狐火

            〇狐火や土葬に苔のしめり哉

             (きつねびやどそうにこけのしめりかな)

                     

               〇村長の狐火談義目がひかる     河童三子

            〇狐火や夜空に走るドロン砲     々

            〇狐火にも見まよふ岡の我が家の灯  々

           

     婆ごころ

 

  滋賀県甲賀町は 甲賀流の忍者の里でした 子供のころ「猿飛佐助」の漫画本は読みましたが 東寄りの伊賀上野には 伊賀流の「霧がくれ才蔵」という忍者がいて  互いに敵対して戦っていました。

 それがブル婆ちゃんの暮していた田舎とは何の縁もない場所だったのです なにより その頃には 甲賀という名前はどこにも存在しなかったのですが 平成の市町村大合併で甲賀市甲賀町が誕生して にわかに甲賀流忍者も現れたようなのです 忍者屋敷というからくり館も建てられました。

 

 ブルばあちゃんの従妹のTさんは 京都に自分の家があって この甲賀の先祖の家も継承しています だから定期的に京都から甲賀へ車で行って 家や畑の世話をしています 後期高齢者になっていますが 畑には色々な物を育てて至って元気にしています ブルばあちゃにとっては この従妹が唯一故郷を結び付けてくれる人なのです。

 

 さてこの村にはまだ土葬のお墓が残っているのです ブルばあちゃんの叔父が最後の埋葬者で 低くなった土盛りは苔むし その場所を暗示するようにありました 墓地の回りは大きな樹に囲まれて いつもうす暗くひんやりしていました ブルばあちゃんは ひいばあちゃん 祖母 祖父の埋葬にもここへ来ています 子供のころに 雨の日には火の玉が飛んでいるのを見たという 村人の話も聞きました 畑山家のお墓に手を合わせながら ここに立つのもこれが最後になるかもしれないと思いました。