蘭鋳

     ◦蘭鋳やリウマチ熱の治療中
(らんちゅうやリウマチねつのちりょうちゅう)
金魚の夢
 ある整形外科の受付ホールの隅に水槽があって、そこに年がら蘭鋳が入れられている。蘭鋳たちは殆ど自分の動きを見せずに水流に身をゆだねている風で、生きているのを証明するように時々尻尾を揺らすのであったが、その前を車椅子に乗せられてやって来る老人たちのように、幽玄の世界に居るようであった。
 彼らはただ醜さを競っているだけで、神の創造物には思えなかった。じっと見ていると、いつの間にか私自身が水槽の中にいて、上がる水泡にたゆたいているような錯覚になるのである。
 子供の頃、町内の地蔵盆で「金魚のうた」を浴衣を着て踊った思い出がある。
    赤いベベ着た、かわいい金魚
    お目めをさませば、ごちそうするぞ
    赤い金魚は、あぶくを一つ
    昼寝うとうと、夢からさめた