良夜

     ○友の句のメールに来たる良夜かな
(とものくのめーるにきたるりょうやかな)

       ○明か明かとわが寝所まで良夜かな   秋甫
       ○良夜にて心ゆるしてしまひけり    々

       ○良夜の道山頭火らし影法師      々
 やまなし    宮沢賢治
 かにの子どもらはもうよほど大きくなり、底の景色も夏から秋の間にすっかり変わりました。
 白いやわらかなまる石もころがってき、小さなきりの形の水晶のつぶや、金雲母のかけらも流れてきてとまりました。
 その冷たい水の底まで、ラムネのびんの月光がいっぱいに透きとおり、天じょうでは波が青じろい火を、もやしたり消したりしているよう、あたりはしんとして、ただいかにも遠くからというように、波の音がひびいてくるだけです。
 かにの子どもらは、あんまり月が明るく水がきれいなので、ねむらないで外に出て、しばらくだまってあわをはいて、天じょうのほうを見ていました。