2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

四月尽

〇身を削る別れも在りて四月尽く (みをけずるわかれもありてしがつつく) 〇庭掃いて今朝の輪廻や四月尽 河童三子 〇新しい私に出会ふ四月尽 々 〇四月尽また来年の四月まで 々

ねぎ坊主

〇太陽に愛されてゐる葱坊主 (たいようにあいされているねぎぼうず) 〇葱坊主ネッカチーフに洒落こんで 河童三子 〇朝練に走る野球部葱坊主 々 〇葱坊主九条葱てふ出自かな 々

春深し

〇押して出る回転扉春惜しむ (おしてでるかいてんとびらはるおしむ) 〇芋植える退職教師春深し 河童三子 〇ライオンの大欠伸して春闌ける 々 〇春闌けて疲れの見えし物の彩 々

〇学舎や田中の蛙「が」行の欄 (まなびややかなかのかえるがぎょうのらん) 〇甲賀越へ伊賀に至るや蝦蟇(がま)の道 河童三子 〇夜ごとに加勢増し来る蛙の声 々 〇昼蛙戸籍調査に巡査来る 々

〇電線に燕尾服着た燕かな (でんせんにえんびふくきたつばめかな) 〇味噌蔵や堀の柳に乙鳥(つばくらめ) 河童三子 〇天田屋は味噌屋の屋号燕来る 々 〇燕の声リピユーリピユーと聞きしかな 々

仔猫

〇貰われていく順番を待つ子猫 (もらわれていくじゅんばんをまつこねこ) 〇七匹の仔猫並ぶや母子家族 河童三子 〇仔猫らに嫁ぐ娘に言ふやうに言ふ 々 〇爪立てて仔猫この世にしがみつく 々

春昼

〇春昼やティンティンティンとクラブサン (しゅんちゅうやティンティンティンとクラブサン) 〇春昼の珈琲冷やしチェンバロ聞く 河童三子 〇春の昼日々軽くなる身に目重し 々 〇春昼やレンガ崩れし登り窯 々

山繭

〇山繭は薄黄緑のテント張る (やままゆはうすきみどりのテントはる) 〇山繭の揺籃の中変態す 河童三子 〇山繭や崖に寝袋吊るすかな 々 〇緑なす山繭の糸輝けり 々

〇御堂筋朧の街を行く二人 (みどうすじおぼろのまちをいくふたり) 〇屋根の上のヴィオロン弾きに朧かな 河童三子 〇燃え上がるノートルダムやパリ朧 々 〇ネッシーを隠すネス湖の朧かな 々

寄居虫

〇寄居虫の螺を選りをる干潟かな (やどかりのつぶをよりをるひがたかな) 〇西貝の笊に足だす寄居虫(がうな)かな 河童三子 〇寄居虫や新居を足に測りをり 々 〇ものぐさの寄居虫足の見えしまま 々

穀雨

〇いそいそと花苗提げて穀雨の庭 (いそいそとはななえさげてこくうのにわ) 〇降りそうな雲引っ張って穀雨の田 河童三子 〇字を書いて墨の滲みし穀雨かな 々 〇裏山を隠してくるや穀雨雲 々

半仙戯

〇半仙戯雲辺寺より雲の上 (はんせんぎうんぺんじよりくものうえ) 〇老ひうれば乗るに能わず半仙戯 河童三子 〇半仙戯瀬戸の海なら一漕ぎに 々 〇半仙戯そろそろ諸手離さんや 々

石鹸玉

〇塀の上一つ迷子の石鹸玉 (へいのうえひとつまいごのしゃぼんだま) 〇この地球(ほし)の色は虹色シャボン玉 河童三子 〇石鹸玉ビッグバーンのごと膨れ 々 〇石鹸玉泡かもしれぬこの銀河 々

春潮

〇弛やかに桟橋乗せる春の潮 (ゆるやかにさんばしのせるはるのしお) 〇春の潮のたりと孫の無口かな 河童三子 〇春潮を出て巻貝は口閉ざす 々 〇春潮のざわめき立つや渡船来る 々

花筵

〇花筵デーサービスの大広間 (はなむしろデーサービスのおおひろま) 〇キャンパスの学部名ある花筵 河童三子 〇男ゐて無口に飲める花筵 々 〇花筵ひとりが寝るるばかりかな 々

