恋猫

〇恋猫の雨を窺ふ軒の下 (こいねこのあめをうかがうのきのした) 〇恋猫の濡れて窶れて戻りけり 河童三子 〇朝帰りして昼寝してうかれ猫 々 〇恋猫のチャームポイント貌の疵 々

早春

〇早春や君が蓬髪野に萌えよ (そうしゅんやきみがほうはつのにもえよ) 〇耀きは早春の芽の泪かな 河童三子 〇早春や水面を計る鯉の髭 々 〇早春や森羅万象潤ひて 々

多喜二の忌

〇露国にてまた甦る多喜二の忌 (ろこくにてまtよみがえるたきじのき) 〇雪解けりゃみな露わなる多喜二の忌 河童三子 〇多喜二忌や地の果てに死すナワリヌイ 々 〇大學は休学のまま多喜二の忌 々

雨水

〇裏山を雲に隠して今日雨水 (うらやまをくもにかくしてきょううすい) 〇暖かい風も吹き来て雨水かな 河童三子 〇雨水の日風も混じりて窓を搏つ 々 〇雨水の朝沖の小島が濡れてゐる 々

東風

〇林檎煮る窓振るわせる今朝の東風 (りんごにるまどふるわせるけさのこち) 〇夕東風が遊ぶ雀を帰らせる 河童三子 〇朝東風や西へ西へと野の煙 々 〇夕東風に砂州を舞ひ行く袋かな 々

飛梅

〇飛梅や博多京都は乗り換へぬ (とびうめやはかたきょうとはのりかえぬ) 〇咲けばまた都とならむ宰府の梅 河童三子 〇絵馬に描く飛梅の夢かなわずに 々 〇飛梅や石の上にも三年ゐたよ 々

草餅

〇草餅の棚にいきなり団子かな (くさもちのたなにいきなりだんごかな) 〇草餅の中の鶯すぐに飛ぶ 河童三子 〇故里は蓬芽を吹く蓬餅 々 〇はじめから焼いて売られる蓬餅 々

勿忘草

〇な忘れそ勿忘草にささやかる (なわすれそわすれなぐさにささやかる) 〇勿忘草遠い昔の映画かな 河童三子 〇ふり返り吾に教へむ勿忘草 々 〇勿忘草うす水色の寂しさよ 々

菠薐草

〇菠薐草寒さつのらす甘味かな (ほうれんそうさむさつのらすあまみかな) 〇恥じらひをほんのりあかく菠薐草 河童三子 〇灰汁のある菠薐草の滋養かな 々 〇菠薐草地を這うやうに育ちけり 々

寒潮

〇親潮ののどぐろ旨し寒の潮 (おやしおののどぐろうましかんのしお) 〇寒潮や隠岐みる母の病み給まふ 河童三子 〇寒潮や義母病み子病み吾が病む 々 〇寒潮の隠岐島分けて上りゆく 々

二修会

〇二修会の達陀松明飛び出でり (にしゅうえのだったんしょうみょうとびいでり) 〇二修会の火に二月堂耐えにけり 河童三子 〇二修会の火を見ずにをり二月堂 々 〇二修会や廻廊走る火の懺悔 々

紀元節

〇草も木も靡けば哀し建国日 (くさもきもなびけばかなしけんこくび) 〇紀元節二千六百八十二回目 河童三子 〇宮中の儀式の一つ紀元節 々 〇この国に生まれ育って建国日 々

落第

〇孫落第隔世遺伝かもしれぬ (まごらくだいかくせいいでんかもしれぬ) 〇落第や母を泣かせて子は戻る 河童三子 〇落第の夢に藻掻きし傘寿かな 々 〇落第や空はこんなに広いから 々

青木の実

〇青木の実林の径の薄明り (あおきのみはやしのみちのうすあかり) 〇幼児弾くピアノの音や青木の実 河童三子 〇大き実のもっと葉大き青木の実 々 〇もの言ひし後の淋しさ青木の実 々

針納め

〇一本のくけ針にすむ針をさめ (いっぽんのくけばりにすむはりおさめ) 〇美しいマチ針納めドレメの娘 河童三子 〇針納め大くけで綴ずるパンツの裾 々 〇針納めそう言へば針どうしたか 々

