2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

巣立ち

○返信は来ぬもの巣立ち完了す (へんしんはこぬものすだちかんりょうす) ○巣立つ鷹己の風を待ってをり 秋甫 ○風来れば後ふり向かず巣立つ鷹 々 ○樹上くる風を掴みて鷹巣立つ 々

豆の花

○俤の姉さん被り豆の花 (おもかげのあねさんかぶりまめのはな) ○母の後追えば垣なす豆の花 秋甫 ○目薬差して蚕豆の花鮮やか 々 ○蚕豆の花は目のある如く咲く 々

青麦

○青麦の雨喜びて病癒え (あおむぎのあめよろこびてやまいいえ) ○青麦の穂に突き刺さる雨細き 秋甫 ○青麦の広々と空蒼蒼と 々 ○青麦や我が前を翔つ揚げ雲雀 々

○蝶追って飛行機雲へ見失う (ちょうおってひこうきぎもへみうしなう) ○一蝶の心乱れて舞い狂う 秋甫 ○指させば指に親しむ山の蝶 々 ○ジャガイモの花に群がる昼の蝶 々

水口祭

○田の神を招き水口祭とよ (たのかみをまねきみなくちまつりとよ) ○田の神も酒を好むや水口祭 秋甫 ○水口祭蛙もお神酒いただきぬ 々 ○ゆらゆるらと螺路水口祭かな 々

余花

○癌の身を座椅子に沈め余花眺む (がんのみをざいすにしずめよかながむ) ○障子あけて山頂の余花数えけり 秋甫 ○山寺の石階数え登る余花 々 ○登り来て山寺の余花慈しむ 々

春昼

○春昼や抗がん剤の副作用 (しゅんちゅうやこうがんざいのふくさよう) ○春昼やまたうらうらと夢の中 秋甫 ○ふっと出て草に掴まる春の昼 々 ○春昼や干物焼く香に籠りけり 々

日永

○亀の目線吾を放さず日永かな (かめのめせんわれをはなさずひながかな) ○亀と目を合わせて永き日となりぬ 秋甫 ○病えて眼力(めぢから)のなき日永かな 々 ○亀とゐて亀の波長や日永なる 々

春潮

○春潮や餌に来る魚のディスタンス (しゅんちょうやえにくるうおのディスタンス) ○春潮や愛生園の蔦の家 秋甫 ○春潮の隔てし島を橋つなぐ 々 ○春潮や静かにボトル引き寄せる 々

葱坊主

○葱坊主世に抵抗ひてすくと立つ (ねぎぼうずよにあがらいてすくとたつ) ○葱坊主先生を引いて家庭訪問 秋甫 ○吾心象の肥溜めと葱坊主 々 ○葱坊主餓鬼大将と対峙する 々

穀雨

○今日穀雨雨乞うように蛙の声 (きょうこくうあめこうようにかえるのこえ) ○聖火走るモネの庭なる穀雨の日 秋甫 ○山の樹の不揃いに伸ぶ穀雨かな 々 ○じくじくと額のニキビ穀雨の日 々

春憂

○癌の身の黒ずんでいく春憂 (がんのみのくろずんでいくはるうれい) ○春愁や増殖止めぬ癌細胞 秋甫 ○抗がん剤効いて熱出る春憂う 々 ○水槽の亀首出して春憂う 々

スイトピー

○病室に誰か置き行くスイトピー (びょうしつにだれかおきいくスイトピー) ○柔らかく絡まってゐるスイトピー 秋甫 ○スイトピー枕頭の闇絡まりぬ 々 ○スイトピー少女の髪の香りかな 々

春深し

○春深し一合釜も使い慣れ (はるふかしいちごうがまもつかいなれ) ○春深し切らねばならぬ深情け 秋甫 ○春深む痘痕の山となりゆきぬ 々 ○断捨離に物も心も春深む 々

養花天

○養花天術後の身体養いぬ (ようかてんじゅつごのからだやしないぬ) ○養花天養殖鯛の飛び跳ねる 秋甫 ○水槽の亀の泪や花曇り 々 ○葉の彩に山もこもこと養花天 々

