鈍行俳句

寒露

○鰡飛んで河口を上る寒露かな (ぼらとんでかこうをのぼるかんろかな) ○きびなごの寒露の水輪船泊 秋甫 ○船底を魚影ゆっくり寒露かな 々 ○釣竿を鳶と見つめる寒露の日 々 今日は寒露の日ということですが穏やかです。また釣り行脚に出ました。 高速道路にて…

秋時雨

○今朝見れば瀬戸の八十島秋時雨 (けさみればせとのやそじまあきしぐれ) ○浦山に雲走らせる秋時雨 秋甫 ○奥山を隠して里の秋時雨 々 ○わき菜採る人濡らしゆく秋時雨 々 ━わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟━(万葉集)小野の篁 颱風の…

秋思

○沖の雨碇泊の灯の秋思かな (おきのあめていはくのひのしゅうしかな) ○雲低きことも秋思というべきか 秋甫 ○里暮れて老いるに早き秋憂う 々 ○物の実のみな裏作に秋憂う 々 颱風25号は九州の福岡から山口の日本海側へ抜けているというのに、山じ風が夜半か…

ひつじ田

○ひつじ穂の垂れても哀れ先の草 (ひつじほのたれてもあわれさきのくさ) ○ひつじ田になりて雨の日多かりき 秋甫 ○ひつじ田の雨に蛙の二、三声 々 ○ひつじ田に季は戻らぬ水田にも 々 稲を刈った後のひつじ田には秩序正しく青々とした草が伸びています。それ…

稲架

○峠来て稲架の日当たりばかりかな (とうげきてはぜのひあたりばかりかな) ○道端に稲並べられ日の匂い 秋甫 ○稲架の田をサインコサイン下校の児 々 ○稲架けて今年の出来を愛おしむ 々 「散歩の戻り、峠を上がると、そこは小さな田圃であった。」その小陽だ…

菜虫

○菜虫とて一山喰らう心意気 (なむしとていちざんくらうこころいき) ○一寸の菜虫殺して五分の呵責に 秋甫 ○菜の色を体に摂って菜虫かな 々 ○大方は小菜蛾となりし菜虫かな 々 最近は菜虫採りの作業を見かけなくなりましたね。労働賃金が高くなったので手作…

葦火

○蘆火守る漢の貌の神々し (あしびもるおとこのかおのこうごうし) ○伸びしろはカットされつつ葦焼かる 秋甫 ○ふるさとの葦焼く烟夕なずむ 々 ○夕暮れて葦火の明り残しをり 々 火を点けるって好きですよ。いえ決して放火はしませんが、太古の昔人間が初めて…

十月

○嵐やって十月の空初々し (あらしやってじゅうがつのそらういういし) ○十月の雲真綿のように新しき 秋甫 ○十月や何か清算したような 々 ○十月の風入れて心決まりぬ 々 Yudubono君へ 颱風一過。 抜けるように透明な空から10月がはじまりました。ガラス窓を…

九月尽

○九月尽仕切り直して水を飲む (くがつじんしきりなおしてみずをのむ) ○涼しさにまだ慣れぬ日の九月尽 秋甫 ○颱風の同じ道来て九月尽 々 ○捨てるものばかり集めて九月尽 々 颱風24号 朝から準備万端颱風を待っています。沖縄から、奄美へ、やがて九州の南の…

芒原

○芒原出て来て尻尾生えてをり (すすきはらでてきてしっぽはえており) ○芒野に人の逝く道すでにあり 秋甫 ○夕阿蘇に産毛生えたり銀薄 々 ○幾たびも野分に耐えし芒かな 々 颱風24号が又この前のようなコースを辿って来るようだ。今日はまだ沖縄辺りをゆっく…

秋の声

○賢治の童話繙けば秋の声 (けんじのどうわひもとけばあきのこえ) ○樫の木はぽとりころころ秋の声 秋甫 ○佇めば何かはじける秋の声 々 ○秋の声あつめて走る電車かな 々 シグナルとシグナレス 「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、 さそりの赤目が 見えたこ…

肌寒や

○肌寒や独りの部屋の灯を燈す (はださむやひとりのへやのひをともす) ○肌寒の丸寝にわれを奪われし 秋甫 ○肌寒し露天風呂して星を見る 々 ○肌寒しオカルト映画が戸を叩く 々 豊受山の頂上はすっかり雲にかかり肌寒い朝である。 今日の肌寒さ、というか鳥肌…

良夜

○友の句のメールに来たる良夜かな (とものくのめーるにきたるりょうやかな) ○明か明かとわが寝所まで良夜かな 秋甫 ○良夜にて心ゆるしてしまひけり 々 ○良夜の道山頭火らし影法師 々 やまなし 宮沢賢治 かにの子どもらはもうよほど大きくなり、底の景色も…

鵙の贄

○鵙の贄イエスのやうに架けられし (もずのにえイエスのようにかけられし) ○朝鵙の早よ早よ早よと事件かな 秋甫 ○贄おいて三日目も鵙は来ず 々 ○探し物まだ見つからぬ鵙の贄 々 なめとこ山のくま 宮沢賢治 小十郎は落ちついて足をふんばって鉄砲をかまえた…

秋桜

○秋桜や身の振り方は風任せ (こすもすやみのふりかたはかぜまかせ) ○秋桜の噂話に揺れる時 秋甫 ○風とゐて心変わりぬ秋桜 々 ○秋桜他生の縁に袖擦りぬ 々 コスモスの詩 与謝野晶子 少し冷たく 匂はしく 清くはかなく たよたよと コスモスの花 高く咲く 秋…

