雪柳

〇斑雪庭に斑の小米花 (まだらゆきにわにまだらのこごめばな) 〇祖母の背に負われて温し雪柳 河童三子 〇雪柳朝(あした)に白し塀の内 々 〇小米花登校の子のちらちらと 々

土筆

〇袴着てにぎにぎしくも土筆の列 (はかまきてにぎにぎしくもとくしのれつ) 〇青々と頭剃りたる土筆かな 河童三子 〇手作りの句集あがりしつくづくし 々 〇めいめいに首傾げたる土筆かな 々

啓蟄

〇啓蟄や色香まっすぐ目覚めける (けいちつやいろかまっすぐめざめける) 〇啓蟄や鉦や太鼓をかり出さん 河童三子 〇啓蟄や土竜敲(もぐらたたき)を外すかな 々 〇啓蟄や曇りのち雨となりけり 々

引鴨

〇引鴨ややがて大河の上となる (ひきがもややがてたいがのうえとなる) 〇引鴨へ浚渫船の首を振る 河童三子 〇引鴨や兄妹の無事確かめぬ 々 〇引鴨の遅れて一羽飛び立ちぬ 々

春霙

〇チップ船沖合に待つ春霙 (チップせんおきあいにまつはるみぞれ) 〇釣り糸に兄弟の距離春霙 河童三子 〇コンビニにツーリングの子春霙 々 〇春霙蛇口緩みて流れけり 々

目貼り剥ぐ

〇蜑の家の海見る小窓目貼り剥ぐ (あまのやのうみみるこまどめばりはぐ) 〇目貼り剥ぐ術後のテープ剥ぐごとく 河童三子 〇南北の目貼り剥ぐれば部屋一つ 々 〇目貼り剥ぐ隣家の人の会釈かな 々

石蓴

〇石蓴掻く屈まる母に潮遠く (あおさかくかがまるははにしおとおく) 〇椀に顔ふせて石蓴の香にむせぶ 河童三子 〇磯料理締めはいつもの石蓴汁 々 〇汁の実の葱採るごとく石蓴掻く 々

二月尽

〇南天に実の二つ三つ二月尽 (なんてんにみのふたつみっつにがつじん) 〇三度目の遺言書いて二月尽 河童三子 〇うるうとて寒さいとひく二月盡 々 〇大學の休学届二月尽 々

クロッカス

〇クロッカスの空広々と深々と (クロッカスのそらひろびろとふかぶかと) 〇クロッカス三女は姉に憧れて 河童三子 〇クロッカスフィンランドの妖精と 々 〇いぬねこにのぞかれているクロッカス 々

鶯笛

〇鶯笛思い出はよき音色して (うぐいすぶえおもいではよきねいろして) 〇一人吹く鶯笛に何思ふ 河童三子 〇子ら寄せて鶯笛を作りけり 々 〇鶯笛はるかな目して吹く男 々

春めく

〇春めくや番の鳩のふくみ声 (はるめくやつがいのはとのふくみごえ) 〇地球儀をゆっくり回し春の旅 河童三子 〇春めくや搭乗口のペアルック 々 〇搭乗の案内の声や春めきぬ 々

犬ふぐり

〇犬ふぐり道祖神の目を覚ます (いぬふぐりどうそしんのめをさます) 〇犬ふぐり異国の霄(そら)を思い出す 河童三子 〇大犬ふぐりドーベルマンのかもしれぬ 々 〇犬ふぐり狆かチワワかそぞろ神 々

野焼

〇スサノオの剣に斬るや野焼の炎 (スサノオのつるぎにきるやのやきのひ) 〇神々しき漢(おとこ)の顔や野焼守 河童三子 〇野焼の火司る神を見るかな 々 〇野を焼や炎(ほのお)の神を崇めつつ 々

初音

〇初音聞く正調の粉挽唄かな (はつねきくせいちょうのこびきうたかな) 〇山道は躓くばかり初音聞く 河童三子 〇おっとっと調子ぱずれの初音かな 々 〇吾に似て何と音痴な初音かな 々

恋猫

〇恋猫の雨を窺ふ軒の下 (こいねこのあめをうかがうのきのした) 〇恋猫の濡れて窶れて戻りけり 河童三子 〇朝帰りして昼寝してうかれ猫 々 〇恋猫のチャームポイント貌の疵 々

