2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大年

〇大年やみな韋駄天のごと過ぎぬ (おおとしやみないだてんのごとすぎぬ) 〇大年の十六ビート歌合戦 河童三子 〇大年や欲の煩悩消えしかも 々 〇健やかに食欲満たし大晦日 々

日記果つ

〇隠れ家に恋の芽生えも日記果つ (かくれやにこいのめばええもにっきはつ) 〇三頁埋(うず)め草して日記果つ 河童三子 〇傾ぐ文字踊る文字あり日記果つ 々 〇日記果つ埋めることのみ貫きし 々

日記買う

〇今年こそ最後と思ふ日記買う (ことしこそさいごとおもうにっきかう) 〇六十四冊目の日記買ふことに 河童三子 〇青春と老後残しぬ日記買ふ 々 〇これよりは命をつなぐ日記買ふ 々

数え日

〇数え日のビーフシチューに子の帰省 (かぞえびのビーフシチューにこのきせい) 〇数え日の空白残す日記帳 河童三子 〇忙しく扮ふことも数え日と 々 〇数え日やまた生き延びし明日かな 々

闇汁

〇闇汁の鍋の蓋とる役目かな (やみじるのなべのふたとるやくめかな) 〇闇鍋やお伽噺のたぬき汁 河童三子 〇寄せ鍋に停電となり真暗闇 々 〇闇汁を囲みし貌を吟味する 々

鎌鼬

〇鎌鼬少年の頬截って去る (かまいたちしょうねんのほほきってさる) 〇少年の心の闇を鎌鼬 河童三子 〇少年の脛の創あと鎌いたち 々 〇青年を再び襲ふ鎌鼬 々

寒柝

〇風に聞く寒柝一つ二つかな (かぜにきくかんたくひとふたつかな) 〇寒柝に火の用心とおさな声 河童三子 〇寒柝の油小路を北へ行く 々 〇寒柝や火宅の闇を打って行く 々

クリスマスイブ

〇蝋燭のクリスマスイブ北の街 (ろうそくのクリスマスイブきたのまち) 〇クリスマスイブパソコンに子が潜入 河童三子 〇青と黄に地球を染めるクリスマス 々 〇クリスマス厩(うまや)に着きし三賢者 々

着ぶくれ

〇着ぶくれてイヌイット人となりにけり (きぶくれてイヌイットじんとなりにけり) 〇だるまさん転んだ私着ぶくれた 河童三子 〇裘(かわごろも)着て犬猫に怪しまる 々 〇着ぶくれて手足届かぬぬいぐりみ 々

冬至

〇囲われし太古に昇る冬至の陽 (かこわれしたいこにのぼるとうじのひ) 〇ビル群の冬至斜陽の翳りかな 河童三子 〇冬至粥ひとりの鍋を噴きこぼす 々 〇我が家の隙間差し込む冬至の陽 々

虎落笛

〇吉野川竜の下るや虎落笛 (よしのがわりゅうのくだるやもがりぶえ) 〇夜話の奥の隙間を虎落笛 河童三子 〇独り病み虎落笛鳴る夢の中 々 〇残照に幼き日々の虎落笛 々

〇白鮫舞ふ青い世界の夢覚める (しろさめまうあおいせかいのゆめさめる) 〇撞木鮫あそび心の箱眼鏡 河童三子 〇鱶と呼んで少し親しみ生れけり 々 〇老鮫の身をくねらせて懴悔かな 々

嚔(くしゃみ)

〇非常勤講師の嚔板書消す (ひじょうきんこうしのくしゃみばんしょけす) 〇三つ目の嚔にショイと弾みつけ 河童三子 〇大嚔して一人部屋見回しぬ 々 〇二の腕にクシュと嚔の品つくる 々

冬木立

〇冬木立越し奥山の冬木立 (ふゆこだちごしおくやまのふゆこだち) 〇冬木立白骨林を異にして 河童三子 〇一人又ひとり惜別の冬木立 々 〇赤裸々に語ってをるや冬木立 々

実南天

〇荒山や鵯の育てし実南天 (あれやまやひよのそだてしみなんてん) 〇ずっしりと山の南天実が重し 河童三子 〇南天の実さわさわ揺らし鳥立ちぬ 々 〇実南天そこは鬼門と聞いてゐる 々

