最高の人生の見つけ方

 うちへ来て部屋に上がって話していく訪問者は、ここ数年ずっと固定されているようだ。しかも二、三人と極少数なのに、最近は決まって「死」の話しが出てくるようになった。
 現実には話している相手よりきっと自分の方が長生きしてみせると、心のうちに燃えるような情熱をお互い隠しながら、ただ表面的に悟ったような「死」をおとなしく受け入れるように装っているのだ。事実まだこのままではいけないと、それぞれ思っている節はある。何より健康でまだ六十代なのだから。

 そんな時に観たビデオが、「最高の人生の見つけ方モーガン.フリーマン扮するカーター、ジャック.ニコルソン扮するところのエドワード役。

 それぞれの人生の終盤、偶然同室に入院する事になった二人は余命半年の末期癌を宣告される。

 40年間、車の修理工をして家族を支えてきたカーターは、残された時間にしておきたいリストをメモにしていたが 
  ◦見ず知らずの人に救いの手をさしのべる
  ◦涙がでるほど大笑いする
  ◦荘厳な景色を見る
 現実に余命を突きつけられて、メモはまるめて捨ててしまう。それを拾ったエドワードは、そこへ自分のしたい事も書き加えて夢の実現のためにカーターを説得して病院を抜け出す。
 
 ムスタングでカーレースをしたり、スカイダイビングにアフリカのサハァリー、エジプトのピラミッドの上に立ち、チベットの雪原をゆき、北極の夜空をみたりと。

 まあだいたいの人が一度は経験してみたいと思うことを一気にやってのけたのである。
 
 敬虔なクリスチャンでもあったカーターは、妻のたっての希望にそって、家に戻った、自分の体を妻に委ねて再入院した。脳へ転移していた手術を受けるとき、カーターはエドワードに、おまえが世界一美味だと言って飲んでいる珈琲は、じゃっこう猫が一度食べて消化できなかった豆を糞と一緒に出してきたのを焙煎したものだと言って、カーターは涙が出るほど大笑いして手術室へ運ばれて行った。
 
 さて、自分自身を振り返ってみると、「自分の人生に喜びを見いだせたか」どうか正直にこれまで不満のないところだ。「他者の人生に喜びを与えることができたか」、これに関してはエドワードと同じ台詞を吐いているだろう。自分のことで精一杯だよ!って