昼寝

〇「一炊の夢」みて仕舞ふ昼寝かな (いっすいのゆめみてしまうひるねかな) 〇ラジオの人とコラボする昼寝の夢 河童三子 〇大雁塔昼寝の僧を見て帰る 々 〇昼寝して明日発つ旅の仕度かな 々

〇萍に花咲きながら流れ行く (うきくさにはなさきながらながれいく) 〇浮草の深泥池を出たがらず 河童三子 〇根なし草集まることを旨として 々 〇萍の字義の一字を縁(よすが)とす 々

子烏

〇拾ひ来し子烏赫い口開ける (ひろいこしこがらすあかいくちあける) 〇烏のどんびり子落ちても口開けし 河童三子 〇候補者のマイクみている烏の子 々 〇烏の子目より口の先に開き 々

ソーダ水

〇ソーダ水喉に弾ける花火かな (ソーダすいのどにはじけるはなびかな) 〇君の顔思い出せないソーダ水 河童三子 〇ソーダ水追憶は泡のごとくに 々 〇遥かなる青いグラスのソーダ水 々

〇団扇もて蛍狩ることかなわぬに (うちわもてほたるかることかなわぬに) 〇蚊帳に入れ蛍と寝たる幼き日 河童三子 〇道の駅蛍が里のかり寝かな 々 〇蛍火に謎の合図を送らるる 々

梅雨晴間

〇梅雨晴間山の崩れが傷ましき (つゆはれまやまのくずれがいたましき) 〇階下より麺麭やく匂ひ梅雨晴間 河童三子 〇遠雷の近づいて来る梅雨晴間 々 〇梅雨晴間お寝しょ蒲団も干されけり 々

青田

〇二駅を繋いで走る青田風 (ふたえきをつないではしるあおたかぜ) 〇こんなにも伸び伸びと吹く青田風 河童三子 〇百姓の眼鏡に映る青田かな 々 〇降り立ってすぐ包まれる青田風 々

白玉

〇哲学の道白玉に誘わるる (てつがくのみちしらたまにさそわるる) 〇白玉や月ヶ瀬といふ甘味店 河童三子 〇白玉やたった一人の弟よ 々 〇白玉を瑠璃の器に漂わす 々

苔の花

〇苔の花カニバリズムにひかる首 (こけのはなカニバリズムにひかるくび) 〇苔の花首狩り族のひかる首 河童三子 〇こんなにも雨を慕いて苔の花 々 〇苔咲くや父母(ちちはは)のゐる寂光土 々

十薬

〇シスターの胸のロザリオ十薬咲く (シスターのむねのロザリオじゅうやくさく) 〇どくだみに取り囲まれし庵主の庭 河童三子 〇庵主さん呼びに来て十薬の庭 々 〇麦枯れし野に十薬の咲いてゐる 々

夏暖簾

〇外よりは内に風ある夏暖簾 (そとよりはなかにかぜあるなつのれん) 〇麻暖簾押せば路地ある甘味処 河童三子 〇藍染に梲(うだつ)の町の夏暖簾 々 〇酢の匂ひ少し甘きか夏暖簾 々

桜桃忌

〇桜桃忌疵つくことの若さゆえ (おうとうききずつくことのわかさゆえ) 〇酒呑めず一人籠りし太宰の忌 河童三子 〇桜桃忌人間を守り恙なしも 々 〇小説の人に涙す太宰の忌 々

父の日

〇父の日の髭剃る男二人ゐて (ちちのひのひげそるおとこふたりいて) 〇父の日や酔えばラバウル戦かたる 河童三子 〇父の日や素焼き蒲焼きうなぎ来る 々 〇父の日や父の遺品のハーモニカ 々

短夜

〇短夜や褪せし表紙の「デカメロン」 (みじかよやあせしひょうしの「デカメロン」) 〇短夜や深夜ラジオのつづくかな 河童三子 〇短夜を目覚めてゐよと神の刻 々 〇短夜や策を弄せず新世へ 々

麦酒

〇直行のエレベーターやビアガーデン (ちょっこうのエレベーターやビアガーデン) 〇ナポリにて飲みしビールの生ぬるき 河童三子 〇大声でビールの泡に乾杯す 々 〇泡たてぬクラフトビール独り酌む 々