ポインセチア

〇ポインセチア戀に狂いしギリシャ神 (ポインセチアこいにくるいしぎりしゃしん) 〇ポインセチアは妖精のカーペット 河童三子 〇銀行のポインセチアに大疲れ 々 〇猩々木真っ赤な狸が出てきそう 々

年惜しむ

〇ワーグナーの楽劇に幕年惜しむ (ワーグナーのがくげきにまくとしおしむ) 〇数え日や蟹送られて宴となる 河童三子 〇ゴブリンと部屋に暮らして年惜しむ 々 〇俳友の追悼文や年詰まる 々

煤払

〇煤払竹持ってベニー・グッドマン (すすはらいたけもってベニー・グッドマン) 〇本棚の本あちこちや煤払 河童三子 〇煤払本を開きて小一時間 々 〇煤掃の僧一列に畳搏つ 々

冬の雷

〇寒雷の一喝を待つ心かな (かんらいのいっかつをまつこころかな) 〇眠る子の心起こせよ冬の雷 河童三子 〇ハッとする一撃も無し冬の雷 々 〇冬の雷ハチャトリアンを聴いてゐる 々

手袋

〇手袋の人差し指の右の穴 (てぶくろのひとさしゆびのみぎのあな) 〇手袋の五本の指を噛んで脱ぐ 河童三子 〇手袋の五本の指に憧れし 々 〇手袋を脱いで自ずから解放す 々

冬帽子

〇手擦れせしアナーキストの冬帽子 (てずれせしアナーキストのふゆぼうし) 〇百姓の手拭一丁頬被り 河童三子 〇諦念も安らぎに似て冬帽子 々 〇冬帽子プロレタリアを押し通す 々

寒鰤

〇鰤の目の海あげられし怒りかな (ぶりのめのうみあげられしいかりかな) 〇寒鰤に雫して海抱かせる 河童三子 〇鰤糶の声ふとぶとと響き合う 々 〇並びをる鰤の背に糶札置かる 々

漱石忌

〇装丁の堅き全集漱石忌 (そうていのかたきぜんしゅうそうせきき) 〇縁側に猫日向ぼこ漱石忌 河童三子 〇漱石忌萩も芒も枯れにけり 々 〇漱石忌やたらに猫の出歩く日 々

開戦忌

〇十二月八日牛乳瓶の燗 (じゅうにがつようかぎゅうにゅうびんのかん) 〇我ら脱脂粉乳の子開戦忌 河童三子 〇十二月八日寝込みを襲ふ父帰宅 々 〇海軍を復員父の開戦忌 々

雪蛍

〇雪蛍九つ十や予後の日々 (ゆきぼたるここのつとおやよごのひび) 〇雪ばんば夕餉にミナリ摘みくるよ 河童三子 〇雪虫の暮れゆく空を楽しませ 々 〇夕暮れのひとりを囃すしろばんば 々

藪柑子

〇藪柑子憂ひに濡れし山路かな (やぶこうじうれいにぬれしやまじかな) 〇藪柑子腰を屈めしにじり口 河童三子 〇赤い実や数多の中の藪柑子 々 〇蔀戸の下にちらと藪柑子 々

霜夜

〇予後の身に痰のからまる霜夜かな (よごのみにたんのからまるしもよかな) 〇祖母と寝て母待つ日々を霜の夜 河童三子 〇パソコンのキー打つ音や霜の夜 々 〇霜月夜眠りの底を貨車行けり 々

枇杷の花

〇夫の郷一人棲みをり枇杷の花 (つまのさとひとりすみおりびわのはな) 〇花枇杷の庭に拳を握る人 河童三子 〇枇杷の花揺らして登る追われ猫 々 〇夜夜に見る星曼荼羅や枇杷の花 々

小六月

〇小六月ロッカー開けて仏見る (ころくがつロッカーあけてほとけみる) 〇借景の比叡背にする小六月 河童三子 〇白菜のまきはじめ良き小六月 々 〇我が予後の縁先にある小六月 々

湯豆腐

〇湯豆腐の湯気に髭かく共白髪 (ゆどうふのゆげにひげかくともしらが) 〇湯豆腐の湯気の中なる手前取り 河童三子 〇湯気の中白き豆腐が物足りぬ 々 〇湯豆腐の角を残して柔らかし 々