秋の昏

     ◦歯を病みて心憂きかな秋の昏
(はをやみてこころうきかなあきのくれ)
 しばらく前に歯の詰め物を食事中になくしました、一緒に食べてしまったのです。以来秋風が身に沁みて、



     ◦秋思すて歯医者の椅子に欲生るる
(しゅうしすてはいしゃのいすによくうるる)
 意を決して歯医者に行ってみると、歯の状態は非常に悪く全滅に近いと言われました。見放されてみると反対に執着がおこってきて、ぐらぐらしながらもがんばっている醜い歯に愛着を覚えました。



     鰯雲抜歯して綿噛んでいる
(いわしぐもばっししてわたかんでいる)
 今回はそんな訳で、必死に哀れな歯を守り抜きましたが、前回はこん経験をしていたのです。