早春

〇早春や君が蓬髪野に萌えよ (そうしゅんやきみがほうはつのにもえよ) 〇耀きは早春の芽の泪かな 河童三子 〇早春や水面を計る鯉の髭 々 〇早春や森羅万象潤ひて 々

多喜二の忌

〇露国にてまた甦る多喜二の忌 (ろこくにてまtよみがえるたきじのき) 〇雪解けりゃみな露わなる多喜二の忌 河童三子 〇多喜二忌や地の果てに死すナワリヌイ 々 〇大學は休学のまま多喜二の忌 々

雨水

〇裏山を雲に隠して今日雨水 (うらやまをくもにかくしてきょううすい) 〇暖かい風も吹き来て雨水かな 河童三子 〇雨水の日雨風となり窓を搏つ 々 〇雨水の朝沖の小島が濡れてゐる 々

東風

〇林檎煮る窓振るわせる今朝の東風 (りんごにるまどふるわせるけさのこち) 〇夕東風が遊ぶ雀を帰らせる 河童三子 〇朝東風や西へ西へと野の煙 々 〇夕東風に砂州を舞ひ行く袋かな 々

飛梅

〇飛梅や博多京都は乗り換へぬ (とびうめやはかたきょうとはのりかえぬ) 〇咲けばまた都とならむ宰府の梅 河童三子 〇絵馬に描く飛梅の夢かなわずに 々 〇飛梅や石の上にも三年ゐたよ 々

草餅

〇草餅の棚にいきなり団子かな (くさもちのたなにいきなりだんごかな) 〇草餅の中の鶯すぐに飛ぶ 河童三子 〇故里は蓬芽を吹く蓬餅 々 〇はじめから焼いて売られる蓬餅 々

勿忘草

〇な忘れそ勿忘草にささやかる (なわすれそわすれなぐさにささやかる) 〇勿忘草遠い昔の映画かな 河童三子 〇ふり返り吾に教へむ勿忘草 々 〇勿忘草うす水色の寂しさよ 々

菠薐草

〇菠薐草寒さつのらす甘味かな (ほうれんそうさむさつのらすあまみかな) 〇恥じらひをほんのりあかく菠薐草 河童三子 〇灰汁のある菠薐草の滋養かな 々 〇菠薐草地を這うやうに育ちけり 々

寒潮

〇親潮ののどぐろ旨し寒の潮 (おやしおののどぐろうましかんのしお) 〇寒潮や隠岐みる母の病み給まふ 河童三子 〇寒潮や義母病み子病み吾が病む 々 〇寒潮の隠岐島分けて上りゆく 々

二修会

〇二修会の達陀松明飛び出でり (にしゅうえのだったんしょうみょうとびいでり) 〇二修会の火に二月堂耐えにけり 河童三子 〇二修会の火を見ずにをり二月堂 々 〇二修会や廻廊走る火の懺悔 々

紀元節

〇草も木も靡けば哀し建国日 (くさもきもなびけばかなしけんこくび) 〇紀元節二千六百八十二回目 河童三子 〇宮中の儀式の一つ紀元節 々 〇この国に生まれ育って建国日 々

落第

〇孫落第隔世遺伝かもしれぬ (まごらくだいかくせいいでんかもしれぬ) 〇落第や母を泣かせて子は戻る 河童三子 〇落第の夢に藻掻きし傘寿かな 々 〇落第や空はこんなに広いから 々

青木の実

〇青木の実林の径の薄明り (あおきのみはやしのみちのうすあかり) 〇幼児弾くピアノの音や青木の実 河童三子 〇大き実のもっと葉大き青木の実 々 〇もの言ひし後の淋しさ青木の実 々

針納め

〇一本のくけ針にすむ針をさめ (いっぽんのくけばりにすむはりおさめ) 〇美しいマチ針納めドレメの娘 河童三子 〇針納め大くけで綴ずるパンツの裾 々 〇針納めそう言へば針どうしたか 々

金縷梅

〇金縷梅の風櫛梳る朝かな (まんさくのかぜくしけずるあしたかな) 〇金縷梅韓国人の家ならむ 河童三子 〇満作や春魁(さきがけ)るチアガール 々 〇満作が咲いてがしゃがしゃ登校子 々