2020-01-01から1年間の記事一覧

大晦日

〇大国天小槌も拭かれ大晦日 (だいこくてんこづちもふかれおおみそか) 〇下仁田の葱土乾く大晦日 秋甫 〇大晦日人のお悩み訊くラジオ 々 〇雪はれて雫に濡れる大晦日 々

年詰まる

〇鳥にやるリンゴも雨に年詰まる (とりにやるリンゴにあめのとしつまる) 〇奇術師の瞬間移動年惜しむ 秋甫 〇水槽のイリュージョン年深し 々 〇買い物の袋両手に年詰まる 々

年用意

〇年用意して後籠るばかりなり (としよういしてあとこもるばかりなり) 〇五十肩に餅背負わせて年用意 秋甫 〇年用意留守宅に鰊蕎麦送る 々 〇子の部屋は開かずの間にて年用意 々

日記果つ

〇絵日記の彩褪せにけり古日記 (えにっきのいろあせにけりふるにっき) 〇癌告知までの検査に果つ日記 秋甫 〇埒もなき一冊加え日記果つ 々 〇古日記言霊の抜け落ちて在り 々

数へ日

〇数へ日の箒目踏むや詩仙堂 (かぞえびのほうきめふむやしせんどう) 〇数へ日や麺麭工房の香を買いぬ 秋甫 〇数へ日の門に餅搗く家族かな 々 〇数へ日の明くれば胸の癌を切る 々

古暦

〇古暦受診日一つ残しをり (ふるごよみじゅしんびひとつのこしおり) 〇古ごよみ照る日曇る日涙の日 秋甫 〇受診日の書入れ多き古暦 々 〇毎年に同じ規格の古暦 々

聖夜

〇宅配にピッツアとコーラー聖夜の灯 (たくはいにピッツアとコーラーせいやのひ) 〇羊飼いのひつじほどゐて聖夜劇 秋甫 〇スーパーのサンタはマスクに口書いて 々 〇クリスマス欅にリンゴの灯をともす 々

年の市

〇年の市手をポケットに通り過ぐ (としのいちてをポケットにとおりすぐ) 〇年の市くじ引き引いて鐘ならす 秋甫 〇飾り売り今年も同じ顔が立ち 々 〇店頭をテントで繋ぐ年の市 々

冬川

〇冬川を分けて鴨らの日向ぼこ (ふゆかわをしめてかもらのひなたぼこ) 〇鴨十羽鷺一羽のみ冬の川 秋甫 〇厨水集めて流る冬の川 々 〇冬の川芥啄む烏かな 々

〇京に在れば京こかぶにて蕪酢に (きょうにあればきょうこかぶにてかぶらずに) 〇大原の流れに洗う京こかぶ 秋甫 〇聖護院千枚切って千枚漬け 々 〇京こかぶ傷一つなく洗わるる 々

冬至

〇東山登りかねたる冬至の日 (ひがしやまのぼりかねたるとうじのひ) 〇橄欖の畝に影ある冬至の日 秋甫 〇弘法市冬至南瓜も商われ 々 〇冬至の日哀しみの光鋭き 々

龍の玉

〇龍の玉砕けることもなく終わる (りゅうのたまくだけることもなくおわる) 〇兄の子も娘一人や竜の玉 秋甫 〇龍の玉一つ一つに陽の光 々 〇あの世在ると孫に言いけり龍の玉 々

〇一楽章終わりて咳の嵐かな (いちがくしょうおわりてせきのあらしかな) 〇疎まるる咳立て続け出て止まず 秋甫 〇咳ひとつされて物持つ手を放す 々 〇咳込むで車中の視線集めをり 々

凍蝶

〇暮れの日に取り残されし冬の蝶 (くれのひにとりのこされしふゆのちょう) 〇凍蝶や身体労れという便り 秋甫 〇幼年の思い出貧し冬の蝶 々 〇凍蝶の傍ら寒し酔わぬ酒 々 冬蝶、凍蝶の掲句を読んでゐて最も気に入った句に出会った。 〇冬の蝶ただ美しき疲れ…

実南天

〇南天の実も葉も燃えて首垂る (なんてんのみもはももえてこうべたる) 〇便所ある鬼門に赤い実南天 秋甫 〇実南天落ち残る柄の老婆心 々 〇実南天一房に網袋かけ 々

