鶏頭

     ○寂聴の句集に鶏頭燃えてをり
(じゃくちょうのくしゅうにけいとうもえてをり)

       ○鶏頭はまこと鶏冠の色したる   秋甫
       ○カンナ燃え旱の川を渡るらん   々
       ○二河白道カンナ畠へ落るもよし  々
参加している俳句誌のエッセイ欄が今月末締め切りの当番で回ってきたので、瀬戸内寂聴「ひとり」の感想を書く計画だった。暑さのせいにしてはいけないけれど、冷房の部屋の中でも頭のぼ〜とした状況は改善されないまま、ただ自分の呼吸に耳を澄ませていたのである。漠然と「生き延びよう」を自分に言い聞かせて、それに甘んじていた節もあったかもしれない。
 大げさに言えば、フルマラソンのランナーが意識もうろうとしながら完走のテープを切るような恰好で、先ほどやっと原稿用紙3枚を完成した。
 瀬戸内寂聴句集「ひとり」から
   ○小さき破壊ゆるされている柚子湯かな
   ○子を捨てしわれに母の日喪のごとく
   ○仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな
   ○むかしむかしみそかごとありさくらもち
   ○羅の緇衣(しえ)の袂に蛍拾いため
   ○独りとはかくもすがしき雪こんこん
   ○御山のひとりに深き花の闇