送り火

     ○送火や茄子の背に亀乗せてやる
(おくりびやなすのせにかめのせてやる)
大文字山の送火
       ○盂蘭盆会水槽の亀の水替える   秋甫
       ○亀の死は四十年目の夜市の日   々
       ○子の亀を送火の日の葬りや    々
 ミドリ亀の死。
 亀が死んだか生きているのか、寝ているだけで生きているという者、死んだのではないかという者、さまざまな見解が飛び交っていた。
 そもそも亀の元の持ち主である息子(今では中一と小四の父親)が帰省の折には四十年近く世話をしている父に変わって水槽を洗う習慣があったのだ。
 今回も亀の水槽を掃除をしようとして、二階から降ろして来て玄関の戸口で水槽を落として割ってしまったらしい。新しい容器に入れ替えて二匹の亀もきれいになって元の二階に戻されたのだが、誰言うとなく、元気が無いらしい。で、私が見に行くことになった。
 大きな一匹の方は人の気配に水槽を掻いて餌をねだるのか動きが激しいのに、やや小さい方は水の中で首を伸ばしていた。あきらかに絶命していた。迷信的に亀の寿命は人間のそれより何倍も長いと信じていたので、少しショックだった。