曼珠沙華

○あの世から赤い糸張る曼珠沙華 (あのよからあかいいとはるまんじゅしゃげ) ○曼珠沙華咲き切って絡まりにけり 秋甫 ○曼珠沙華中華の街の灯を愛す 々 ○彼岸花葉を忘れきて寂しけり 々 下の畑の畦に咲いていた彼岸花を切ってきて机の上に置いてみた。何かを…

秋の雨

○秋の雨ようすの知れぬ便りかな (あきのあめようすのしれぬたよりかな) ○秋雨やなかなか来ないメール待つ 秋甫 ○秋雨の止んでつくつくまた啼くや 々 ○秋の雨降ったり止んだり虫の声 々 今年は何処へ行ってもまだコスモスを見かけない、いつまでも猛暑がつ…

男郎花

○男郎花はなの下など長かりし (おとこえしはなのしたなどながかりし) ○男郎花案外心細やかし 秋甫 ○男山隠して咲くや男郎花 々 ○七草に入れてもらへぬ男郎花 々 男郎花はやはり枝がパキパキしていて白がいい。去年北陸の旅をしたと時那谷寺へ行ったがその…

草の穂

○草の穂や汽水の風を右左 (くさのほやきすいのかぜをみぎひだり) ○草の穂に軍配振るやがき大将 秋甫 ○草の穂を分けて海への小径かな 々 ○草の穂の夜露に濡れて帰り道 々 三日目の釣り行脚は雨になって牟礼、庵治の半島の港を次回のために車で回って調べる…

虫の闇

○車中泊一歩が外の虫の闇 (しゃちゅうはくいっぽがそとのむしのやみ) ○草枕昼の波音夜はむしの闇 秋甫 ○波音のやがては深き虫の闇 々 ○虫の闇足もとさぐる旅ねぐら 々 12時を回ると大きな街灯は消されて暗く、トイレにでると文字通り虫の闇の中を歩む状態で…

○鯊の目の哀しみ隠す色目金 (はぜのめのかなしみかくすいろめがね) ○草の穂を鯊釣りの子が踏みゆけり 秋甫 ○鯊の餌の沙蚕(ごかい)の鼓動指先に 々 ○針呑んでおどけて見える鯊の貌 々 朝6時出発で、釣り旅人となった。今回は香川県の方面の東回りである。…

新生姜

○新生姜刻んで漢よろこばす (しんしょうがきざんでおとこよろこばす) ○新生姜年端も行かぬひね生姜 秋甫 ○新生姜ほんのり紅を指してをり 々 ○頑なに一家眷属大生姜 々 新生姜を大量に頂いた。葉生姜でもなく、谷中生姜でもない、大生姜である。これを3か月…

秋簾

○秋簾学童の声高くなり (あきすだれがくどうのこえたかくなり) ○秋簾今朝は翠波に雲掛かる 秋甫 ○午後の陽を切子細工に秋簾 々 ○秋蝉の別れを告げる簾かな 々 わが家の簾は台風21号の時外したそのままである。午後の西日が畳の上に日々領域を喰い込ませる…

老人の日

○百歳が七万人に老人の日 (ひゃくさいがななまんにんにろうじんのひ) 115歳の田中力子さん ○喜寿などはお世話する役敬老会 秋甫 ○老人の日や優先席を若者に 々 ○敬老日長寿の国に吾もゐて 々 百歳以上の日本の人口が毎年増えつづけて今年67824人となったと…

蟷螂

○蟷螂はコンパスをもつ数学者 (とうろうはコンパスをもつすうがくしゃ) 蟷螂 ○蟷螂の新陰流に構えをり 秋甫 ○葉の上のかまきりヨガの修行かな 々 ○かまきりの鎌ふるように酔っ払い 々 雨は降ったり止んだり、秋雨前線が本州付近で停滞しているのだ。少し蒸…

葡萄

○一房の葡萄の箱の仰々しい (ひとふさのぶどうのはこのぎょうぎょうしい) 山ぶどう ○葡萄棚に木漏れ日ゆたか実のなかり 秋甫 ○ぶどう好きとたとへ孫に言われても 々 ○山ぶどう黒い順から甘かりき 々 山ぶどうは食べられるが野ぶどうは食べられない。めくら…

ちちろ

○上がり来て身の上話すちちろ哉 (あがりきてみのうえはなすちちろかな) つづれさせ(綴れ刺せ) ○ちちろ鳴くかの一匹や便所の裏 秋甫 ○一徹にちちろ一つが夜も昼も 々 ○独り居につづれさせなど来て鳴きぬ 々 【綴れ刺せ】はコオロギのことである。 蟋蟀の…

新涼

○新涼の心に添へる朝かな (しんりょうのこころにそえるあしたかな) ○新涼を大吟醸の喉越しに 秋甫 ○大吟醸飲めば新涼入りきたり 々 ○新涼や仕切り直してペンを執る 々 どうやら京都では、私が随分と老人になったように見ているようだ。最近とみにお腹の周…

二百二十日

○変哲のない風が今日二百二十日 (へんてつのないかぜがきょうにひゃくはつか) 昨日帰四 ○二百二十日途中の駅で降ろされる 秋甫 ○野分に口あけ体内の大掃除 々 ○鴉が呼ぶ野分の去った鉄柱で 々 昨日「しおかぜ」は走っている途中の車中で、大雨の影響で今治…

菊酒

○菊浮かべ大吟醸の京の酒 (きくうかべだいぎんじょうのきょうのさけ) 重陽の日 ○重陽の丘より船にハンケチ振る 秋甫 ○重陽や黄檗山に写生する 々 ○遺されて独り菊酒呑んでをり 々 9月9日は重陽の日。 この日、お酒に菊の花弁を浮かべて飲むと長寿に恵まれ…