夏の雨

〇フィリピンに生れて日本へ夏の雨 (フィリピンにあれてにほんへなつのあめ) 〇台風一号伴って夏の雨 河童三子 〇今鳴いた烏が笑う夏の雨 々 〇山の裾雲走らせる夏の雨 々

青鷺

〇青鷺の肩をおとして歩むかな (あおさぎのかたをおとしてあゆむかな) 〇青鷺の気鬱の貌を水映す 河童三子 〇青鷺の蓑笠着るや雨もやう 々 〇今朝の鬱田んぼの中の青鷺と 々

桐の花

〇山里に娘子多く桐の花 (さとやまにむすめごおおくきりのはな) 〇飛び出して稜線抜ける桐の花 河童三子 〇桐の花嫁入りの荷を包む紋 々 〇挙手の子の答え凛々しき桐の花 々

袋掛

〇一つだけピンクの紐の袋掛け (ひとつだけピンクのひものふくろかけ) 〇袋掛秘密の地図をこっそりと 河童三子 〇目印にイニシャル書いて袋掛 々 〇色白や七難かくす袋掛 々

夏館

〇夏館Tessai展に待ち合わす (なつやかたてっさいてんにまちあわす) 〇瀬音聞く露台にあれば夏館 河童三子 〇夏館七賢者等の竹林(たけばやし) 々 〇幽谷に詩を吟ずるや涼み台 々

卯の花

〇卯の花や雨より風を待つ心 (うのはなのあめよりかぜをまつこころ) 〇散り際は誰にもありて花卯木 河童三子 〇卯の花や三日めの卯の花腐し 々 〇卯の花に四日と空けぬ雨風かな 々

夏の川

〇夏の川表裏みる町家かな (なつのかわおもてうらみるなつのかわ) 〇夏の川庭を廻って行く諸子 河童三子 〇夏の川植物園に水琴窟 々 〇毛氈(もうせん)の下を流るる夏の川 々

五月雨

〇五月雨の雫落としぬ大鳥居 (さみだれのしずくおとしぬおとりい) 〇五月雨や寿の荷に幌かけて 河童三子 〇五月雨を振り落としてや鉄斎展 々 〇五月雨や最上川にも賀茂川も 々

通し鴨

〇賀茂川を愛おしむかに通し鴨 (かもがわをいとおしむかにとおしかも) 〇通し鴨五条四条と遡る 河童三子 〇通し鴨双葉葵を啄めり 々 〇生涯を独りと決めし通し鴨 々

夏燕

〇石女やまた巣に籠る夏燕 (うまずめやまたすにこもるなつつばめ) 〇夏燕ひるねの猫の上の巣や 河童三子 〇子の部屋の窓開け放ち夏燕 々 〇夏燕街行く人に腹見せて 々

若葉冷

〇義経の緋糸の鎧若葉冷 (よしつねのひいとのよろいわかばびえ) 〇若葉冷八艘跳びの鎧かな 河童三子 〇楠々の空も小暗く若葉冷 々 〇若葉冷出て赤味噌の漁師汁 々

薄暑

〇枝剪りて蔭羨まし薄暑かな (えだきりてかげうらやましはくしょかな) 〇カーテンの模様の形薄暑光 河童三子 〇水浴びて雀立ち去る薄暑かな 々 〇階(きざはし)に阿吽の像の街薄暑 々

豆飯

〇筍飯つぎは豆飯来年は (たけのこめしつぎはまめめしらいねんは) 〇豆ごはんおにぎりにして縁に食ぶ 河童三子 〇ほっこりと雲浮き豆のご飯かな 々 〇豌豆の釜一面に豆の飯 々

草笛

〇君ひとり草笛を吹く朽ち椅子に (きみひとりくさぶえをふくくちいすに) 〇草笛の悲しき調べ目に追ひぬ 河童三子 〇草笛にわが唇の震へかな 々 〇草笛の草に座りし迷ひかな 々

時鳥

〇コココヨコヨ吾を招くか時鳥 (こここよこよわれをまねくかほととぎす) 〇不如帰(ほととぎす)淵見る巌の河童かな 河童三子 〇山郷に一日血を吐く杜鵑(ほととぎす) 々 〇奥山へ誘ひ込むかな子規(ほととぎす) 々

