○上がり来て身の上話すちちろ哉
(あがりきてみのうえはなすちちろかな)
つづれさせ(綴れ刺せ)
○ちちろ鳴くかの一匹や便所の裏 秋甫
○一徹にちちろ一つが夜も昼も 々
○独り居につづれさせなど来て鳴きぬ 々
【綴れ刺せ】はコオロギのことである。
蟋蟀の異名で、普通にみられるコオロギ、体長2cm、黒褐色、頭部は丸みがある。雄は8月の中旬ごろから11月ごろまで、リッリッリッとなく。古の人はこの声を聞くと、「肩刺せ、裾刺せ、綴れ刺せ」と着物の手入れを促されているように聞いたというのである。
確かに庭にリッリッリッと鳴いている蟋蟀も混じっている。「綴れ刺せ」とは聞こえないが、リッリッとなにか促がされている気持ちにはなってくる。衣替えの季節が迫っているのも確かである。