葱坊主

     ○思案せずまずは生ききる葱坊主
(しあんせずまずはいききるねぎぼうず)

 ロシアで出した絵ハガキはまず横浜に1枚届いたらしい。モスクワ空港の近くのホテルから20日かかって届いたのである。あと京都と四国はまだのようである。
 かって「キャストアウエー」というトムハンクスの映画があったが、出だしの部分はモスクワの赤の広場付近で渋滞に巻き込まれているアメリカの宅配便会社が自国のやりかたをロシア人に教えている場面から始まっていた。ロシアは時間を経済的に使うことには今も疎いのだろうか。然し皮肉なことにその宅配会社の社長が帰途の飛行機の遭難で孤島に一人生かされることになる。数年を孤独に生きる中で配達するはずだった天使の羽のロゴが入ったウィルソンのバレーボールは生き延びる希望のシンボルになっていた。数年後、艱難辛苦の末救助されて故郷に戻るが、人々の生活はすっかり変わり自分の居場所は無くなっていたのである。届けるはずだったボールのことを想い出し同じ天使の羽マークの入ったウイルソンのバレーボールを新しい箱に入れて届けることにしたのだ。
 時間を追うことの虚しさを教えられた。