秋思う

     ◦白秋やマザーグースに秋憂う
(はくしゅうやマザーグースにあきうれう)
 白秋は北原白秋
 白秋の童謡を読んで戸惑った。

        金魚
   母さん、母さん、どこへ行った。
         紅い金魚と遊びませう。

   母さん、帰らぬ、さびしいな。
         金魚を一匹突き殺す。

   まだまだ、帰らぬ、 くやしいな。
         金魚二匹締め殺す。

   なぜなぜ、帰らぬ、 ひもじいな。
           金魚を三匹捻じ殺す。


   涙がこぼれる、日は暮れる。
         赤い金魚も死ぬ、死ぬ。


   母さん怖いよ、眼が光る、
         ピカピカ、金魚の眼が光る。

 イギリスの古い童謡に「マザーグース」は有名であるが、白秋もまたこれに倣ったのかもしれない。子供には残酷でナンセンスとも言われている。
 私自身もまずはそう思ったので、もう一度読み返した。少年の母への希求が切なく、幼かった私にもこれに似た感情に支配されたことがあったと、思えてきたのである。
 マザーグースはガチョウのお婆さんが子供たちに聞かせてきた唄なのだ。