犬ふぐり

○朝露に顔を洗いし犬ふぐり (あさつゆにかおをあらいしいぬふぐり) ○踏み込めば水溜なり犬ふぐり 秋甫 ○犬ふぐり踏めば飛び散る水しぶき 々 ○憧るる空の色して犬ふぐり 々

山査子の花

○山査子の花酒を好みし香りとか (さんざしのはなさけをこのみしかおりとか) ○山査子の花耳に挿し羅磨の寺 秋甫 ○さんざしの蕊のあばたも可愛けり 々 ○山査子の咲いて天国開きをり 々

春風

○春風がアパレルを着て翻る (はるかぜがアパレルをきてひるがえる) ○春風や引っぱり蛸という弁当 秋甫 ○春風や瀬戸大橋の下の波 々 ○春風や海を渡ればうどん県 々

○街路樹に抱かれ菫の花ひらく (がいろじゅにだかれすみれのはなひらく) ○菫咲く広原抜けてキャンパスへ 秋甫 ○街路樹をいつも見上げる菫かな 々 ○夕暮れは白い菫がはしゃぎ出す 々

春眠

○春眠に問われて答ふ言ならず (しゅんみんにとわれてこたふげんならず) ○点滴の間も春眠の瞼かな 秋甫 ○春眠す新入の子の大鼾 々 ○春眠の右手枕に涅槃相 々

さくら鯛

○さくら鯛鳴戸の渦も櫻色 (さくらだいなるとのうずもさくらいろ) ○さくら鯛捌く振り子も口あけて 秋甫 ○ぴちぴちは掌ほどの櫻鯛 々 ○さくら鯛目だま抜かれてヨブならん 々

花杏

○山の上に杏一本咲くところ (やまのえにあんずいっぽんさくところ) ○花杏父情は時に濃くもあり 秋甫 ○杏咲く君へ捧げる薄紅に 々 ○甘酸っぱき女の流転花杏 々

○一華もて春を推せよと掲示板 (いっかもてはるをおせよとけいじばん) ○紫蘭咲いて一気に春の押し進む 秋甫 ○啓蟄を経て爛漫の春謳歌 々 ○気になるは春二番手のまだ吹かず 々

入学式

○入学す近衛通りをスーツ着て (にゅうがくすこのえどおりをスーツきて) ○新入の自転車置かる吉田寮 秋甫 ○京大の通り晴れ晴れ入学す 々 ○広原を突っ切って行く入学式 々

逃げ水

○逃げ水に去年と同じ景を見し (にげみずにきょねんとおなじけいをみし) ○逃げ水に昔日の幻影追いぬ 秋甫 ○逃げ水にタイヤ洗って行く車 々 ○逃げ水の中に幼き吾のゐて 々

巣立ち

○ひとり子の心許なき巣立ちかな (ひとりごのこころもとなきすだちかな) ○季(とき)くれば自ずと発ちぬ巣立ちかな 秋甫 ○戻りくればからの巣となり巣立ちすむ 々 ○労りて番いとなりぬ残る鳥 々

花冷え

○ワンルームに残して帰る花の冷 (ワンルームにのこしてかえるはなのひえ) ○斬って喪き乳房の痛む花の冷 秋甫 ○花冷に行き交う人のよそよそし 々 ○花冷や地下鉄を出て雨を知る 々

山葵

○蕎麦好きの孫と擂る生山葵かな (そばずきのまごとするなまわさびかな) ○山葵目に染むと言いつつ泣いてしまう 秋甫 ○山葵田の吊り橋渡る猿ながら 々 ○信濃路の蕎麦食べ歩きマイ山葵 々

柳絮

○華清池に柳絮浮かべむ柳絮の才 (かせいちにりゅうじょうかべむりゅうじょのさい) ○大雁塔昼寝の僧に柳絮降る 秋甫 ○私と柳絮石階(いしばし)転げ落つ 々 ○寂しさや柳絮流れて留まらず 々

四月馬鹿

○万愚節乳房喪くして女知る (ばんぐせつちぶさなくしておんなしる) ○ドタキャンの切符握りし四月馬鹿 秋甫 ○万愚節ジェンダーの枠などとおに 々 ○古希越えてカミングアウト四月馬鹿 々