犬ふぐり

          〇これだけを犬に遣るべし犬ふぐり

             (これだけをいぬにやるべしいぬふぐり)

          

            〇浜の犬ふぐり蛸壺の下       河童三子

            〇犬ふぐり塀の破れを忍び込む    々

            〇犬ふぐりの野走れば青い星の空   々

From Buru to grandson

         

   〈此の一句〉

   〇軍港へ貨車の影ゆく犬ふぐり     秋元不死男(1901━1977)

灌仏会

              〇涅槃より久遠の闇世灌仏会

              (ねはんよりくおんのやみよかんぶつえ)

           

            〇仏生会五十六億七千万年     河童三子

            〇雀来て水浴びてをり灌仏会    々

            〇それなりの善男善女仏生会    々

From Buru to grandson

      

   〈此の一句〉

   〇ぬかづけばわれも善女や仏生会     杉田久女(1890━1946)

花冷

          〇花冷や予後まっとうすさてそれで

              (はなびえやよごまっとうすさてそれで)

           

             〇花冷の雨山桜隠しをり    河童三子

             〇花冷や硯の池に冷ゆる墨    々

             〇花冷すきのふの蝶の何処にや  々

From Buru to grandson

 

          

   〈此の一句〉

   〇花冷の木馬鉄鎖を地に垂らし     長田等(1935━)

鳥の巣

             〇鳥の巣に五つの卵五つの夢

              (とりのすにいつつのたまごいつつのゆめ)

            

          〇鳥の親子殻の内外啐と啄(そつとたく)   河童三子

          〇巣の隅に赤い口してどんびり子       々

          〇母にもらひ父にもやふや巣の小鳥      々

From Buru to grandson

     

   〈此の一句〉

   〇鳥の子も頼むや子安観世音     正岡子規(1867━1902)

清明

              〇釣り舟の一つ清明恣

              (つりぶねのひとつせいめいほしいまま)

          

             〇浜に出て清明の石拾ひけり   河童三子

             〇清明の空や恥ずこと二つ三つ   々 

             〇清明や水を上がらぬ鴎たち    々

             From Buru to grandson

    

   〈此の一句〉

   〇清明の水菜歯ごたへよかりけり     鈴木真砂女(1906━2003)

春嵐

            〇海峡の封鎖に春の嵐かな

             (かいきょうのふうさにはるのあらしかな)

           

             〇春嵐バケツひとつが大音響   河童三子

             〇春嵐赤い椿を散華さす     々

             〇春嵐土竜の穴を埋め戻す    々

From Buru to grandson

       

   〈此の一句〉

   〇犬の眼の高さ切なし春疾風     藤田湘子(1926━2005)

春燈

          〇やはらかし和紙に包まる春灯し

              (やわらかしわしにつつまるはるともし)

           

             〇帰り道少し違へて春灯     河童三子

             〇春灯闇に哭いてる迷ひ猫     々

             〇春灯や松健サンバに花ふぶき   々

From Buru to grandson

    

   〈此の一句〉

   〇春灯暗く地球儀天球儀     山田弘子(1934━2010)