六月

〇六月や鰓の呼吸が甦る (ろくがつやえらのこきゅうがよみがえる) 〇六月の口中に雨薄荷飴 河童三子 〇六月や太古の海に浮遊する 々 〇六月の全身CTわれ透けて 々

蛇苺

〇蛇苺失楽園の野の小径 (へびいちごしつらくえんのののこみち) 〇蛇苺神の忌む名をもらひしや 河童三子 〇蛇苺エデンの園にありし日も 々 〇少年を蠱惑(こわく)の色や蛇苺 々

守宮

〇出会いがしら守宮にキユッと鳴かれけり (であいがしらやもりにキュッとなかれけり) 〇母恋ふる瞼がなくて守宮かな 河童三子 〇裏見せて守宮の腹の白さかな 々 〇シェルターを置いて守宮と暮らしをり 々

翡翠

〇翡翠や水面射したる池の雨 ( かわせみやみなもさしたるあいけのあめ) 〇この池に柳のなくて翡翠鳴く 河童三子 〇翡翠の嘴禅智内供の鼻 々 〇翡翠や石楠花咥えタンゴかな 々

蝸牛

〇授業おわるベルで角出す蝸牛 (じゅぎょうおわるベルでつのだすかたつむり) 〇よく見れば口髭も出る蝸牛 河童三子 〇愛しあうに憂きこともなき蝸牛 々 〇生き方は殻の模様に蝸牛 々

山法師

〇山法師庵主の門を叩くかな (やまぼうしあんじゅのもんをたたくかな) 〇僧兵となるや比叡の山法師 河童三子 〇山法師都へ降りる比叡径 々 〇山法師僧を証しの白き布 々

時の日

〇時の日やタイマー掛けてゆで卵 (ときのひやタイマーかけてゆでたまご) 〇時の日の臨終を待つ二分かな 河童三子 〇時の日や分娩の日を決めにけり 々 〇時の日や無音に落る砂時計 々

蚊帳吊り草

〇賑やかにどこか寂しい蚊帳吊り草 (にぎやかにどこかさびしいかやあつりそう) 〇弟の一人遊びに蚊帳吊り草 河童三子 〇蚊帳吊りや草の庵に育ちけり 々 〇蚊帳吊り草鉤掛け違う柱かな 々

まくなぎ

〇まくなぎの藪走り出て落暉の田 (まくなぎのやぶはしりでてらっきのた) 〇目まとひを払うふりして首を横に 河童三子 〇二人ともまくなぎ連れて帰りけり 々 〇まくなぎや目に飛び込んできたりけり 々

青蛙

〇今年また同じところで枝蛙 (ことしまたおなじところでえだがえる) 〇青蛙吾もおまへも仮寓かな 河童三子 〇青蛙おまえの目玉と指が好き 々 〇三つ指を付いて迎える青蛙 々

衣替

〇鹿の子にかのこ取れけり衣替 (しかのこにかのことれけりころもがえ) 〇衣替へ雨の日つづき萎えにけり 河童三子 〇雀らも首ののびけり衣替 々 〇暑ければ脱ぐと決めをり衣替 々

目高

〇故郷の川だあれも知らぬ目高かな (こきょうのかわだあれもしらぬめだかかな) 〇長老めく口髭伸びし目高かな 河童三子 〇めだかの目天気予報を見てをりぬ 々 〇目高飼う年月の殺生想ふ 々

形代

〇形代の頭をなでて流しけり (かたしろのあたまをなでてながしけり) 〇氏神の形代一枚配り来る 河童三子 〇田の畔に田の形代が靡きけり 々 〇形代の負う罪重く沈みけり 々

ギヤマン

〇ギヤマンに蕃茄を盛って異国めく (ギヤマンにとまとをもっていこくめく) 〇薩摩切子無骨に盛るや茄子胡瓜 河童三子 〇ぐい吞みを切子に替えて冷し酒 々 〇ビードロの浮き玉並べ漁師めし 々

蠅虎

〇未だ見ず蠅虎の手柄かな (いまだみずはえとりぐものてがらかな) 〇よく見れば蠅虎のあっぱれ貌 河童三子 〇カーソルに蠅虎の跳びつける 々 〇蠅狙ふ蠅虎の座敷鷹 々