよのとうにんぎょうのひつじかい) 〇ランプ持つ牧童の子の秋の夜 河童三子 〇牧童の眠れる草や秋の夜 々 〇追憶の旅にはじまる秋夜かな 々

天の川

〇エジプトの紙幣の皺や天の川 (えじぷとのしへいのしわやあまのがわ) 〇銀漢や森に獣の闇動く 河童三子 〇吾窓へ入らむばかりに天の川 々 〇銀漢の一つに吾の星ありぬ 々

葡萄

〇一房のぶどう教師に貰ふかな (ひとふさのぶどうきょうしにもらうかな) 〇種なしと謂う小さなぶどう懐かしや 河童三子 〇含みたし末期の水にぶどうの汁 々 〇良い枝に長寿のぶどうたわわかな 々

草雲雀(朝鈴)

〇朝鈴の粥炊く窓に来て鳴けり (あさすずのかゆたくまどにきてなけり) 〇吾庭を飛んで行かぬか草雲雀 河童三子 〇朝鈴に清し目覚めを貰ひけり 々 〇吾庭の虫篭のごと草雲雀 々

秋雨

〇おしなべて海の上にも秋の雨 (おしなべてうみのうえにもあきのあめ) 〇秋雨の山を隠して三日かな 河童三子 〇秋雨や訪へば友にも癌の予後 々 〇秋雨や烏一羽を濡らしをり 々

厄日(二百十日)

〇二百十日目は父島にあるらしき (にひゃくとおかめはちちじまにあるらしき) 〇二百十日クロスワードで日を潰す 河童三子 〇朝やけのうすむらさきに厄日かな 々 〇厄日とて三つも揃ふ野分の目 々