冬の雨

     ○傘の娘の腰ふくよかに冬の雨
(かさのこのこしふくよかにふゆのあめ)
雨の一日
 台所の窓から自分の頭のように、ぼんやり霞んでいる海を見ていた。朝から何度見てもそこは同じ眺めであった。
 その景色を破って傘が畠の中の道を下って行った。冷たい雨にも関わらずスカートから素足が出ていた。そのふくよかにすら見える腰のあたりからは気の弛んだ無頓着さが漂っている風にも見えて、きっと近くにある集合住宅の住人だろうと想像したものだ。
 さほども経たない時間にその傘は同じ道を今度は上がって来たのである。彼女は中学3年の姪だったが、すっかり成熟した女を見せていたのだ。