五月場所

〇のぼり旗四股名に替わり五月場所 (のぼりばたしこなにかわりごがつばしょ) 〇琴桜めでたき四股名五月場所 河童三子 〇両国の髷に風吹く五月場所 々 〇夏場所や波逆巻きぬ墨田川 々

母の日

〇母の日や祖母にもありし母の文字 (ははのひやそぼにもありしははのもじ) 〇母の日や雨の降りだす気配にも 河童三子 〇母の日やそろそろ体重減らさねば 々 〇吾母の母の日哀れ女の世 々

初夏

〇初夏や黄昏てゆく海の色 (はつなつやたそがれてゆくうみのいろ) 〇初夏の渚に立つや傘さして 河童三子 〇シーグラス初夏の彩集めをり 々 〇初夏や蝶の名まえも改まる 々

新樹

〇遠山の新樹眩しく窓に満つ (とおやまのしんじゅまぶしくまどにみつ) 〇新樹輝く中の我が余命かな 河童三子 ◯ぽこぽこと心湧き立つ新樹かな 々 〇もりもりと新樹の力山登る 々

聖五月

〇スワン舟母子乗せて行く聖五月 (スワンぶねぼしのせていくせいごがつ) 〇聖五月空舞い上がる鳥の声 河童三子 〇聖五月受胎告知の溢るるや 々 〇セザンヌの大水浴や聖五月 々

リラ

〇リラの花ロワール河岸の旗亭かな (リラのはなロワールかしのきていかな) 〇リラの雨傘上げて見るエッヘル塔 河童三子 〇オペラ座の裏の通りのリラ並木 々 〇パリのリラ口走りしはライラック 々

風薫

〇女車夫曳けば道後の風薫る (おんなしゃふひけばどうごのかぜかおる) 〇休日は遅いスタート風薫 河童三子 〇風薫マーガレットを窓開けて 々 〇トーストのバターゆたかに風薫 々

卯波

〇大島へ卯波の上を渡り来し (おおしまへうなみのうえをわたりこし) ◯ヒタヒタと卯波胸満つ夢の中 河童三子 ◯氣だるさの午後を卯波に呑まれそう 々 ◯卯波立つ帆を揚げていざ宝島 々

鯉のぼり

〇川のぼるかに百匹の鯉のぼり (かわのぼるかにひゃっぴきのこいのぼり) 〇休む日は立てる姿に鯉のぼり 河童三子 〇鯉のぼり初子儲けし峰の寺 々 〇鯉のぼり臓腑なき身に風を呑む 々

柿若葉

〇田んぼうの水にも映えて柿若葉 (たんぼうのみずにもはえてかきわかば) 〇五条より吉野へ上る柿若葉 河童三子 〇朝日照る山の若葉に手を振らる 々 〇目を病める吾を嗤ひし柿若葉 々

先帝祭

〇水底に蝶も舞うらん先帝祭 (みなそこにちょうもまうらんせんていさい) 〇先帝祭家紋の揚羽解き放つ 河童三子 〇先帝祭抱かれ眠る安徳陵 々 〇ものの哀れ語り継がれり先帝祭 々

〇遠き師に今年も燕宿れるや (とおきしにことしもつばめやどれるや) 〇百姓より早く田に出るつばくらめ 河童三子 〇高く飛ぶ燕よ今日は晴れるかな 々 〇簷(のき)の下三寸借りぬ燕の巣 々

春昼

〇春昼の過ぎゆく縁の端にをり (しゅんちゅうのすぎゆくえんのはしにおり) 〇春昼や今朝の薬を座に拾う 河童三子 〇春昼の珈琲にドーナツ添えて 々 〇春昼や夢幻(ゆめまぼろし)のマックスに 々

明易

〇明易に起こされし世の朧かな (あけやすにおこされしよのおぼろかな) 〇明易し軒の雫を見て目覚む 河童三子 〇空のない夢の中にて明易し 々 〇明易し出漁船の音もなく 々

葉桜

〇葉桜や万葉の世も令和にも (はざくらやまんようのよもれいわにも) 〇葉桜やその懐に実を抱き 河童三子 〇葉桜の下に老人ホームの椅子 々 〇葉桜や振り返る事ばかりかな 々