小六月

           〇小六月車窓間近き瀬戸の波

             (ころくがつしゃそうまぢかきせとのなみ)

          

            〇小六月京の雑踏より戻る      河童三子

            〇遥かなる小島の晴れて小六月    々

            〇縁に座せば我が山となる小六月   々

 

     婆ごころ

 

  障子を開けて ガラス窓から入る日当りにパソコンを移動させて 日向ぼっこをしながらブルばあちゃんはこれに向かっています ぽかぽかと温かく眩しいくらいの陽を浴びながら 今日は横目に ブルばあちゃんの山はちょっと高く聳えて見えました。

 11月が終わり明日から12月です 参加している俳句誌の原稿締め切りは今日までです「この一句」という蘭に400字の原稿当番が回っていましたが 何を書くかは以前から決めていました。

 

 少し前一冊の遺句集が送られて来たのです 京都の花園で印刷場を長年営んで来られた句仲間の句集でした 亡くなられたのは随分前だったので やっとという時間の経過でしたが 息子さんが印刷場の後を継がれて纏められたのでしょう。

 

 この作家は国鉄の京都北部機関区をレッド・パージにあってから 京都市内へ出てきて 日雇い労働者などを経て花園にやっと謄写版印刷所を起こした職人です 生涯を通して労働運動に捧げた人で 俳句も弱い人の立場を貫かれていました ブルばあちゃんにとっても そこには忘れ得ぬ昭和の歴史が描かれていたのです。

 ブルばあちゃんは 「この一句」に 〇謄写印刷徹夜で了えて朝の林檎 を選びました。