○黄の衣精霊蜻蛉が墓の前
(きのころもしょうりょうとんぼがはかのまえ)
盆蜻蛉
○銀やんま夕餉の卓を吟味する 秋甫
○秋茜里へ帰る日山の駅 々
○白熱の甲子園にも盆とんぼ 々
家の周辺では赤とんぼが見られなくなった。精霊トンボと呼ばれるくすんだような黄色い蜻蛉が突然現れて一日二日群れると又どこかへ姿を消してしまうのだ。
古い家だったころ、蜻蛉は夜にやって来た。鬼ヤンマや銀ヤンマなどが部屋中を大暴れすると、電灯の笠を揺らして晩餉の卓へ埃を落としたりもした。
それでも彼らの雄姿を見ると何故か心を躍らせるものがあった。捕獲して気前よく誰かに進呈したいものだと対象の顔を思い描いているのだ。