2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧
〇台風の目ができてゐる八月尽 (たいふうのめができているはちがつじん) 〇閉園の回転木馬八月尽 秋甫 〇八月尽金床雲に大夕焼け 々 〇砂浜に足跡つけし八月尽 々
〇この風に縁を思う秋の草 (このかぜにえにしをおもうあきのくさ) 〇丘に来て天鼓を聞かん秋の草 秋甫 〇追悼の文書き終へし秋の草 々 〇わが庭も虫鳴かせをる秋の草 々
〇ひとり居の朝飯炊けば白木槿 (ひとりいのあさめしたけばしろむくげ) 〇卓覗く木槿と風と朝餉かな 秋甫 〇朝見ればそっと紅さす槿かな 々 〇初めての婚家の朝の白木槿 々
〇撫子を咲かせトルコの空思う (なでしこをさかせトルコのそらおもう) 〇撫子や水あるところ手を洗い 秋甫 〇号外は総理の辞任撫子揺るる 々 〇撫子や拉致されし子の帰らざる 々
〇新涼の門に来て喜寿となりけり (しんりょうのかどにきてきじゅとなりけり) 〇新涼やゆっくり沖をゆくタンカー 秋甫 〇落ち蝉を荼毘する今朝の涼新た 々 〇新涼や沖の夕焼け残しつつ 々
〇禊萩の咲き集まりてなを寂し (みそはぎのさきあつまりてなをさびし) 〇みそ萩の禊一途に曲がりなし 秋甫 〇干屈菜(みそはぎ)を咲かせて老いの背を伸ばす 〇禊萩のみな起立して気をぬかず 々
〇ようように秋の風鈴目覚めるや (ようようにあきのふうりんめざめるや) 〇秋の風鈴大根の畝つくれとよ 秋甫 〇余生てふ秋の風鈴かまびすし 々 〇秋風に風鈴の生き返りけり 々
〇ふるさとに叔母の抜け殻つくつくし (ふるさとにおばのぬけがらつくつくし) 〇つくづくと二人で一人法師蝉 秋甫 〇つくつくや何か忘るる午後ならむ 々 〇つくつくの法師法師と寺の松 々
〇三角の貌が無機質枯蟷螂 (さんかくのかおがむきしつかれとうろう) 〇枯蟷螂鎧兜の古にけり 秋甫 〇リア王の哀しみ抱く枯蟷螂 々 〇枯蟷螂鎌がつくづく重かりき 々
〇瓜胡瓜どちらもあらぬ青瓢 (うりきゅうりどちらもあらぬあおふくべ) 〇千成りと謂えど三つ四つ青瓢 秋甫 〇青瓢尻の容は親ゆづり 々 〇青瓢腰の括れに垂らす紐 々
〇はらはらと雀零れる稲穂かな (はらはらとすずめこぼれるいなほかな) 〇稲穂波神の祠を担ぎけり 秋甫 〇稲の穂に今朝の挨拶一両車 々 〇しゃりしゃりと風が稲穂の中通る 々
〇とんぼうの空つっつっと截って行く (とんぼうのそらつっつっときっていく) 〇盆とんぼ石の枕を咥えけり 秋甫 〇山の田の蜻蛉が重し稲穂かな 々 〇赤とんぼ吾ひとり居る無人駅 々
〇熱ものを扱うごとく桃を剥く (あつものをあつかうごとくももをむく) 〇桃に産毛目瞑る汝に点耳薬 秋甫 〇仙人に愛されし桃麗しき 々 〇桃愛す仙人のごと君愛す 々
〇秋の蝉あっちに鳴けばこっち止む (あきのせみとあっちになけばこっちくやむ) 〇秋の蝉病院裏の松林 秋甫 〇猫の手に弄ばれし秋の蝉 々 〇秋の蝉G線上のアリアかな 々
〇秋薊一輪挿して置手紙 (あきあざみいちりんさしておきてがみ) 〇盆過ぎて優しくなりぬ鬼薊 秋甫 〇海山の憂い吾にも秋薊 々 〇秋薊ハーモニカ吹く土手に緩れ 々
〇送り火の一つ火灯す妙と法 (おくりびのひとつひともすみょうとほう) 〇魂送り亡夫そわそわ発ちにけり 秋甫 〇十年後約して発たす魂送り 々 〇疫病はこの世で断つや魂送り 々 2020年の京都の送り火は新型コロナウイルスの感染拡大を避けて、五山の文…
