○兜虫けしかけられて角合わす
(かぶとむしけしかけられてつのあわす)
弟からの葉書
この頃はめったに封書や葉書が郵便受けに入っていることがありません。私の方から季節の郵便便りを書いてもメールで返事が戻ってくることが増えました。そんな中で弟からは葉書がきました。
62歳になる弟は、今近鉄あやめヶ池の近くのカフェケーキ屋さんに勤めて第二の人生をスタートさせているようです。
私たちの両親は早くに亡くなってしまって、10歳以上離れている弟の社会人への第一歩はケーキ職人としてのスタートだったと記憶しています。当時は「ケーキ屋ケンちゃん」というテレビドラマが人気を集めていた時代です。何となく甘いムードのままに入ってしまった人生をそのまま甘い中で閉じようとしているのです。
弟は私の小学3年生の冬に生まれました。一週間経っても片方の目だけは閉じたままで開きません、父はそんな弟を丹下作善などと面白半分に言っていました。母は産褥の床でひどく傷つき悩んでいたのかお乳がでません。私は隣人にお乳にはシジミがいいと聞いて、シジミを買いに走ったりしましたが、弟の片目も間もなく無事に開きました。今では恰幅のいい初老の男性になっていることでしょう。最近会ってないのです。