〇地球屋の猫のおきもの丘の雪 (ちきゅうやのねこのおきものおかのゆき) 〇大空へ口あけて受く小米雪 秋甫 〇行く街が今雪降るとメールくる 々 〇癌手術する街の銀色の道 々

冬ごもり

〇入院の前奏にして冬籠 (にゅういんのぜんそうしにてふゆこもり) 〇外用を一つ残して冬ごもり 秋甫 〇冬籠きめれば二三電話あり 々 〇ほこほこと夢育みて冬籠 々

冬ざるる

○造船の鋼敲く音冬ざるる (ぞうせんのかねたたくおとふゆざるる) 〇遊歩道鴉の跳ねて冬ざるる 秋甫 〇千切れ雲山を越えんと冬ざるる 々 〇冬ざれや掘削機響きをり 々

冬鴎

〇冬鴎杭一本の哲学者 (ふゆかもめくいいっぽんのてつがくしゃ) 〇冬鴎家も無ければ墓も無し 秋甫 〇岸壁に釣人と居て冬鴎 々 〇海峡をフェリーと帰る冬鴎 々

裘(かわごろも)

〇皮ジャンの男の背中竜登る (かわジャンのおとこのせなかりゅうのぼる) 〇裘(かわごろも)エサウは豆が欲しかった 秋甫 〇豹の柄化学繊維という獣 々 〇山伏の腰の手足や裘 々

冬帽子

〇夜霧に消ゆ男ありけり冬帽子 (よぎりにきゆおとこありけりふゆぼうし) 〇業平に被せてみたし毛糸帽 秋甫 〇公園の炊き出し貰う冬帽子 々 〇冬帽子お天道にも拗ねてをり 々

冬陽

〇烏瓜かかる木の冬陽差しかな (からすうりかかるきのふゆひざしかな) 〇冬陽より戻れば家の寒かりき 秋甫 〇冬厨葱刻む手に茜射す 々 〇冬陽差しめだかを寝かせをりにけり 々

冬暖か

〇冬暖か製紙の煙ただ上へ (ふゆあたたかせいしのけむりただうえへ) 〇冬ぬくし畦に凭れて長話 秋甫 〇暖冬を寒行僧の言うて行く 々 〇冬ぬくし松剪る人が声かける 々

開戦忌

〇原罪や吾に繋がる開戦忌 (げんざいやわれにつながるかいせんき) 〇遺伝子の楔切れずに開戦忌 秋甫 〇開戦忌吾に流るるカインの血 々 〇開戦忌神に挑むや宇宙軍 々

冬の空

〇山頂を平に見せて冬の空 (さんちょうをたいらにみせてふゆのそら) 〇曇り窓拭けど瀬戸海冬の雲 秋甫 〇降りそうな日つづきをり冬の空 々 〇冬の雲低く心を閉じ込める 々

湯豆腐

〇湯豆腐を一丁食べに門くぐる (ゆどうふをいっちょうたべにもんくぐる) 〇湯豆腐の木綿に通す普段箸 秋甫 〇頑なに貧乏通す湯豆腐党 々 〇湯豆腐の簡素を愛し清楚なり 々

襟巻

〇襟巻の中にふと見た狐貌 (えりまきのなかにふとみたきつねがお) 〇けもの径帽子襟巻マスクして 秋甫 〇襟巻の下首巻したる老婆かな 々 〇純白のマフラー哀し物語 々

焚火

〇火を焚けば人来て代わる焚火守 (ひをたけばひときてかわるたきびもり) 〇大工来て焚火はじまる家普請 秋甫 〇招かれて手をかざし入る焚火の輪 々 〇農事談政治論など焚火の輪 々

枇杷の花

〇子の家に病みて盛りの枇杷の花 (このいえにやみてさかりのびわのはな) 〇お隣の兄弟姉妹枇杷の花 秋甫 〇上向いて多産旨とす枇杷の花 々 〇集会所のエプロン姿枇杷の花 々

山茶花

〇山茶花を曲がりて子らの焚火もなし (さざんかをまがりてこらのたきびもなし) 〇山茶花の空曇りたる日もありぬ 秋甫 〇懐石の皿に山茶花添えてあり 々 〇山茶花の咲いて散っても留守家かな 々