2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧
◦蟋蟀の声一匹の哀れけり (こおろぎのこえいっぴきのあわれけり)
◦秋場所の新大関に贔屓すじ (あきばしょのしんおおぜきにひいきすじ)
◦歯を病みて心憂きかな秋の昏 (はをやみてこころうきかなあきのくれ) しばらく前に歯の詰め物を食事中になくしました、一緒に食べてしまったのです。以来秋風が身に沁みて、 ◦秋思すて歯医者の椅子に欲生るる (しゅうしすてはいしゃのいすによくうるる) …
◦剥くほどの大きさもなく衣被 (むくほどのおおきさもなくきぬかつぎ)
◦曼珠沙華その朱は家に入れられず (まんじゅしゃげそのしゅはいえにいれられず)
◦餘部の旧鉄橋を山装う (あまるべのきゅうてっきょうをやまよそおう) 新しい橋梁のつづきに余部駅のホームはありました。旧鉄橋の一部が下から43mの高さで肩を並べていましたが、それは事故を語るというより鉄道の歴史モニュメントのように残されてあり…
◦城崎やいで湯の宿の秋簾 (きのさきやいでゆのやどのあきすだれ)
◦天高く底ゆく舟の峡深し (てんたかくそこゆくふねのきょうふかし)
◦生れし家の石屋と変はり秋彼岸 (あれしやのいしやとかわりあきひがん) 京都市右京区花園妙心寺寺の前町 わたしがこの門前町に住んでいたのは8歳から11歳のことで、ここで生まれたのは弟でした。半世紀も経って弟をそこへ案内した時は、すでに石屋の店…
◦焼酎で半生を吐く秋の虫 (しょうちゅうではんせいをはくあきのむし) 亀岡には半世紀に及ぶ旧友が住んでいます、今回は是非会っておきたいと思って出発前に連絡しておきました。ガレリア亀岡の道の駅での待ち合わせでしたが、バスで来るという彼女をバス停…
◦トロッコにふた駅ばかり峡の秋 (トロッコにふたえきばかりきょうのあき)
◦秋の駅わかれ話しの肩ごしに (あきのえきわかればなしのかたごしに) 鈍行の駅めぐりは9月15日から、山陰本線をスタートさせました。四国から高速道路の深夜割引を利用して京都駅に着いたのは午前8時前でした。京都は子供の頃を過ごした場所です、どん…
◦ひつぢ田の雨に首垂る鸛 (ひつじたのあめにくびたるこうのとり)
◦月天真芋の葉の露転びけり (つきてんしんいものはのつゆまろびけり)
◦五圓玉いれて売らるる秋財布 (ごえんだまいれてうらるるあきさいふ
◦秋茄子いま心象の風の中 (あきなすびいましんしょうのかぜのなか)
◦苅田の皿へ落暉盛る夕餉かな (かりたのさらへらっきもるゆうげかな)
◦葉の裏のくっきり黒き良夜なり (はのうらのくっきりくろきりょうやなり)
◦静けさに今朝爽籟を聞きいたり (しずけさにけさそうらいをききいたり)
◦畦道の鉄路こえゆく苅田かな (あぜみちのてつろこえゆくかりたかな)
◦秋風や歯の詰めものを失ひし (あきかぜやはのつめものをうしないし)
◦月映し流れ留めぬ落し水 (つきうつしながれとどめずおとしみず)
◦岬より釣瓶落としの影絵かな (みさきよりつるべおとしのかげえかな)
◦宣長忌小林秀雄も夫も逝き (のりながきこばやしひでおもつまもいき)
◦残業の社員食堂夜食の灯 (ざんぎょうのしゃいんしょくどうやしょくのひ) 歳時記を見ていたら「夜食」が季語の中にありました。人生の半分近くを仕事に費やして来た身にとっても懐かしい響きを感じるのですが、最も古い情景としては子供の頃に目にした夜食…
◦木歩忌のありて一日を断食す (もっぽきのありてひとひをだんじきす) 写真は金子兜太夫妻 富田木歩の忌日は九月一日 木歩は明治三十年、東京向島に生まれる。本名は一(はじめ)。幼時病のため下肢の自由を失う。貧困はなはだしく、小学校教育も受けられず…
◦秋天や晩学の資を積みにけり (しゅうてんやばんがくのしをつみにけり)
◦蟋蟀に乞われて胸の本閉じる (こおろぎにこわれてむねのほんとじる)
◦室戸への颱風のいま雨の中 (むろとへのたいふうのいまあめのなか)
◦防災の日に非常食たべつくす (ぼうさいのひにひじょうしょくたべつくす)