糸瓜

     ○宿題の糸瓜数えて屋根の上
(しゅくだいのへちまかぞえてやねのうえ)

       ○糸瓜の実食べごろも過ぎ垢擦り   秋甫
       ○糸瓜水名月見せて集めをり     々
       ○糸瓜水使用前後の顔ふたつ     々
  谷川俊太郎   朝のかたち
 昨夜から思いつめていたことが
 果てのない荒野のように夢に現れ
 その夢の途中で目覚まし時計が鳴った
 硝子戸の向こうで犬が尾を振り
 卓の上のコップにななめに陽が射し
 そこに朝があった

 朝はその日も光だった
 おそろしいほど鮮やかに
 魂のすみずみまで照らしだされ
 私はもう自分に嘘がつけなかった
 私は<おはよう>と言い
 その言葉が私を守ってくれるのを感じた

 朝がそこにあった
 蛇口から冷たい水がほとばしり
 味噌汁のにおいが部屋に満ち
 国中の道で人々は一心にあゆみ
 幸せよりたしかに希望よりまぶしく
 私は朝のかたちを見た