遠足

〇遠足のおやつに弁当卵晴れ (えんそくのべんとにおやつたまごばれ) 〇遠足に魔法瓶割りし思い出 河童三子 〇遠足の列に先生おまわりさん 々 〇目鼻なきてるてる坊主遠足の雨 々

春の闇

〇乾坤に妖気漂うふ春の闇 (けんこんにようきただようはるのやみ) 〇うかうかと来て今春の闇の中 河童三子 〇次の間は寝に行くところ春の闇 々 〇狂い出す磁石の針や春の闇 々

啄木忌

〇啄木忌吾にて了ふ家名かな 〈たくぼくきわれにてしまうかめいかな) 〇その街の不確かな壁啄木忌 河童三子 〇啄木忌四月に多き文学忌 々 〇詩情なく悲恋もなくて啄木忌 々

空穂忌

〇空穂忌やまだ青き麦の笛吹く (うつぼきやまだあおきむぎのふえふく) 〇空穂忌や麦の穂に降る雨眺がむ 河童三子 〇空穂忌や残照の日本アルプス 々 〇空穂忌の螢を求む子らのゐて 々

遍路

〇門に誦す遍路へ喜捨の心かな (かどにじゅすへんろへきしゃのこころかな) 〇遍路に聞く数奇な身の上話かな 河童三子 〇うかうかと発心忘れ花遍路 々 〇先に出て後になりけり遍路道 々

青饅

〇青饅を白磁にとって人を待つ (あおぬたをはくじにとってひとをまつ) 〇青饅を高野の坊の膳に食す 河童三子 〇青ぬたや子へ引き継げる物もなし 々 〇青饅に半世紀過ぐ吾の味 々

安良居祭

〇今宮の小鬼大鬼安良居祭 (いまみやのこおにおおおにやすらいさい) 〇夜須礼(やすらい)や都の鬼は稲穂にも 河童三子 〇安良居や子鬼も出でて華の傘 々 〇安良居や厄鬼を誘ふ風流傘 々

いぬふぐり

〇此れよりは奥の細道いぬふぐり (これよりはおくのほそみちいぬふぐり) 〇犬ふぐりアメリカを横断の夢 河童三子 〇胴乱の横に弁当いぬふぐり 々 〇帰化によき空の色なり犬ふぐり 々

花の雨

〇ヴィーナスは林檎をもつや花の雨 (ヴィーナスはりんごをもつやはなのあめ) 〇着信を開くスマホへ花の雨 河童三子 〇花の雨あの日の駅の伝言板 々 〇花の雨あの日が決めた今日がある 々

清明

〇清明や三千年の祖を拝む (せいめいやさんぜんねんのそをおがむ) 〇清明のつぎの日雨雲走りけり 河童三子 〇清明の空ロケットの軌跡かな 々 〇頭さげて鴉もゐのる清明節 々

目借時

〇うかうかと過ぎていくなり目借時 (うかうかとすぎていくなりめかりどき) 〇世をあげて子をつくれとや目借時 河童三子 〇目借時イヤホン耳に挿したまま 々 〇夜は夜で白川夜船目借時 々

花冷え

〇花冷えや味噌屋天田屋文ヱ門 (はなひえみそやあまたやぶんえもん) 〇味噌蔵の七代当主花の冷え 河童三子 〇味噌麹咲かせ吉野の花の冷え 々 〇花冷えや麹の花と共に生き 々

朝寝

〇用もなき目覚まし鳴るも朝寝かな (ようもなきめざましなるもあさねかな) 〇過ぎたればおおひに虚し朝寝かな 河童三子 〇朝寝して楽しき季を喪ひし 々 〇喧(かまびす)し鳥に教えむ朝寝かな 々

風光る

〇湘南に加山雄三風光る (しょうなんにかやまゆうぞうかぜひかる) 〇校内のオリエンテーション風光る 河童三子 〇風光るころころ笑ふ老婆ゐて 々 〇一番の佳き季にゐて風光る 々

四月馬鹿

〇四月馬鹿宙返りする教祖かな (しがつばかちゅうがえりするきょうそかな) 〇値上がりの品目数え四月馬鹿 河童三子 〇開けられないスマホのメモや万愚節 々 〇四月馬鹿ノンフィクションと言う綴り 々