金縷梅

〇金縷梅の風櫛梳る朝かな (まんさくのかぜくしけずるあしたかな) 〇金縷梅韓国人の家ならむ 河童三子 〇満作や春魁(さきがけ)るチアガール 々 〇満作が咲いてがしゃがしゃ登校子 々

磯竈

〇磯かまど漁夫に人漁る話など (いそかまどぎょふにひととるはなしなど) 〇磯焚火白き蹠(あしうら)見せし海女 河童三子 〇浜焚火釣り人を待つ渡舟かな 々 〇海の魔を蜑ら語りし磯竈(いそかまど) 々

如月

〇如月の西行思ふ望月なを (きさらぎのさいぎょうおもうもちづきなを) 〇如月や旅の浪漫が萌へ出る 河童三子 〇如月に兼好の忌や吉田山 々 〇きさらぎの大甕へ投げる花なし 々

立春

〇佐保姫の御仕度待つや迎へ舟 (さほひめのおしたくまつやむかえふね) 〇立春の雨に滴る軒端かな 河童三子 〇春立つ日インタホーンに物売り来 々 〇春立つや帯や着物を買い取ると 々

鬼やらい

◯恵方へも鬼を逃がして鬼やらふ (えほうへもおにをにがしておにやらう) 〇濡れぬかと鬼気遣うや鬼やらい 河童三子 〇ひょうきんな鬼もててをり節分会 々 〇年豆の腹に余りぬ八十かな 々

雪割草

〇アルプスの空の色して雪割草 (アルプスのそらのいろしてゆきわりそう) 〇雪割草活断層の土割って 河童三子 〇能登の地震(なゐ)雪割草の慰めり 々 〇雪の下暖かそうに雪割草 々

〇柊を挿して人差し指の血や (ひいらぎをさしてひとさしゆびのちや) 〇柊に甘い香もある花時分 河童三子 〇戸に挿した柊が日を受けにけり 々 〇背戸に立ち柊邪鬼を払うかな 々

かまど猫

〇隣より貧に親しき竈猫 (となりよりひんにしたしきかまどねこ) 〇類は類呼び集まりて炬燵猫 河童三子 〇かまど猫裏と表を棲み分けて 々 〇忌々し電気釜なり竈猫 々

探梅

〇探梅や小山をめぐる七合目 (たんばいやおやまをめぐるななごうめ) 〇一月の蕾の堅し梅探す 河童三子 〇探梅の先へ先へと石叩 々 〇探梅の日当り探し歩くかな 々

竹馬

〇竹馬を作って軒に懐かしむ (たけうまをつくってのきになつかしむ) 〇竹馬の友を由々しく見上げた日 河童三子 〇垣越しに竹馬乗りの得意顔 々 〇竹馬に一番乗りの寡かな 々

〇新聞紙に血の滴りや鯨肉 (しんぶんしにちのしたたりやくじらにく) 〇錦市場朱鮮やかに鯨肉 河童三子 〇鯨肉の塊り買ひぬ過ぎし日々 々 〇鯨肉や海に撥ねたる尾を思ふ 々

冬の草

〇冬草の紫はしもやけの色 (ふゆくさのむらさきはしもやけのいろ) 〇踏まれやすき背丈に青し冬の草 河童三子 〇廃屋の裏庭へ出る冬の草 々 〇青年や冬青草の埋もれて 々

大試験

〇嚙み殺す咳響きけり大試験 (かみころすせきひびきけりおおしけん) 〇終鈴にペン転がるや大試験 河童三子 〇振り返ても胸の詰まりし大試験 々 〇子も子の子も忘れ難し大試験 々

冬麗

〇老の身を晒してゐるや冬麗 (おいのみをさらしているやふゆうらら) 〇冬麗やきのふの雪の輝きに 河童三子 〇健啖に老ひて健やか冬麗ら 々 〇遠山に日の射す窓や冬うらら 々

山ねむる

〇奥山の裾を隠して山ねむる (おくやまのすそをかくしてやまねむる) 〇山眠る平家の里は雲の中 河童三子 〇かずら橋祖谷の出湯に山眠る 々 〇山眠る祖谷の谷戸に粉挽き唄 々