冬帽子

     ○冬帽を冠りし中也しか知らず
(ふゆぼうをかぶりしちゅうやしかしらず)
中原中也
山口放送局の制作ドラマ「朗読屋」を観た。再放送らしかったが、愛媛、徳島、高知などと覚えている限りの中ではいい出来だと思った。朝から今日の俳句は冬帽子か冬茜にしょうと思って両方の季語で考えていて、冬帽子ではなぜか中原中也が頭に浮かんでいたのだ。中也の帽子がひどく印象に残っていたのだ。
      ━生い立ちの歌━   中原中也
   幼年期     
 私の上に降る雪は             私の上に降る雪は
 真綿のようでありました         花びらのように降ってきます
   少年期               薪の燃える音もして
 私の上に降る雪は            凍るみ空のくろむ頃
 霙のようでありました
  十七〜十九              私の上に降る雪は
 私の上に降る雪は            いとなよびかになつかしく
 霰のように散りました          手を差し伸べて降りました
  二十〜二十二             
 私の上に降る雪は            私の上に降る雪は
 雹であるかと思われた          熱い額に落ちもくる
  二十三                涙のようでありました
 私の上に降る雪は            
 ひどい吹雪とみえました         私の上に降る雪に
  二十四                いとねんごろに感謝して、神様に
 私の上に降る雪は            長生きしたいと祈りました
 いとしめやかになりました        
                     私の上に降る雪は
                     いと貞潔でありました