〇田迎南瓜の馬車も良かりけり (たまむかえかぼちゃのばしゃもよかりけり) 〇死者もまた吾を案じる盆の暮れ 秋甫 〇終戦の日の十二時の黙祷に 々 〇海の底見せて八月十五日 々
〇戦争に負けて孤児にはならぬ吾 (せんそうにまけてこじにはならぬわれ) 〇八月のラジオ叩いて尋ね人 秋甫 〇敗戦は吾にミルクを与えけり 々 〇終戦を七十五年の私かな 々
〇復員の父の生涯螽斯 (ふくいんのちちのしょうがいきりぎりす) 〇啼きながら幕引くもよし螽斯 秋甫 〇螽斯復員の父の言い分 々 〇螽斯蚊帳一枚を結界に 々
〇牧神の午後の幻惑未草 (ぼくしんのごごのげんわくひつじぐさ) 〇老境や早ねむりたる未草 秋甫 〇睡蓮の他に遅れ咲き愛されし 々 〇見納めし朝の睡蓮夜の流星 々
〇ペルセウス流星群の天馬帰途 (ペルセウスりゅうせいぐんのてんまきと) 〇一瞬の隙突いて墜つ流れ星 秋甫 〇流れ星天馬の羽根の崩れ堕つ 々 〇流れ星つぎつぎ生れて願い忘るる 々
〇ものの音きれいに聞こゆ今朝の秋 (もののおときれいにきこゆけさのあき) 〇子らの休み残り少なし今朝の秋 秋甫 〇今朝の秋香りたつパン焼きあがる 々 〇今朝の秋稲穂をわたる風の音 々
○島国の島にピカドン長崎忌 (しまぐにのしまにピカドンながさきき) ○長崎の鐘壁に刻める原爆忌 秋甫 ○無言館に裸婦画朽ちゆく原爆忌 々 ○十一時二分黙とう長崎忌 々
○旱星浜にどっきり大花火 (ひでりぼしはまにどっきりおおはなび) ○旱星眠られぬ夜つづきをり 秋甫 ○旱星エチュードは原爆の歌 々 ○寝べき頃瓦灼きたる旱星 々 今年の花火大会は大概が中止されてる。そんななか会場に集まらないで家から見る小規模な花火大…
○レッテルの三ツ矢のマークソーダー水 (レッテルのみつやのマークソーダーすい) ○栓抜けば思い出ぬけるソーダー水 秋甫 ○思い出のソーダー水に胸つまる 々 ○漱石も飲みし三ツ矢の平野水 々 三ツ矢サイダーの沿革を辿ってみると、明治に遡る。兵庫県平野の…
○朝顔の無風にゆれて開きゆく (あさがおのむふうにゆれてひらきゆく) ○あさがおの観察日記子の朝寝 秋甫 ○朝顔や戦後七十五年かな 々 ○朝顔の咲く家もあり広島忌 々 新型コロナウイルスは至る所に様式の変化をもたらしている。自粛が始まって半年が経って…
○ガジュマルの根を啄んでいる羽抜鶏 (ガジュマルのねをついばんでいるはぬけどり) ○羽抜鶏夏太りする女(ひと)もいて 秋甫 ○訪のへば人も裸で羽抜鶏 々 ○羽抜鶏雀の羽も抜けてをり 々 ああ~熱い!熱い! 毛や羽を付けている生き物にはもっと大変だろう。…
○鉄敲く音に水母の胸おどる (てつたたくおとにくらげのむねおどる) ○工場の排水に水母身投げす 秋甫 ○海月なるロマンティックな夜に浮く 々 ○只管浮居未来磊落水母哉 々
○八月や鉄砲百合の向く三方 (はちがつやてっぽうゆりのむくさんぽう) ○鉄砲百合のわが部屋に向いて咲く 秋甫 ○八月やなげ釣りにキスの上がりぬ 々 ○八月やキス虹色に釣りあがる 々
○見栄張りて坊ちゃん南瓜小さくなる (みえはりてぼっちゃんかぼちゃちさくなる) ○南瓜の掌(てのひら)サイズ仕立てなり 秋甫 ○赤黄縞装飾品の南瓜(かぼちゃ)かな 々 ○南瓜食べ黄色人種だった戦後 々